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第十話
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灰色のマントを纏いフードで頭を覆った魔道士は、夜空をみあげていた。無慈悲な女王たる月が冴えた輝きを放つ夜空から、八枚の黒い翼を広げた死の天使がごときおとこが降りてくる。
魔道士は、フードの下で微かに笑みを浮かべた。
「ようこそ、黒天狐。我らの招きに応じて、よくぞ来てくれた」
黒天狐は、ゆうるりと舞台の前にある階段へ着地した。黒天狐は、地の底から響くような声で語る。
「一応、PSSからの依頼なので、投降するように提案しておく。君は、包囲されている。アデプタス・マイナー、君の召喚はテロ行為と判断されている。投降しなければ、君は死ぬことになる」
魔道士は、少し失笑した。
「もう遅いな、召喚は終わった。黒天狐、投降すべきは君だよ。もし、君が」
魔道士は、最後まで言い終えることはできなかった。神の放った落雷のような銃声が轟き、フードの下にある魔道士の頭が夜の中で赤く爆ぜる。魔法結界が巻き起こした風が、黒天狐の八尾を夜に羽ばたかせた。その結界は、加護を受けた十二.七ミリ弾を止めることはできなかったようだ。
黒天狐は舞台の上に崩れ落ちた魔道士の死体を、静かにみおろしていた。召喚は終わったと魔道士が言ったとおり、次元のゆらぎがあたりの景色を歪ませる。死体の周りに、蒼白に輝く魔法陣が出現した。
魔法陣の中から、八本の細長い足が出現する。それは、巨大な蜘蛛の足であった。そしてそれは、魔神バアルの足でもある。
次元のゆらぎが激しくなり、蜃気楼のような地獄の幻影がいくつも浮かび上がっては消えてゆく。その邪悪で幻想的な風景の幻を切り裂くように、漆黒の巨大な塊が魔法陣の中から浮かび上がってきた。それは、巨大な蜘蛛の胴体である。その黒い塊は、おぞましい瘴気を纏いつかせていた。
呪詛が大量に含まれまともに喰らえば普通のにんげんが衰弱死するような瘴気が黒い水のように、森の舞台に溢れおちてゆく。黒天狐はその地獄から送られてきた怨嗟のような風を、春のそよ風ほどにも感じていないというふうに平然としている。
やがて、八本の足で舞台に立ち上がった蜘蛛の身体は、その背中にひとの上半身を出現させた。
正装した騎士のように綺羅びやかな衣装を身に着けた上半身には、老いたおとこの頭が乗っている。老いたおとこは王冠のようなサークレットを頭につけ、手にした長大な剣を杖のように地面へ刺す。
「うむ、奇妙な気配が満ちてはいるが、どうも久しぶりにひとの世に招かれたようであるな」
老人は、端正で彫りが深く気品すらあるかのような顔にそぐわぬ邪悪な笑みを浮かべた。
「折角であるから、万の死をふりまきひとの悲鳴と怨嗟の呻きを堪能させてもらうとするか」
黒天狐は、少し嘲弄するような調子を声に滲ませ魔神に語りかける。
「やめておけ、ここは面倒くさいぞ」
「ほう」
老人の頭が消え去り、今度は巨大な蛙の頭が出現する。粘液に覆われ緑色に光る蛙は、赤い舌をのぞかせてこたえた。
「それは、なぜかね」
「ここの王は、ネクロマンサー・ベリアルだ。やつが率いる死者の軍団は、殺しても死なない。じつに、うっとおしい戦いになる。それと」
蛙の頭がきえ、こんどは大きな獣の頭が出現する。獣は金色に瞳を輝かせ、短剣のように鋭い犬歯を剥き出しにして声を発する。
「それに、なんだね?」
「このおれが、いるからな」
魔道士は、フードの下で微かに笑みを浮かべた。
「ようこそ、黒天狐。我らの招きに応じて、よくぞ来てくれた」
黒天狐は、ゆうるりと舞台の前にある階段へ着地した。黒天狐は、地の底から響くような声で語る。
「一応、PSSからの依頼なので、投降するように提案しておく。君は、包囲されている。アデプタス・マイナー、君の召喚はテロ行為と判断されている。投降しなければ、君は死ぬことになる」
魔道士は、少し失笑した。
「もう遅いな、召喚は終わった。黒天狐、投降すべきは君だよ。もし、君が」
魔道士は、最後まで言い終えることはできなかった。神の放った落雷のような銃声が轟き、フードの下にある魔道士の頭が夜の中で赤く爆ぜる。魔法結界が巻き起こした風が、黒天狐の八尾を夜に羽ばたかせた。その結界は、加護を受けた十二.七ミリ弾を止めることはできなかったようだ。
黒天狐は舞台の上に崩れ落ちた魔道士の死体を、静かにみおろしていた。召喚は終わったと魔道士が言ったとおり、次元のゆらぎがあたりの景色を歪ませる。死体の周りに、蒼白に輝く魔法陣が出現した。
魔法陣の中から、八本の細長い足が出現する。それは、巨大な蜘蛛の足であった。そしてそれは、魔神バアルの足でもある。
次元のゆらぎが激しくなり、蜃気楼のような地獄の幻影がいくつも浮かび上がっては消えてゆく。その邪悪で幻想的な風景の幻を切り裂くように、漆黒の巨大な塊が魔法陣の中から浮かび上がってきた。それは、巨大な蜘蛛の胴体である。その黒い塊は、おぞましい瘴気を纏いつかせていた。
呪詛が大量に含まれまともに喰らえば普通のにんげんが衰弱死するような瘴気が黒い水のように、森の舞台に溢れおちてゆく。黒天狐はその地獄から送られてきた怨嗟のような風を、春のそよ風ほどにも感じていないというふうに平然としている。
やがて、八本の足で舞台に立ち上がった蜘蛛の身体は、その背中にひとの上半身を出現させた。
正装した騎士のように綺羅びやかな衣装を身に着けた上半身には、老いたおとこの頭が乗っている。老いたおとこは王冠のようなサークレットを頭につけ、手にした長大な剣を杖のように地面へ刺す。
「うむ、奇妙な気配が満ちてはいるが、どうも久しぶりにひとの世に招かれたようであるな」
老人は、端正で彫りが深く気品すらあるかのような顔にそぐわぬ邪悪な笑みを浮かべた。
「折角であるから、万の死をふりまきひとの悲鳴と怨嗟の呻きを堪能させてもらうとするか」
黒天狐は、少し嘲弄するような調子を声に滲ませ魔神に語りかける。
「やめておけ、ここは面倒くさいぞ」
「ほう」
老人の頭が消え去り、今度は巨大な蛙の頭が出現する。粘液に覆われ緑色に光る蛙は、赤い舌をのぞかせてこたえた。
「それは、なぜかね」
「ここの王は、ネクロマンサー・ベリアルだ。やつが率いる死者の軍団は、殺しても死なない。じつに、うっとおしい戦いになる。それと」
蛙の頭がきえ、こんどは大きな獣の頭が出現する。獣は金色に瞳を輝かせ、短剣のように鋭い犬歯を剥き出しにして声を発する。
「それに、なんだね?」
「このおれが、いるからな」
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