5 / 25
無慈悲な展開
5
しおりを挟む
「……第一の階層で何が起きるか、知っておいた方がいいだろう」
アルノルトは一瞬、遠い目をした。
「そこでは互いの“真の姿”が露わになる。幻影や虚像ではない。心に隠した憎悪も欲望も愛情も――すべてが剥き出しになる」
紅茶の香りがふっと薄れるほど、彼の声が低く沈む。
「私はあのとき、枢機卿と入った。互いに長い付き合いでね。だが第一層を越えた瞬間、互いの心が……残酷なまでに明らかになった。
結局、ダンジョンに斬られたのではない。我ら自身の心に裂かれたのだ」
アーベルは眉を寄せ、言葉を失っていた。俺は喉が渇き、ただ唾を飲み込む。
沈黙を破ったのはアーベルだった。
「……私たちなら、きっと大丈夫だと思います」
強い声音が部屋に響く。
「引き裂かれることなく、奥に進むことができるかと」
胸が跳ね、俺は思わず視線を逸らした。だがアルノルトの微笑が視界に入る。
「それは頼もしい」
彼は愉快そうに肩を竦めると、表情を引き締めた。
「……ただし気をつけろ。枢機卿は私と決裂した後、一度だけ単身で潜り、第二階層に踏み入った。何を見たのかは語らなかったが、あの男の顔色は二度と忘れられん。おそらく、さらに恐ろしい罠が仕掛けられているに違いない」
俺とアーベルは顔を見合わせる。
「つまり――」
「あのダンジョンに潜ったもう一人の男、枢機卿にも話を聞きに行った方がいい」
アルノルトはティーカップをソーサーへ戻し、取り繕うように笑った。
「……もっとも、素直に話すとは限らんがね」
屋敷を辞した後、アーベルは小さく呟く。
「枢機卿のところへ行こう。危険の核心を知っているのは、彼しかいない」
俺は頷きながらも、胸の奥にざらつく違和感を抱えていた。
(……ゲームにはなかった筋書きだ。やっぱり、この世界は俺の知ってる通りには進まねえ)
ーーー
お読みいただきありがとうございます。土日休んで週明け月曜日から再び毎日掲載します!
アルノルトは一瞬、遠い目をした。
「そこでは互いの“真の姿”が露わになる。幻影や虚像ではない。心に隠した憎悪も欲望も愛情も――すべてが剥き出しになる」
紅茶の香りがふっと薄れるほど、彼の声が低く沈む。
「私はあのとき、枢機卿と入った。互いに長い付き合いでね。だが第一層を越えた瞬間、互いの心が……残酷なまでに明らかになった。
結局、ダンジョンに斬られたのではない。我ら自身の心に裂かれたのだ」
アーベルは眉を寄せ、言葉を失っていた。俺は喉が渇き、ただ唾を飲み込む。
沈黙を破ったのはアーベルだった。
「……私たちなら、きっと大丈夫だと思います」
強い声音が部屋に響く。
「引き裂かれることなく、奥に進むことができるかと」
胸が跳ね、俺は思わず視線を逸らした。だがアルノルトの微笑が視界に入る。
「それは頼もしい」
彼は愉快そうに肩を竦めると、表情を引き締めた。
「……ただし気をつけろ。枢機卿は私と決裂した後、一度だけ単身で潜り、第二階層に踏み入った。何を見たのかは語らなかったが、あの男の顔色は二度と忘れられん。おそらく、さらに恐ろしい罠が仕掛けられているに違いない」
俺とアーベルは顔を見合わせる。
「つまり――」
「あのダンジョンに潜ったもう一人の男、枢機卿にも話を聞きに行った方がいい」
アルノルトはティーカップをソーサーへ戻し、取り繕うように笑った。
「……もっとも、素直に話すとは限らんがね」
屋敷を辞した後、アーベルは小さく呟く。
「枢機卿のところへ行こう。危険の核心を知っているのは、彼しかいない」
俺は頷きながらも、胸の奥にざらつく違和感を抱えていた。
(……ゲームにはなかった筋書きだ。やっぱり、この世界は俺の知ってる通りには進まねえ)
ーーー
お読みいただきありがとうございます。土日休んで週明け月曜日から再び毎日掲載します!
87
あなたにおすすめの小説
最可愛天使は儚げ美少年を演じる@勘違いってマジ??
雨霧れいん
BL
《 男子校の華 》と呼ばれるほどにかわいく、美しい少年"依織のぞ"は社会に出てから厳しさを知る。
いままでかわいいと言われていた特徴も社会に出れば女々しいだとか、非力だとか、色々な言葉で貶された。いつまでもかわいいだけの僕でいたい!いつしか依織はネットにのめり込んだ。男の主人公がイケメンに言い寄られるゲーム、通称BLゲーム。こんな世界に生まれたかった、と悲しみに暮れ眠りについたが朝起きたらそこは大好きなBLゲームのなかに!?
可愛い可愛い僕でいるために儚げ男子(笑)を演じていたら色々勘違いされて...!?!?
悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る
桜城 寧
BL
処刑された記憶とともに、BLゲームに登場する悪役会計に転生したことに気付く。処刑されないために、チャラ男としての仮面を被り、生徒会長に媚び売ったり、どうにか能力を駆使したりして生きてたら、色々な人に構われる話。
悲報、転生したらギャルゲーの主人公だったのに、悪友も一緒に転生してきたせいで開幕即終了のお知らせ
椿谷あずる
BL
平凡な高校生だった俺は、ある日事故で命を落としギャルゲーの世界に主人公としてに転生した――はずだった。薔薇色のハーレムライフを望んだ俺の前に、なぜか一緒に事故に巻き込まれた悪友・野里レンまで転生してきて!?「お前だけハーレムなんて、絶対ズルいだろ?」っておい、俺のハーレム計画はどうなるんだ?ヒロインじゃなく、男とばかりフラグが立ってしまうギャルゲー世界。俺のハーレム計画、開幕十分で即終了のお知らせ……!
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したので闇の『魅了』スキルで攻略対象の男たちをカップリングしていきます
カタリベかたる
BL
乙女ゲーム『没落貴族の令嬢ですが、婚約破棄した第7王子と氷の貴公子と呼ばれる次期公爵がなぜか溺愛してきますっっっTHE GAME』に登場する悪役令嬢に転生して、闇の魔法の一つである『魅了』スキルを手に入れた私。ある日、ゲームのシナリオに沿って、攻略対象の王子を闇の魔法で魅了しようとしたんだけど、どういうわけか王子は私の兄に魅了されてしまって・・・でもこれはアリだわ!
転生した世界で、さらに新たな世界に目覚めてしまった悪役令嬢と、彼女をめぐる(めぐらない)攻略対象たちが勝手に繰り広げる、主人公不在ラブストーリー。
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
動物アレルギーのSS級治療師は、竜神と恋をする
葉空
BL
SS級治療師、ルカ。それが今世の俺だ。
前世では、野犬に噛まれたことで狂犬病に感染し、死んでしまった。次に目が覚めると、異世界に転生していた。しかも、森に住んでるのは獣人で人間は俺1人?!しかも、俺は動物アレルギー持ち…
でも、彼らの怪我を治療出来る力を持つのは治癒魔法が使える自分だけ…
優しい彼が、唯一触れられる竜神に溺愛されて生活するお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる