誘拐された悪役令嬢ヒロインですが、ヒーローが助けに来ません!!

イセヤ レキ

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意外と紳士?

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「武器など隠し持ってはございま「……確かに赤いな。冷やすか」
おお。この暗殺者、意外と紳士だ。さっき、私をお姫様抱っこした事といい、ベッドに下ろした様子といい、女性には優しい人なんだろうか?

「ありがとうございます、助かります」
何が悲しゅうて、誘拐の一味だか根源だかに御礼を言わなくてはならないのか。私はスカートをぐいと自分の腕全体で下ろしながら、それでも御礼を言う。冷やすものプリーズ。
「おい、冷やす物を持って来い」
「はい」
部屋の外にいたらしいメイドさんに、暗殺者は命じる。そして私に向き直って言った。
「痛い思いをさせてすまなかった」
……あれ?この人本当に暗殺者??何だかよくわからない状況になってきたけど、実は私、この人と一度だけ対面した事があるのだ。


あれはとある暑苦しい夜に、ベッドじゃなくて革貼りのひんやりソファの上で、誰もいないからとかなりの薄着ではしたなくだらしなくゴロゴロしていた時の事。
音もなく開いた窓から入ってきたのがこの暗殺者だ。
冷たい空気を感じた瞬間、私は気配を消した。空気になって、じっとソファと同化する。男の後ろには、やけに大きな月。そして、彼はベッドにいない私を探すかの様に、スッと視線を移動させて部屋を見回した。ソファに視線が留まり、私の背中に冷や汗が流れる。長い様な短い様な時間、しばらくじぃ、と眺めた男は、私が部屋にいないと判断したのか、何もせずに部屋を後にした。


間違いなくあの暗殺者はこの人だったと思うんだけど。
この人はしばらく視線が合った気がして生きた心地がしなかったのでよく覚えている。まぁ、殺されずに済んでいるのだから、きっと気付かなったのだろうけど。
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