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そろそろヒーロー来ようよ

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「お持ち致しました」
先程廊下にいたメイドさんが、氷水を張ったボウルにタオルを入れたまま現れて、ベッドの脇へ歩み寄る。
「きゃ……!」
その時、何故か躓くメイドさん。暗殺者は俊敏な動きで、宙を舞ったボウルを中の冷水とタオルごと両手で受け止めた、と同時にメイドさんを足で支える。

私はポカーンと口を開けたまま、まるで見事な曲芸を見た様な気がして思わず拍手。
拍手じゃないでしょ、何やってんの自分!いやでもつい。
暗殺者は全く動じず、そのまま流れる様な仕草でメイドさんを……蹴った!
蹴ったよこの人!!先程の「紳士」は却下で!!

「……私の妻にこんなものを掛ける気か。風邪をひいたらどうする」
「も、申し訳ございません……!!」
「もういい、下がれ」
ガタガタと震えながら謝るメイドさん。か、可哀想……!
……というか、何だか聞き捨てならない事言いませんでした?この暗殺者ヒト
私の妻?つま?……妻ってあれ?奥さんの事?

「……」
いいや、聞き間違いか言い間違いだろう。
「ちょっと冷やすぞ」
「……っっ!!」
だーかーらー、いきなりスカート捲らないで下さいっ!!絶対デリカシーないわ、この人。
「じ、自分で出来ますので……」
「……」
私の訴えは軽くスルー。
これって、所謂いわゆる貞操の危機なのでは?
でよドラゴン!……間違えた、ヒーロー!心の中で念じる。

「……」
ヒーローまで私の召喚をスルー。……いいけどさ、別にっ!
でも、から不埒な動きをする暗殺者おとこの手、君は駄目だ。
一言だけでも文句を言おうと口を開いた瞬間、熱を持ったお尻にぴちゃり、と冷たいタオルが掛けられる。
「あっ」
驚き、私は妙な声をあげてしまった。
「……」
「……」
は、恥ずかしい。余計な事は言うまいと、しばらく心を無にして瞳を閉じる。すると、長旅ゆうかいの疲れか、それとも緊張の糸が切れたのか、私はそのまま眠ってしまった様だ。
……自分でも、いくら主人公だから大丈夫という妙な確信があったとしても、なんて図太い神経なのかと思いました、ハイ。
でも、ハピエンタグついてたので大丈夫って思うのが普通かと!!
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