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カラス天狗
氷鬼先輩はやっぱり強い!
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帰り道、詩織は一人でスクール鞄を持って住宅街を歩いていた。
周りの人達は、詩織の姿を見ると眉をひそめ、距離を置いていた。
(周りからの視線には慣れてる。あやかしに追いかけられるようになってからずっと、冷たい視線を向けられていたから)
あやかしは、普通の人からは見えない。
見える詩織の方が珍しく、奇声を上げて走っている彼女は、周りから見たらただの変な人だ。
(なんで、私はあやかしに追いかけられるの。なんで、こんな思いをしないといけないの、意味が分からない)
肩にかけている、鞄の手持ち部分を強く掴み、歯を食いしばる。
一人で歩いていると、前方から何かが猛ダッシュで向かって来ているのが見えた。
「ん? な、なに、あれ……。ま、まさか……」
いやな予感が走り、冷や汗が額から流れ落ちる。目を細め、前から迫ってきているモノをよく見てみると、それは人ではないナニカ。顔が青ざめ、体を大きくふるわせた。
「ひ、一つ目ぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!」
目が一つの青年が、全力ダッシュで詩織に向かって走っていた。
それだけでも恐怖だが、手には大きな傘がにぎられていた。
その傘も普通ではなく、手で持つ部分は人間の足、下駄をはいていた。
「いぃぃぃぃぃぃいやぁぁぁぁぁああ!!」
また一人、ひめいを上げ来た道を戻るように詩織は走り出す。
(なんで、なんで!! なんで私がこんな目に合わないといけないの!! ほんと、意味わかんない!)
自分の体質に怒りがふつふつと芽生えるが、どこにもぶつけることが出来ず、 いつもの神社を求めて逃げる。
そんな時、曲がり角からマイペースな声が聞こえた。
「やってるねぇ~」
――――――――ガシッ
曲がり角から人影が現れ、走っている詩織の腕をつかんだ。
「っ、あ、氷鬼先輩……」
声の正体は、あくびをこぼしている氷鬼司だった。
詩織は、司を見た瞬間、助かったと安堵の息をもらした。
「だから言ったのに。一人での行動は禁物、僕との約束は守って。今回は仕方がないと目をつむるけどね」
言いながら詩織を後ろに下がらせ、前に出る。
大きな黒いパーカーから朝の時と同じように、一枚のお札を取り出した。
「一つ目なら、これで十分か」
司は、取り出したお札に指先をそえる。すると、なぜかお札が波打ち、そえた手が中へと入った。
手が全部入ると、何かを探すように動き始める。
その間も、一つ目は詩織達に迫ってきている。
何をしているんだろうと、詩織は一つ目と司を交互に見ながら待った。
「よし、準備は出来た――お?」
一つ目が司の隣を通り過ぎ、詩織に向けて手に持っていた傘を横一線に振った。
「ひっ!?」
だが、そんなことを許すほど、司は甘くない。
「ねぇ、僕と遊んでからその子をおそってよ」
今にも泣き出しそうな詩織とは裏腹に、余裕を崩さない司はお札から手を引き抜き、いきおいをそのままに、上から振り落とした。
――――ザシュッ
瞬間、一つ目の腕が宙を舞う。灰となり、空中で消えた。
黒いきりが舞い上がる中、司は振り上げた手をゆっくりと下ろす。その手には、銀色に輝く刀が握られていた。
『なっ、な!?』
「おどろくのも無理はないけど、僕を無視したんだから、これくらいは仕方がないよね」
腕が無くなり傘を落とした一つ目は、後ろに立っている司を振り向く。
司は肩に刀を担ぎ、あくびをこぼした。
「僕の大事な人に手を出した罪は、重いよ」
(っ、え、大事な人? それって、私?)
詩織のとまどいなど気づかず、司は肩に担いだ刀を下ろし、剣先を一つ目に向けた。
恐怖で顔を青くする一つ目は、逃げるため後ろに下がる。だが、司が逃がすようなヘマをするはずもなく、一歩、また一歩と近付いた。
「さて、これで終わり」
刀を自身の体に引き寄せ、横一線に振り払った。
辺りには一つ目の悲鳴がひびき渡り、灰が風と共に流れ、空中で消えた。
周りの人達は、詩織の姿を見ると眉をひそめ、距離を置いていた。
(周りからの視線には慣れてる。あやかしに追いかけられるようになってからずっと、冷たい視線を向けられていたから)
あやかしは、普通の人からは見えない。
見える詩織の方が珍しく、奇声を上げて走っている彼女は、周りから見たらただの変な人だ。
(なんで、私はあやかしに追いかけられるの。なんで、こんな思いをしないといけないの、意味が分からない)
肩にかけている、鞄の手持ち部分を強く掴み、歯を食いしばる。
一人で歩いていると、前方から何かが猛ダッシュで向かって来ているのが見えた。
「ん? な、なに、あれ……。ま、まさか……」
いやな予感が走り、冷や汗が額から流れ落ちる。目を細め、前から迫ってきているモノをよく見てみると、それは人ではないナニカ。顔が青ざめ、体を大きくふるわせた。
「ひ、一つ目ぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!」
目が一つの青年が、全力ダッシュで詩織に向かって走っていた。
それだけでも恐怖だが、手には大きな傘がにぎられていた。
その傘も普通ではなく、手で持つ部分は人間の足、下駄をはいていた。
「いぃぃぃぃぃぃいやぁぁぁぁぁああ!!」
また一人、ひめいを上げ来た道を戻るように詩織は走り出す。
(なんで、なんで!! なんで私がこんな目に合わないといけないの!! ほんと、意味わかんない!)
自分の体質に怒りがふつふつと芽生えるが、どこにもぶつけることが出来ず、 いつもの神社を求めて逃げる。
そんな時、曲がり角からマイペースな声が聞こえた。
「やってるねぇ~」
――――――――ガシッ
曲がり角から人影が現れ、走っている詩織の腕をつかんだ。
「っ、あ、氷鬼先輩……」
声の正体は、あくびをこぼしている氷鬼司だった。
詩織は、司を見た瞬間、助かったと安堵の息をもらした。
「だから言ったのに。一人での行動は禁物、僕との約束は守って。今回は仕方がないと目をつむるけどね」
言いながら詩織を後ろに下がらせ、前に出る。
大きな黒いパーカーから朝の時と同じように、一枚のお札を取り出した。
「一つ目なら、これで十分か」
司は、取り出したお札に指先をそえる。すると、なぜかお札が波打ち、そえた手が中へと入った。
手が全部入ると、何かを探すように動き始める。
その間も、一つ目は詩織達に迫ってきている。
何をしているんだろうと、詩織は一つ目と司を交互に見ながら待った。
「よし、準備は出来た――お?」
一つ目が司の隣を通り過ぎ、詩織に向けて手に持っていた傘を横一線に振った。
「ひっ!?」
だが、そんなことを許すほど、司は甘くない。
「ねぇ、僕と遊んでからその子をおそってよ」
今にも泣き出しそうな詩織とは裏腹に、余裕を崩さない司はお札から手を引き抜き、いきおいをそのままに、上から振り落とした。
――――ザシュッ
瞬間、一つ目の腕が宙を舞う。灰となり、空中で消えた。
黒いきりが舞い上がる中、司は振り上げた手をゆっくりと下ろす。その手には、銀色に輝く刀が握られていた。
『なっ、な!?』
「おどろくのも無理はないけど、僕を無視したんだから、これくらいは仕方がないよね」
腕が無くなり傘を落とした一つ目は、後ろに立っている司を振り向く。
司は肩に刀を担ぎ、あくびをこぼした。
「僕の大事な人に手を出した罪は、重いよ」
(っ、え、大事な人? それって、私?)
詩織のとまどいなど気づかず、司は肩に担いだ刀を下ろし、剣先を一つ目に向けた。
恐怖で顔を青くする一つ目は、逃げるため後ろに下がる。だが、司が逃がすようなヘマをするはずもなく、一歩、また一歩と近付いた。
「さて、これで終わり」
刀を自身の体に引き寄せ、横一線に振り払った。
辺りには一つ目の悲鳴がひびき渡り、灰が風と共に流れ、空中で消えた。
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