34 / 72
第二章:新しい世界
おしゃべりな鳥
しおりを挟む「ヒュー・ブレイズの攻撃で、”本当の意味で”、亡くなったのは…1人、だけだぞ。」
ノヴァンは、頭を掻きながら、何でもないことのように、気楽に告げた。
そして、相変わらず軽い調子で続ける。
「言おう言おうと思ってたんだけど~。ついうっかり、忘れてたわ。てへ」
(1人だけ…。それって…。)
「はぁ?!それって…どういうことですか?確かに、2人のはず…。」
サクヤも、俺と同じように。
ノヴァンの言葉を、上手く理解できないようだった。
「あー、もうっ!説明すんの…めんどくさいな。
まぁ…”百聞は一見にしかず”、だな!」
ノヴァンが、彼の中で、ウンウンと納得した様子で…
…椅子の肘掛けに固定されていた、俺の左腕…二の腕部分を、思いっきり掴んだ。
そして…
「勅令するーーー…。」
ノヴァンのその低い声は…あまりにも小さくて。
勅令は、うまく聞き取れなかった。
勅令は普通、自分の体内のカラーズに響くように、それなりの大きさで言わないといけないのに…。
…これも、アオ兄やブレイズがやっていた、”勅令放棄”って、やつなのかな?
やっぱり…この人、すごい人…なのか?
…そんなことを考えながら。
いまだに状況が理解できないまま、数秒の間、腕を掴まれたまま。じっとしていると…。
俺の…左腕が。
段々と熱を帯びて……太陽のように、光を放ち始めた。
と同時に…
『ふぁ~。』
…よく、聞き慣れた声が。
左腕の、光の中から…
『なになに、俺のこと、誰か呼んだぁ?』
ハッキリと、聞こえた。
少し、離れただけなのに…
それは…ひどく懐かしい、アオ兄の、声だった。
「ア、アオ兄…!!!!」
「なっ!これは、一体…!?」
俺とサクヤは、光の中から飛び出した”それ”を見て。
同時に驚きの声を上げた。
「アオ兄、なの!?この…鳥…!」
光の中から飛び出した”それ”とは…
ハト…だった。ただし…深緑色の。
そして、アオ兄の声で、おしゃべりをする、ハト。
『おお!ヨウ!少し見ない間に…なんか、大きく…なったなぁ?
あれ…これ、俺が小さくなってんのぉ?』
深緑色のハト…もとい、アオ兄は。
その鳥類ならではの鋭い鉤爪で、俺の左腕に掴まったまま。
俺の顔を見上げて、その小さな頭と首を傾げた。
『そっか…。
ヨウが無事で、良かったよ。
あ!ついでに俺も!あの時は、絶対死ぬんだって思ったからさぁ~。』
サクヤが、大まかな事情をアオ兄に説明して。
話が終わると、アオ兄はそう言って、俺の腕から飛び立って。
『鳥かぁ~。一度はなってみたいって思うよな!飛ぶって、こんな感じなのかぁ~。』
暗い室内をくるくると旋回し。
また、俺の腕に戻ってきた。
「アオ兄、…のんきすぎだろ!」
「…僕も、ヨウ君と同じ意見です。」
「ハハハ!ヨウの兄ちゃん、面白いじゃん!」
ハトらしい振る舞いと、人間らしいセリフが、何ともチグハグで。
室内には、なごやかな雰囲気が漂っていた。
他に聞いたこともないことが、目の前で起こっているのに。
「アオバは、見ての通り、ヨウの身体から出てくる…オーバーだ。
ヨウのオーバーに、アオバの精神がくっついている。」
ノヴァンが、ハトのアオ兄を突っつきながら、話を続ける。
「俺は、相手の身体に触れれば、そいつの体内のカラーズを読み取ることができるんだよ。
発現の”チカラ”とは別の…俺の、一族だけがもつ。ま、体質みたいなもんだな。
それで、ヨウが気絶してる間に触れて調べた時、ヨウの体内には…”禁色”の深紅のカラーズと…
明らかにヨウのカラーズとは違う、…深緑色の。コイツ、アオバ・オリーヴァーのカラーズがあったわけだ。」
ハトのアオ兄は、ノヴァンの突っつきに耐えられなくなったのか。空中に逃げていった。
「あの時、一瞬でもニセモノでも、”黒の悪魔”のチカラを使ったからなのか。
…他人のカラーズが体内に入るなんて、見たことも聞いたこともないから。さすがの俺も驚いたわけだ。」
ウンウン、と、自分の説明に頷きながら。ノヴァンは説明を続ける。
「その時は驚いて…報告しようと思って…。なんでだったか…忘れてて。てへっ。」
サクヤが、説明を邪魔しないようにだと思うが…無言で、睨んでいる。
「んで、ついさっき思い出したんだよ。
今度は俺の”チカラ”で…ちょっと、深緑色のカラーズに働きかけてみるかって。
どうなるのか、さすがの俺にも分からなかったけど。
まさか、こんなに…アオバの精神が、カラーズに乗り移ってるとはな!
ハハハ、おしゃべりな鳥、面白すぎだろっ!」
ノヴァンは終始笑いながら、目の前の信じられない光景について、説明してくれた。
「でも…そろそろ、だな。」
ノヴァンがそう言うと。
「あれ?アオ兄…色が、薄くなって…。」
深緑色だったハトのアオ兄は、だんだんと…その身体が透け始めていた。
「きっかけは、俺の勅令だけど。
チカラが維持できるかは、もちろん、発現者であるヨウ自身の問題だからな。」
「え!そっか、俺…発現者なのか…!
えっと…、えぇーい!!!!」
ひとまず、憧れて、ずっとイメージしていた感じで。
ハトのアオ兄の”濃さ”を取り戻すべく、パワーを振り絞って、叫んでみる。
「ぷっ…ヨウ君。掛け声じゃ、チカラは増しませんよ。」
「ぶははっ!お前、バカだなぁ!」
黒の隊服の2人には笑われ。
『ヨウ、その雄叫び、カッコいいなぁ!
俺…超かっこいい発現者のオーバーになれて、超幸せだなぁ~。』
アオ兄も…左腕に掴まる、その見た目はハトだけど。
今までずっと見てきた、いつものニヤニヤ顔が…目に浮かぶようだった。
「ヨウは、ひとまず修行だな!
…”黒の悪魔”…本物は、生きてんだから。」
ノヴァンは、俺の方を見て、真剣に告げる。
「返事を…聞いてませんでしたね。」
サクヤも。少し微笑んで、俺の目を見て言う。
「俺…。
ブラックアビスに入るよ!そして…ヒマリを、世界を。
”黒の悪魔”から、守ってみせる。」
そしてーー
「あと…アオ兄も。
”黒の悪魔”のチカラで、俺の身体に入ったなら…。
俺の身体から…元に、戻せるなら。
全部の謎を知ってそうな、本物の”黒の悪魔”に、直接聞いてみる!」
俺は、まっすぐに前を見ながら。そう、高らかに宣言した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣
織部
ファンタジー
ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。
背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。
母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。
セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。
彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。
セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。
「セラ、ウミ」
「ええ、そうよ。海」
ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します!
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる