黒の悪魔が死ぬまで。

曖 みいあ

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第三章:来たる日に備えて

非常識なご挨拶

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「あそこっ!いたっ!!」

俺はすぐに、視線の先
こじんまりとした家の、大きな低い窓を指差して。


その窓越しに見えた、
部屋の中にいるシオンに、駆け寄ろうとしたんだけど


「まあ…もう少し、様子を見てから、な。」


すぐ横にいた大先生に、首根っこを掴まれて。


その家には、ゆっくりと近付くことになった。





大先生と2人、ゆっくりと息を殺して近付いて。
そのまま、大きな窓のそばに立って、慎重に室内を覗き込む。



室内にはさっきと同じく、
立ちすくむシオンと…不機嫌そうな、男の人が1人。

歳は、30代半ばくらい、だと思う。
細身で、眼鏡をかけていて…とにかく、何かに怒っているみたいだ。



(この人、たぶん…
…例の”お酒を飲んで、暴力をふるう叔父さん”だな。)


そんな”暴力叔父さん”は、
今にも手が出そうなほどの剣幕で


「その話は、二度と俺にするな!分かったな?」


叔父さんをまっすぐ見つめるシオンに向かって、
吐き捨てるように、そう言った。




前後の会話を聞いていないから…
シオンが何に怒られているのか、俺には全く分からない。



「大先生は…。」


シオンが何に怒られてるか、分かる?

…って、聞こうとしたのに。





「こんばんは~!

突然ですが、近くに引っ越してきた者です。どうぞよろしく!」


いつの間にか、大先生は、俺の隣からいなくなっていて。

気付いたら、聞き慣れた元気な声が…
俺が覗いていた窓の中…つまり、部屋の中から、聞こえてきた。



(俺には、様子見って言ったくせに…!!)



いつもと違って、さわやかな笑顔を浮かべた大先生は

シオンと叔父さんがあっけにとられている間に、
にこやかに、でも強引に、2人と握手を交わしていく。


「なっ、なんですか、あなたは!
勝手に部屋に入ってきて…非常識では?」


黙って握手をしたシオンに続いて、
手際よく握手をさせられた叔父さんだったけど

さすがに、我に返ったらしく、
冷たい声で、大先生に厳しい言葉をかけた。



「いやぁ、すみません。
まだこちらの地域の文化に慣れていなくて。

勝手に部屋に入ることは、非常識なんですね。
以後、気をつけるようにします。」


言葉こそ謝っているけど、
相変わらずの笑顔や、その態度からは、
ちっとも”申し訳ない”って感じが出ていない。


「あなた方は…家族ですか?

それにしてはあまり…似ていないような、気がしますね。」


大先生は、シオンのフワフワの薄い紫色の髪を見つめながら、
そのままシオンに近付き、頬に手を添えて、顔を覗き込んだ。


「君の瞳はうすい茶色…、
だけどあちらの男性は、真っ黒の髪に、真っ黒の瞳、ですね。」


「…。」


シオンは黙ったまま、大先生をじっと見つめる。


「ちょっと!その子から離れてください!

その子は、亡くなった姉の子どもです。

…私達は、もちろん、家族ですよ。」


叔父さんは、声を荒らげないように
静かに、でも怒っているような言い方だった。





「そうでしたか。それは、立派な家族…ですね。」


大先生は、サッとシオンの頬から手を離して。

叔父さんに、笑顔を向けて言う。


「では、名残惜しいのですが、
夜も遅いので、私はこのへんで失礼して…


あ!この地域では…

勝手に部屋を出ることは、”非常識”になりますか?」


「…いえ。お引取りください。」


「はい!

また、会いましょう。」


大先生の変わらない態度に、
最後には、叔父さんの方が諦めた感じで。


入ってきた時と同じように、
大先生は、颯爽と部屋を出ていった。







「も~!
なんで勝手に出て行くんだよ!」

あの後、家を出てきた大先生とすぐに合流して


そのまま、ミチカの待つ宿へ向かいながら、

「俺がシオンに振られた理由、聞けなかったじゃん!」

大先生の勝手な行動に対して

「せっかくまた会えたのに、なんにも話せなかったし!」

一通り、愚痴って歩く。



そんな俺の態度に、
いつもの笑顔だけど、少し申し訳なさそうに、先生が謝った。


「ごめんって。

シオンと叔父さんの様子が…意外でさ。
つい、確かめたいことが出てきちゃったんだよ。ごめんな?」


(あの2人の様子が、意外?俺は…
”暴力”っていう前情報通りに、見えたけど…?

それに…。)


「確かめたいこと…?」


「ちょっと、な。

急いで中に入って
握手と、シオンの頬に触れたお陰で…

その”確かめたかったこと”も、ちゃんと分かった。」


大先生は、急に真面目な顔でつぶやいた。


…かと思ったら、いつもの笑顔で



「あとはもちろん!握手した結果…
シオンは”禁色”で、間違いなかったぞ~!


良かったな~!”禁色”仲間じゃん!

実力差は、めちゃくちゃありそうだけど!」



「うるさっ!!」


俺は悔しくて、大先生をじーっと睨む。


「はいはい。ヨウ君は伸び盛りだもんね~。

ま、今夜はもう遅いから
明日の早朝、村の外にある通信箇所まで行って、

”禁色”発見!って、本部のサクヤに報告してくるわ。」


嬉しそうに夜空を見上げながら、大先生が話し続ける。




「そんで…報告で、俺がいない間、

何としても、シオンのブラックアビス入隊を認めさせろ。

本人と…もちろん、あの叔父さんにも。


今度こそ、振られずに勧誘、できるよな?」


夜空から視線を戻した大先生は、
ニヤッと笑って、俺に挑発的な言葉をかけてきた。




そうだ、あの時の…

「リベンジ、してやるよ…!」


俺は、シオンと友達になりたいと思った
あの時の気持ちを、もう一度思い出して


「大先生がいなくても、

バッチリ勧誘してやるぜ!」


つい、夜更けには迷惑な音量で、
そう、強気に宣言してみせた。
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