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第三章:来たる日に備えて
夜の闇の中で
しおりを挟む「シオンっ!?
さっきのヤツラに、襲われたんじゃ…!」
消えたシオンを探して、
急いで辺りを見回してみたけど。
人の気配や、争っている空気は、
周囲の夜の闇からは、まったく感じられなくて。
ここには、やっぱり俺たちしかいなかったんだ。
そう、つまり…
「シオン自身のチカラで…
一瞬にして、いなくなった、ってことか?」
導き出した答えを、ポツリとつぶやいて。
そのまま、
川べりの芝生に、ドサッと寝転がった。
「あぁ~もうっ!
俺が、失礼なこと考えてたって、白状したから…
…怒ったのかな?
せっかく…友達になれると、思ったのに…。」
俺は誰に言うでもなく、
芝生に仰向けになって、夜空につぶやいた。
「あとさぁ!
何で俺の周りのやつは、
平気で、夜にチカラ使うわけ!?」
さっきのシオンを思い出して。
頭をよぎった愚痴を、素直に吐き出していく。
「チカラを発現できるのは、
”チカラの源である光が
体内のカラーズに当たっている時だけ”、って
み~んなが知ってる常識だろ?
アオ兄に、ブレイズに…今度は、シオンまで!
どうなってるんだよ、まったく!」
愚痴っていたら、止まらなくなってきて。
「しかもさ!
シオンのチカラって、”勅令放棄”ってやつだよな?
俺なんて、”放棄”どころか
勅令だって、まだ1つしか習得できてないのに!
なんで同じ”薄い禁色”で、こんなにも違いが…。」
ジタバタと地面を転げ回りながら。
それなりの声量で愚痴り続けていた、まさにその時
「確かにシオンは、中々やるな!
ま、俺と比べると、まだまだなんだけど~。」
大の字で寝転がる俺の頭上から
聞き慣れた声が降ってきて。
次に、見慣れた顔が、
視界の中の夜空に、侵入してきた。
「だ、大先生…!!」
俺は、ガバッと身を起こして。
ニヤニヤ顔の大先生を見ながら、芝生に座り直した。
「お前な~。
俺が握手する前にターゲットに接触するなら、
せめてちゃんと、勧誘くらいは成功させないと!
な~に振られちゃってんのよ。」
「なんで知ってんの!?
まさか、大先生まで、心が読めて…。」
「いや、見てたから。その木陰から。」
「…いつから…?」
「えーっと…
『俺たち、今どこにいるんだろ?』くらいかな。」
「ここに逃げてきてすぐじゃん!声かけろよ!」
俺はツッコミながら、大先生の目の前に、勢いよく立ち上がる。
「いや~何か青春してたからさ。
まさか俺も…あんな振られ方するとは、思わなかったわ!
ま、元気出せって!
俺が思うに…
ヨウは別に、シオンに嫌われたわけじゃないよ。」
「えっ?」
目の前の大先生が、いつも以上にニヤリと笑って言う。
「ヨウさ、最後にシオンに手を差し出した時、
ブラックアビスのこと、考えただろ?
友達になって、そんで
ブラックアビスにも、入ってくれたら…って。
それが、シオンがお前の手を取れなかった理由だろうな。
ま、俺は心が読めるわけじゃないし?
天才ゆえに働くカンってやつだけど。」
「天才ゆえの、カン…。」
俺はつい、じとーっとした目で、大先生を見る。
だけど…
「でも…それって。
何か、ブラックアビスに入れない理由が、
シオンには、あるってこと?」
だから、俺の前から、消えたのか?
「ただのカン、だけどな。
もしかしたら…
単にヨウと、友達になりたくなかった可能性も…。」
「それは違うよ!!」
俺は改めて、2人きりで話した時のシオンを思い出して。
きっと、何か理由があるっていう、
先生のカンの方が正しいって、そう確信した。
「お、そこまで言うなら…
今から、直接聞きに行ってみるか!」
「…え、今から!?」
俺は驚いて、
目の前の大先生に詰め寄る。
「シオンがどこに消えたのか、知ってんのっ?!」
大先生はニヤッと笑って、
黒の隊服や、その上に羽織った茶色のコートの…
右腕にかかった部分を、まくり始めた。
「ふふふ、
落ち込んだり愚痴ったり自信があったり…
情緒不安定でかわいそーな後輩を救うため!
俺のとっておきのチカラ…
今まで誰にも見せたことのないチカラ、見せてやるよ。」
大先生はそのまま、
隠れていた右腕をまっすぐ前に突き出す。
(大先生も…当たり前のように、
暗い所で、チカラ、使っちゃうわけね。)
そんな俺の心の声に気付くはずもなく。
大先生は、よく通る低い声で、勅令を、始めた。
「勅令するーーペアレ、揺るぎ放て。」
突き出された右腕付近の、
コートや、隠された黒の隊服のペリースが、大きく揺れて…
その、スキマから
『ガウっ!』
手のひらサイズの、ライオンが。
宙を舞うように、フワフワと飛び出してきた。
「お~!ちっちゃいペアレ、可愛い!」
夜の闇の中でも、不思議と…キラキラ輝くペアレ。
その美しさに、自然と、
俺の声も気持ちも、明るくなっていくのが分かった。
「この、いつもよりキュートなペアレはな、
今まさに”ダウジング”みたいなチカラを持ってるんだ。
シオンのいる場所を探って…見つけてくれる。
少し時間はかかるが、100%の確率で正確な居場所が分かるからな。
後はペアレに任せて、
俺たちはおしゃべりでもしながら、後ろを付いて行こうぜ。」
そう言って笑う大先生と一緒に、ペアレの後をついて歩き始めた。
歩き始めてすぐ。
ペアレを見ながら、ふっと、頭をよぎったこと…
「大先生は…何色の、カラーズなんだ?」
今まで、何となく聞きそびれていたんだけど。
キレイなペアレの輝きに見とれて、自然と口からこぼれた疑問。
「あぁ、言ってなかったな。
俺はな…簡単に言えば、”無色透明”のカラーズ持ちだ。」
「無色…透明?」
「そ。いかにも、”特色隊”、だろ?」
大先生は、自信満々に胸を張る。
でも…
「無色で…光を、吸収できるの?」
俺の、素朴な疑問。
大先生は引き続き自信満々の口調で、説明してくれた。
「ざっくり言うとだな。
カラーズは、光を吸収して、チカラに利用するだろ?
じゃあ、光をよく吸収するカラーズが、最強なんじゃないか??
そう、まさにその通り。
1番よく光を吸収する色は、もちろん【黒】だ。
黒い紙の一点に光を集中させると、紙が燃える、あれ。
あれは、他の色の紙では、黒みたいには簡単に燃えない。
なぜなら【黒】は、光を丸ごと吸収する最強の色で、
その他の色は、光の全ては吸収できず、溢れている光があるからだ。」
俺は、大先生の説明と、
今まで得てきたカラーズの一般知識とをすり合わせながら、黙って聞く。
「だがしかーし!
俺のカラーズのチカラは…根本から。その、原理から違うんだ。
光を”吸収”して利用している、というより
光を”増幅”して利用している、って感じだな。」
「光を、増やす?」
「そう。
無色透明っていうのは…要するに、”光の色”そのものだろ?
俺のカラーズは、光を吸収するんじゃなくて、光そのものになるんだよ。」
大先生は、嬉しそうに続ける。
「少しでも、光があれば良いんだ。
こんな夜でも、もちろん光がまったく無いわけじゃない。
少しある光を…
俺の無色透明なカラーズ内で乱反射させて、増幅して…使うんだよ。」
「なんか、すごい…!」
「乱反射させてるから、
シャボン玉みたいな…見る角度によって色が変わるような、
そういう、不思議なキラキラした色合いになるんだ。キレイだろ~?」
俺は、改めて目の前の宙を歩くペアレを見て。
「うんっ!!!すっごくきれいだ!」
大先生に負けない笑顔で、そう返事をした。
(発現をキレイだって思ったの…久しぶりだな。)
アオ兄の…綺麗な深緑色のカラーズを思い出す。
「あ!じゃあ…
アオ兄も、同じ方法なのかな?」
俺のつぶやきに、大先生は少し考えて
「アオバは…どうだろうな。
今度、直接聞いてみたらいいんじゃないか?
あとは、お前が言ってたブレイズ。
やつは、白色のカラーズ…
つまり、黒の逆で、光を全反射し、一切吸収しない色。
全反射することで、俺みたいに、光を増幅しているんだろうな。
シオンは…
俺もいまいち確信が持ててないが、あれは、たぶん…。」
その時、
大先生の声を、かき消すように
「お前は黙って、俺の言うことを聞いてればいいんだ!!!」
前方から、ものすごい怒鳴り声が聞こえてきて。
視線を向けると…
「…ごめんなさい。」
その怒鳴り声が向けられた先に、
ぽつりと謝るシオンが、無表情で立ち尽くしていた。
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