1 / 1
手紙とレイとの会話
しおりを挟むこんにちは。
最近全然会ってないので、お手紙を書こうかなと思いまして。
そうね。
では、まずは私の近況報告からしようかな。
最近、私はね、インテリアにハマっているの。
ええ、相変わらず特に戸棚や椅子にこだわっているわ。
やっぱりいい素材の木でできたもの一択ね。
以前私が取り寄せたものは全部あなたに持って行かれてしまったけど、あの時以上に統一感が出ているお部屋に今はなっているわ。
ぜひ、罪を償って牢獄を出たら、遊びに来て欲しいくらいね。
ただ、一切のものは渡しませんのでそこはご了承を。
その素晴らしいお部屋で過ごすのも素敵な時間だけど、最近は外で色々とするのにもハマっているわ。
最近は隣国から取り寄せた双眼鏡を使って、バードウォッチングをしているのよ。
うちの宮殿の近辺だけでもちゃんと見ると、たくさんの種類の鳥がいるのね。
牢獄の小さな窓だと、さすがに鳥の観察は困難でしょうから、牢獄を出てからぜひやってみるのをおすすめするわ。
他にもまだあるのよ。
最近は、農業もしているの。
ナスやトマト、キュウリ、それに今開発中の新しい品種のウリを育てているわ。
一つ新しいウリが実ったので食べてみたら、甘くてフルーツのような味で、本当に美味しかった。
今、市場に売り出す準備を始めているところよ。
いつかは、牢獄の食事にも小さなデザートとして提供されるんじゃないかしら。
あと、農業をやっていていいなと思ったのは、適度に日光に当たるのは健康ってことね。
当たりすぎは良くないけど、当たらなさすぎると健康に良くないみたいだから、小さな窓からでも日光に当たるように努めることをおすすめしとくね。
私の近況報告は一旦休憩にして、あなたたちが犯した罪がどれだけ暴かれているのかに関して報告するわね。
まず、あなたたちがやった、遺跡からの宝石の窃盗だけど、あなたたちがこっそり盗んだ宝石を隠している場所まで突き止められたわ。
まさか、あなたが買い取った牧場の、干し草を保管する倉庫に隠してあったなんて。
干し草の下から宝石が出てきた時はみんな驚いたそうよ。
まあとにかく、これで牢獄から出れた時に、こっそり宝石を回収するなんてことはできなくなったから、そこのところはよろしくね。
あと、共犯者も全員捕まっているわ。
私に政略結婚を迫ってきたのに、その後あなたと浮気したリオン、リオンが密かに雇っていた、手下たちは全員牢獄にいるわよ。
まあもっとも、牢獄の中だといくら近い場所にいても直接は会えないでしょうけどね。
え、あなたが雇った手下もいる?
もちろんそれも把握済み。
ただし、隣国まで逃げてそこで捕まったみたいだから、隣国の牢獄にいると聞いているわ。
まあとにかく、そんな感じで、もうこれ以上悪いことをできないようになっているから、そこは覚悟しなさい。
話を私の近況報告に戻そうかしら。
最近、お菓子づくりにハマってるの。
ちなみに、きちんと小麦粉や卵を混ぜるところからやってるのよ。
自分で作ったものを味わうっていうのは本当に素晴らしいってわかったわ。
私が大切に後で食べようと置いていたものを、あなたはいつも勝手に食べていたけど…
今はそういうことする人もいないから、少しずつおやつにしたりしているかな。
さてさて、そういえば今の私の仕事の話をしてなかったわね。
さっき話に出てきた農業は、あくまで趣味よ。
本業は契約書の翻訳のお仕事。
語学を勉強しておいて本当によかった。
やっと役立っているわ。
前にやっていたドレス職人の仕事はあなたにポストを奪われて以来やってないけど、今の翻訳の仕事が楽しいから、未練は全くないかな。
翻訳は翻訳で楽しいのよ。
例えばね、新しい言葉に出会うと、その国の文化や特徴を感じれたりするし。
それに、同じ翻訳家のレイと出会って、婚約することになったしね。
えっ。私が婚約できたのが驚きだって?
まあそりゃああなたにはそう思われるでしょうね。
リオンとあなたが婚約することになった時、私ごときに素敵な男性が惚れるわけがないと言っていましたもんね。
けど、私はあの時よりも素敵になれたと思うわ。
悪事がまとわりついているあなた視点だと変化はわからないかもしれないけど、仕草や歩き方も、友人に教えてもらって優雅になるようにしているのよ。
もちろん外面だけではなく、読書や農業で、色々な勉強もしているわ。
自己肯定感が高くなって、とても気分がいい毎日よ。
あなたも牢獄から出たら、地道に自分磨きをしたらどうかしら?
そうすれば、少しは心が綺麗になるのかなと思うけれど。
まあ、あなたはかなり大変な位置からのスタートですけど、それは自分のせいなのだから。
しっかりそれを自覚するのね。
これからの人生どうするにしても、自覚は必要よ。
リオンにも同じことを伝えておいてよ。あ、今は牢獄だから会えないか。
私からリオンにも手紙を出そうかしらね。
ま、気が向いたら出すことにするわ。
じゃあ最後に、私の婚約者のレイを紹介するわ。
レイは基本的には冷静なんだけど、たまに無邪気なところがあって、その時は可愛い。
それに優しくて、あと頭がいい。
そんなレイは、好奇心があって、私のお菓子作りや農業といった趣味を、一緒にやってくれる。
でも料理に関してはおっちょこちょいで、そこも可愛い。
「うん、可愛いんだよなあ…」
手紙を書き始めてから、初めて私はつぶやいた。
「ん? 可愛い?」
「れ、レイ? な、なんで?」
「ごめん。ほら、一緒に育てている畑の水やりの時間だからさ、呼びに来たんだ」
「あ、ほんとだ。水やりの時間ね!」
私は手紙をあわてて伏せて、立ち上がった。
「何か書いてるところだったの?」
「まあね、私の性格の悪い所を詰め込んだ文書」
「そんなのあるんだ。だから君自身は素敵なんだね」
「そういうこと」
「僕も何か書き留めてみようかな」
「あんまりお勧めはしないわ」
「そうなの?」
「うん」
私ももう、手紙の続きは書かないかな。
それに、この手紙を妹に実際に送ることもないような気がする。
私は手紙を封筒に入れて、引き出しにしまった。
あっ。ただ封筒に入れるだけじゃダメね。
私は封筒を取り出して、封筒に糊で封をした。
これで完璧に封印って感じかしらね。
「お待たせ。水やりに行きましょう」
私はレイに笑顔でそう言った。
482
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
【完結】私は駄目な姉なので、可愛い妹に全てあげることにします
リオール
恋愛
私には妹が一人いる。
みんなに可愛いとチヤホヤされる妹が。
それに対して私は顔も性格も地味。暗いと陰で笑われている駄目な姉だ。
妹はそんな私の物を、あれもこれもと欲しがってくる。
いいよ、私の物でいいのならあげる、全部あげる。
──ついでにアレもあげるわね。
=====
※ギャグはありません
※全6話
婚約破棄されたけど、どうして王子が泣きながら戻ってくるんですか?
ほーみ
恋愛
「――よって、リリアーヌ・アルフェン嬢との婚約は、ここに破棄とする!」
華やかな夜会の真っ最中。
王子の口から堂々と告げられたその言葉に、場は静まり返った。
「……あ、そうなんですね」
私はにこやかにワイングラスを口元に運ぶ。周囲の貴族たちがどよめく中、口をぽかんと開けたままの王子に、私は笑顔でさらに一言添えた。
「で? 次のご予定は?」
「……は?」
婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?
ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」
華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。
目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。
──あら、デジャヴ?
「……なるほど」
【短編】可愛い妹の子が欲しいと婚約破棄されました。失敗品の私はどうなっても構わないのですか?
五月ふう
恋愛
「お姉様。やっぱりシトラ様は、お姉様ではなく私の子供が産みたいって!」
エレリアの5歳下の妹ビアナ・シューベルはエレリアの婚約者であるシトラ・ガイゼルの腕を組んでそう言った。
父親にとって失敗作の娘であるエレリアと、宝物であるビアナ。妹はいつもエレリアから大切なものを奪うのだ。
ねぇ、そんなの許せないよ?
短編 一人目の婚約者を姉に、二人目の婚約者を妹に取られたので、猫と余生を過ごすことに決めました
朝陽千早
恋愛
二度の婚約破棄を経験し、すべてに疲れ果てた貴族令嬢ミゼリアは、山奥の屋敷に一人籠もることを決める。唯一の話し相手は、偶然出会った傷ついた猫・シエラル。静かな日々の中で、ミゼリアの凍った心は少しずつほぐれていった。
ある日、負傷した青年・セスを屋敷に迎え入れたことから、彼女の生活は少しずつ変化していく。過去に傷ついた二人と一匹の、不器用で温かな共同生活。しかし、セスはある日、何も告げず姿を消す──
「また、大切な人に置いていかれた」
残された手紙と金貨。揺れる感情と決意の中、ミゼリアはもう一度、失ったものを取り戻すため立ち上がる。
これは、孤独と再生、そして静かな愛を描いた物語。
「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました
ほーみ
恋愛
その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。
「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」
そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。
「……は?」
まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。
婚約破棄ですか、では死にますね【完結】
砂礫レキ
恋愛
自分を物語の主役だと思い込んでいる夢見がちな妹、アンジェラの社交界デビューの日。
私伯爵令嬢エレオノーラはなぜか婚約者のギースに絶縁宣言をされていた。
場所は舞踏会場、周囲が困惑する中芝居がかった喋りでギースはどんどん墓穴を掘っていく。
氷の女である私より花の妖精のようなアンジェラと永遠の愛を誓いたいと。
そして肝心のアンジェラはうっとりと得意げな顔をしていた。まるで王子に愛を誓われる姫君のように。
私が冷たいのではなく二人の脳みそが茹っているだけでは?
婚約破棄は承ります。但し、今夜の主役は奪わせて貰うわよアンジェラ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
結局、封をして引き出しにしまうってところがいいなあ。
なんか、深い。
おもしろかったです!
感想誠にありがとうございます!
一番こだわった展開をお褒めいただいて本当に嬉しいです。
ありがとうございます!
二度と出られない か 出たら命の保証がない んだろうなあ
リオンの親族が待ち構えてそう(巻き添えで没落したという妄想)
姉妹だけの話なら修道院で済みそうだし、他にも被害者がいる?
感想誠にありがとうございます!
色々と想像してくださって作者といたしまして本当に嬉しいです。ありがとうございますm(_ _)m
このお姉さん、妹さんが公開処刑されそうだから最後の手紙を書いているようにも見えるなw
感想大変ありがとうございます!!