「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました

 その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。

「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」

 そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。

「……は?」

 まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。
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