異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

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第七十八話 露天風呂と冬支度

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第七十八話 露天風呂と冬支度


「どの辺が良いかなぁ」

完全に寒くなる前に、作っておきたい露天風呂!
建物の真ん中にある食堂横から、庭を突っ切る渡り廊下を作った。

「ここからなら、二階からも見えないかな」

庭園の木々が邪魔して、いい感じに隠してくれる。
しかも、島の端に近いから展望もバッチリ!
イメージは、昔の銭湯が良いな。
建物の入り口は一つで、中で女湯と男湯を分ける。暖簾も忘れずに!
それぞれに脱衣所を作り、次はお風呂だ。
穴を掘って・・・床は石かな。
洗い場も作って、岩や木で装飾。

「おっと、これは忘れると大変」

男湯と女湯の間に、竹を編んだ壁を設置。

「ふぅ・・・こんなとこかな」

流石に温泉とまでは行かないけど、露天風呂だけでも十分テンション上がる!
ぱっと見、老舗旅館に見えなくも無い。
夜に行く事も考えて、ここまでの道沿いに灯篭を置いて・・・完成。

「う・・・寒っ」

日差しは温かいが、吹き付ける風が冷たい。
そろそろ冬支度をしないとね。





「モニュナさん、ちょっと良い?」

モニュナさん達がいる小屋を覗いてみると、何故か毛玉が数個転がっていた。大きさは、バスケットボールくらいある。

「あれ、お出かけかな?それにしても、何だろうこ・・・れ!?」

毛玉がにゅっと立ち上がり、トコトコと私の方へと向かって来た。

「その足は、モニュナさん?」

毛玉の下を見てみると、鴨の足が見えた。

「クァ!」
「おお、やっぱりモニュナさんだ。それって、冬毛、的な?」

犬や猫じゃあるまいし、季節の生え代わりってあるのか?
因みに私は、ちょっとボフってます。冬毛になりかけだ。

「クァ!」

いつもの様に、丸を作るモニュナさん。
鴨にも冬毛(羽?)があるんだなぁ。

「今日は冬支度しようと思うんだけど、どう?」
「クァ!」

良いらしい。
前からやってあった小屋を、保温シートで覆って行く。
小屋の中にもフカフカの藁を敷き、保温性抜群。

「寒かったら、言ってね」
「クァ!」
「あの・・・少しだけ、触らせてもらえないかな?」
「クァ」

許可が出たので、恐る恐る触ってみる。

「わぁ・・・ほわっほわっ!」

高級羽毛!めっちゃ気持ち良い!しかも温かい。

「ありがとね」
「クァ!」

いかん、いかん。モフモフしすぎて、手を離せなくなるところだった。
気持ちを切り替え、ポチの所へと向かう。

「主!」
「ヒナ」

ナーブとポチが出迎えてくれた。

「二人とも、冬支度をしに来たよ」
「「冬支度?」」

ハモッた。可愛いなぁ。

「クッションと、毛布ね」

私は知っている。ポチとナーブが、偶にポチの小屋で一緒に寝ているのを!

「さて、次は・・・」

ああ、モチ一家の所にも行かないとな。そう思って歩いていると、道の向こうに亀が見えた。

「亀爺、久しぶり?」

最後が疑問形になったのは、亀爺の隣にもう一匹亀がいたからだ。

「おお、ヒナ殿。久しいのぉ」
「こんな所でどうしたの?」
「いやなに、ヒナ殿に弟を紹介しようと思うてなぁ」

あ、弟だったんだ。

「そっか。初めまして」
「こりゃあまた別嬪さんじゃのぉ」
「弟はつい最近まで行方知れずだったんじゃが、ひょっこり帰ってきてのぉ」
「帰って来たって・・・どうやって?」

ここは浮島だ。転移石を使うか、飛んでくるかのどちらかしかないと思うんだけど。

「儂もようわからんのじゃがのぉ」
「兄上、さっきも説明したじゃろて。砂が沢山ある国におったんじゃが、暑ぅて暑ぅてのぉ。

砂の沢山ある国?

「やっとこさ水を見つけたんじゃが、水まで熱ぅてのぉ。下へ下へと潜っておったら、寝てしもうた」

なんか、どっかで聞いたような?

「ほんで、心地良い魔力を感じて起きたら、スポーンと飛ばされてのぉ。気が付いたら、この島に戻って来て負った」

トーナ王国の泉が涸れた原因って・・・亀爺(弟)か!

「「ふぉっふぉっふぉっ」」

これ、トーナの人達には言わない方が良いだろうなぁ。





「ようこそ、リシュナ」
「キュ!」

今日は、リシュナをご招待。露天風呂のお披露目です。

「ほぉ、これが露天風呂か。外で風呂に入るのは初めてじゃな」

「こっちで脱いで、身体を洗ってから入ってね。それじゃ、ごゆっくり」
「何故出る。お主も共に入れば良い」
「へ?でも」

この世界にもお風呂はあるが、贅沢品。
一般市民は身体を拭くか、川に入るかになる。
お風呂に入れる王侯貴族でも、他の人と一緒に入る文化は無い。
まぁ、ヒノモトに行けばあるかもしれないけど。

「良い。ほれ、早う」
「まぁ、リシュナが良いなら」

と言う事で、一緒に入る事になった。
流石に猫の姿で入ると毛が浮くので、人型に変身。
ちらりとリシュナの方を見ると、ボン!キュ!ボン!おぅふ・・・。
かたや自分は・・・いや、みなまで言うまい。な、無いわけじゃないもの!

「先ずは身体を洗うのだったな」

洗い場の木の椅子に座る姿まで、優雅。
私も隣に座って、説明をする。

「ほう、面白い。では、頼むぞ」
「は、はい」

女王様らしく、リシュナは自分で身体を洗った事などない。

「じゃあ、先ずは髪ね。香はどれが良いかなぁ・・・やっぱり、バラかな」

私がいつも使っているのは桃だが、リシュナのイメージでバラの香りがするものを作っておいた。
リシュナの髪を濡らし、洗っていく。

「良い香りじゃ」
「良かった。後でトリートメントもするからね」
「とり?もしや、これもお主が作ったのか?」
「そうだよ?」
「では、今度からこれももらおう。その入れ物一つ、金貨二枚でどうじゃ?」
「多いよ!」

シャンプー一つで、下宿の二か月分!

「それほどの価値がある」

こうなると、リシュナは聞いてくれないんだよなぁ。

「じゃあ、シャンプーとトリートメントのセットで、金貨二枚」
「金貨四枚」
「洗顔も付けて、金貨三枚」
「増えておるではないか」
「バレた?」
「ふふ、本当にお主は」

結局、シャンプーとトリートメント、洗顔に泡立て様のネットをつけて、金貨五枚になった。
リシュナは不服そうだったけど。もっと払いたくて不満ってのも、リシュナらしい。
洗いタオルに液体せっけんを使って泡を立て、リシュナの身体を優しく洗っていく。

「クロ、お主は我が洗ってやろう」
「キュ」

リシュナの優しい横顔は、女王様ではなく母親の顔だ。

「お湯かけるよぉ」

リシュナとクロにシャワーをかけ、泡を流す。

「では、次はヒナじゃの」
「へ?私は良いよ!先に」

お湯に入っていてと言いかけて、隣の男湯の扉が開く音が聞こえて来た。

「広いな!」
「素敵ねぇ」

ジローとクレスの声が聞こえて来る。

「泳ぐなよ」
「子供か!」

エストもいるみたいだな。

「ひゃ!」

突然背中にヌルっとした感触がして、声が出てしまった。

「リシュナ~?」
「ほれ、諦めて我に洗われよ」
「ちょ、くすぐったい」

他人に洗われるのが、こんなにくすぐったいとは!

「人型だと、結構あるではないか」
「そうかなぁ?って、前は自分で洗うから!」
「良いではないか」

悪代官か!

「あまり暴れると、手が滑ってしまうぞ」
「ひゃん!」
「ふふふ」

うぅ、リシュナが怖い!
結局、全身洗われた・・・。

「もう、リシュナとは一緒に入らない」
「ははは!」

お風呂から出て、渡り廊下を歩く。冷たい風が、火照った頬を撫でた。
後ろからカラカラと戸が開く音が聞こえて来た。
どうやら三人も出てきたようだ。

「ジロー、クレス、お帰り!」
「お、おう」
「た、ただいまぁ~」
「?」

どうしたんだろう?

「エスト、どうだった?」
「あ、ああ・・・」
「どうしたの?」

良く見ると、三人とも顔が赤い。もしかして、のぼせた?

「ごめん、お湯熱かった?」
「い、いや、大丈夫だ」

いつもなら近い顔が、今は人型なので少し遠い。
プイっとそっぽを向くエストの表情が、見えない。

「ヒナ、そうっとしておいておやり。それよりも、化粧水と言う物を早う」
「あ、はいはい」

ヒナの去り際、ふわりと桃の香が風に運ばれる。
幸か不幸か、その風は三人の鼻をくすぐった。
三人同時に息を飲んだ後、三つのため息が風に消えていった。

「「「はぁ~・・・」」」
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