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第七十九話 寒いのに、ご苦労様
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第七十九話 寒いのに、ご苦労様
「寒いと思ったら、雪か」
昨日、はんてんを引っ張り出しておいて良かった。
クロと猫達を起こさないように部屋を出て、食堂へと向かう。
「さっむい、さっむい」
食堂の真ん中にあるストーブに魔力を込めると、ほんのりと温かくなり始めた。
見た目は普通の筒型ストーブだが、中の熱源は火の魔石だ。
ヤカンに水を入れ、ストーブの上に置く。
「おはよう。ダイフク、ネリ」
プルプルと震える、二匹の小さなスライム。
暑さ寒さもなんのその。
「さて、今日もよろしくね」
二時間後、皆が起きて来た。
「ジローとエストはご飯で、クレスとキャロルはパンね」
それぞれおぼんに乗せ、手渡していく。
本日の朝食メニュー:
和:白米・豆腐とお揚げの味噌汁・鮭・キュウリのぬか漬け・ほうれん草のお浸し。
洋:焼きたてクロワッサン・ハムエッグ・サラダ・コーンスープ。
最近、パン作りも始めました。
やってみると、奥が深いと言うか・・・難しい。
「あ、そうだ。お弁当あるから、持って行ってね」
キッチンのカウンターに、それぞれの名前を刺繍した巾着(アイテムバッグ)を置いておく。
冬にも依頼はあるらしく、冒険者組は今日も各地へ向かう。
「家宝に」
「食べなさい」
アヌリがまたアホな事言うので、釘を刺しておく。
食後、皆がそれぞれの場所へと向かった後だった。
突然、チャイムが鳴った。
必要は無いけど、一応付けておいた見た目程度のチャイム。
食堂から玄関を見ると、すりガラスの向こうに人影が見えた。
因みに、魔王であるベルは、普通に入って来る。
「は~い」
一応探索を掛けてみるが「?」と出るだけだった。
玄関の戸を開けると、セバスとよく似た燕尾服を着て、眼鏡を掛けた男性が立っていた。
「貴様か!魔王様を誑かした泥棒猫ぶふっ!?」
また変なのが来た。魔王様とか言った?
条件反射的に顔を掴んでしまった。
「ヒナ、今変な音が・・・どうした?」
「ベルをたぶらかしたとか、泥棒猫とか失礼な事言われたから、思わず掴んじゃった」
てへっ。
「ちょっと待ってろ。剣もってくる」
剣!?
「いや、剣はいらないから!縄で!」
「縄か」
エストの顔に「不服だ」と書いてありそうだな。
「一応、ベルの知り合いっぽいから」
「ならば、しょうがないな」
少し待つと、エストが縄を持ってきてくれて、男性を縛ってくれた。
「エスト、これ」
「縄、だろう」
「いや、縄だけどさぁ。倉庫の中にある、一番チクチクする奴じゃん」
「こっちでも良かったんだが」
害獣避けの、鉄条網!そんなもん、何処から探してきたんだ!ああ、倉庫かぁ。そう言えば、整理しようと思って倉庫の箱の中に入れておいて忘れてたな・・・。
「それで、コイツどうする?気絶しているみたいだが」
「本当、失礼だよねぇ」
私の手が臭いみたいじゃないか。
どうやら肉球で息が出来なかったみたいだ。エストが縄を取りに行っている間に、気絶しちゃったんだよね。
「吊るしておくか?」
「いや、柿じゃないんだから・・・あ、干し柿も良いねぇ。明日やろうかな」
「柿を干す?」
「秋の味覚を、冬でも美味しく食べられるように保存する方法で」
「アイテムバッグがあるのに?」
「・・・干し柿と言う、美味しいおやつを作る方法です」
秋と言えば、干し柿や栗きんとん等、美味しいおやつの季節である。芋羊羹も忘れずに。
「ああ、あの方法が行けるかも?」
「あの方法?」
台所から壺を持って来た。
「エストも最初食べた時にびっくりしてたよね」
「ああ、あれか」
前に、気付け薬に使えるくらいに酸っぱいと言われた事があった、梅干しだ。
エストに男性の口を開けてもらい、一粒ポイっと放り込んだ。
「んんんんん~!?」
エストが男性の口を手で押さえているので、吐き出し不可となっております。
あ、一応種なしなので、喉に詰まらせる心配は無いです。
ゴクン、と飲み込む音が聞こえて来て、やっとエストが手を離した。
もしかして、結構怒ってる?
「貴様!何を飲ませた!?毒か!?」
「どっちかって言うと、薬だね」
「ああ、胃がもたれた時とか」
「二日酔いとか」
小さい頃は、梅肉が薬だった。
お腹が痛い時とか、お祖母ちゃんが爪楊枝にちょこっとつけて、舐めさせてくれた。
こっちでも作れるかなぁ。
「ふざけるな!」
う~ん、どうしたもんかなぁ。
ベルには通信のイヤーカフスは渡してないしなぁ。
どうしようかと思っていたら、玄関の扉が勢いよく開いた。
「ヒナ!」
噂をすれば、ベルだ。
「ベル。丁度良かった。これって、ベルの所の人?」
「遅かったか」
ベルが急いで靴を脱ぎ、食堂までやって来た。
「ベルガシュナード様!このような者どぐふぅ!?」
ああ、せっかく意識を取り戻したのに!
ベルの右ストレートを受けた男性は、また意識を失ってしまった。
「本当にすまない!」
勢いよく頭を下げるベル。
「この馬鹿が何かしなかったか?」
「大丈夫、大丈夫」
「ベルを誑かしたとか、泥棒猫と呼んだらしい」
エスト、余計な事を言わない!
「・・・吊るしてくる」
「ちょい!」
何!?吊るすのが流行りなの!?
なんとかベルを宥めて、お茶を出した。
すると、最近こっちに来る事が多くて、臣下からあまり良く思われていない事を話してくれた。
「魔王としての仕事はきちんとやっているのだが、その・・・」
「まぁ、自国の王が頻繁に他国へ行くというのは、あまり良くはないか」
この島はどこの国にも所属してはいないけれど、人族の国の上だしね。
「う~ん、島を動かす?」
「そんな事が出来るのか?」
「出来るよ」
と言う事で、引っ越しが決定しました。
*
ツバキに相談してみると、意外な言葉が帰って来た。
「あんまりお勧めしないわぁ」
「どうして?」
「魔の地域は、魔力が安定しないのよぉ。だから、少なからず影響が出ると思うのぉ」
ツバキによると、大気中の魔力が安定せず、作物に影響が出る可能性がある。
最悪、猫達やジロー達にも出るかもしれない。
「それは困るなぁ」
魔族の領域を含めた世界地図を見せてもらった。
世界の三分の一くらいかな?が、魔の領域と呼ばれる、魔族の国だった。
「ここって、島だよね?」
境目から一番近い、こちらの領域に島があった。近いとは言え、結構な距離があるけど。
「ああ、そこがヒノモトよ」
「おお!ヒノモト!」
ジロー達から聞いて、行ってみたいと思ってたんだ!
「行きたい!」
「そうねぇ。この辺りなら、影響も無いと思うわぁ」
ヒノモト行き、決定!
ここからは三日程かかるらしく、ベルはそれまでに臣下を説得する事になった。
一応、転移石とイヤーカフスを渡しておいた。
「また、三日後に」
「気を付けてね!」
ベルは縄に縛られたままの男性を小脇に抱え、帰って行った。
「ヒナはそんなにヒノモトに行きたかったのか」
「元の世界にいた国に似てるみたいだしね」
「元の世界?」
「へ?あれ?言ってなかったっけ?」
ジローとクレスの事を話した時に・・・ああ、言ってないわ。
「転生者・・・こっちだと、渡り人、だっけ?それでぇす」
「は・・・はぁ!?」
あははははは・・・まぁ、そういう事もある!
「寒いと思ったら、雪か」
昨日、はんてんを引っ張り出しておいて良かった。
クロと猫達を起こさないように部屋を出て、食堂へと向かう。
「さっむい、さっむい」
食堂の真ん中にあるストーブに魔力を込めると、ほんのりと温かくなり始めた。
見た目は普通の筒型ストーブだが、中の熱源は火の魔石だ。
ヤカンに水を入れ、ストーブの上に置く。
「おはよう。ダイフク、ネリ」
プルプルと震える、二匹の小さなスライム。
暑さ寒さもなんのその。
「さて、今日もよろしくね」
二時間後、皆が起きて来た。
「ジローとエストはご飯で、クレスとキャロルはパンね」
それぞれおぼんに乗せ、手渡していく。
本日の朝食メニュー:
和:白米・豆腐とお揚げの味噌汁・鮭・キュウリのぬか漬け・ほうれん草のお浸し。
洋:焼きたてクロワッサン・ハムエッグ・サラダ・コーンスープ。
最近、パン作りも始めました。
やってみると、奥が深いと言うか・・・難しい。
「あ、そうだ。お弁当あるから、持って行ってね」
キッチンのカウンターに、それぞれの名前を刺繍した巾着(アイテムバッグ)を置いておく。
冬にも依頼はあるらしく、冒険者組は今日も各地へ向かう。
「家宝に」
「食べなさい」
アヌリがまたアホな事言うので、釘を刺しておく。
食後、皆がそれぞれの場所へと向かった後だった。
突然、チャイムが鳴った。
必要は無いけど、一応付けておいた見た目程度のチャイム。
食堂から玄関を見ると、すりガラスの向こうに人影が見えた。
因みに、魔王であるベルは、普通に入って来る。
「は~い」
一応探索を掛けてみるが「?」と出るだけだった。
玄関の戸を開けると、セバスとよく似た燕尾服を着て、眼鏡を掛けた男性が立っていた。
「貴様か!魔王様を誑かした泥棒猫ぶふっ!?」
また変なのが来た。魔王様とか言った?
条件反射的に顔を掴んでしまった。
「ヒナ、今変な音が・・・どうした?」
「ベルをたぶらかしたとか、泥棒猫とか失礼な事言われたから、思わず掴んじゃった」
てへっ。
「ちょっと待ってろ。剣もってくる」
剣!?
「いや、剣はいらないから!縄で!」
「縄か」
エストの顔に「不服だ」と書いてありそうだな。
「一応、ベルの知り合いっぽいから」
「ならば、しょうがないな」
少し待つと、エストが縄を持ってきてくれて、男性を縛ってくれた。
「エスト、これ」
「縄、だろう」
「いや、縄だけどさぁ。倉庫の中にある、一番チクチクする奴じゃん」
「こっちでも良かったんだが」
害獣避けの、鉄条網!そんなもん、何処から探してきたんだ!ああ、倉庫かぁ。そう言えば、整理しようと思って倉庫の箱の中に入れておいて忘れてたな・・・。
「それで、コイツどうする?気絶しているみたいだが」
「本当、失礼だよねぇ」
私の手が臭いみたいじゃないか。
どうやら肉球で息が出来なかったみたいだ。エストが縄を取りに行っている間に、気絶しちゃったんだよね。
「吊るしておくか?」
「いや、柿じゃないんだから・・・あ、干し柿も良いねぇ。明日やろうかな」
「柿を干す?」
「秋の味覚を、冬でも美味しく食べられるように保存する方法で」
「アイテムバッグがあるのに?」
「・・・干し柿と言う、美味しいおやつを作る方法です」
秋と言えば、干し柿や栗きんとん等、美味しいおやつの季節である。芋羊羹も忘れずに。
「ああ、あの方法が行けるかも?」
「あの方法?」
台所から壺を持って来た。
「エストも最初食べた時にびっくりしてたよね」
「ああ、あれか」
前に、気付け薬に使えるくらいに酸っぱいと言われた事があった、梅干しだ。
エストに男性の口を開けてもらい、一粒ポイっと放り込んだ。
「んんんんん~!?」
エストが男性の口を手で押さえているので、吐き出し不可となっております。
あ、一応種なしなので、喉に詰まらせる心配は無いです。
ゴクン、と飲み込む音が聞こえて来て、やっとエストが手を離した。
もしかして、結構怒ってる?
「貴様!何を飲ませた!?毒か!?」
「どっちかって言うと、薬だね」
「ああ、胃がもたれた時とか」
「二日酔いとか」
小さい頃は、梅肉が薬だった。
お腹が痛い時とか、お祖母ちゃんが爪楊枝にちょこっとつけて、舐めさせてくれた。
こっちでも作れるかなぁ。
「ふざけるな!」
う~ん、どうしたもんかなぁ。
ベルには通信のイヤーカフスは渡してないしなぁ。
どうしようかと思っていたら、玄関の扉が勢いよく開いた。
「ヒナ!」
噂をすれば、ベルだ。
「ベル。丁度良かった。これって、ベルの所の人?」
「遅かったか」
ベルが急いで靴を脱ぎ、食堂までやって来た。
「ベルガシュナード様!このような者どぐふぅ!?」
ああ、せっかく意識を取り戻したのに!
ベルの右ストレートを受けた男性は、また意識を失ってしまった。
「本当にすまない!」
勢いよく頭を下げるベル。
「この馬鹿が何かしなかったか?」
「大丈夫、大丈夫」
「ベルを誑かしたとか、泥棒猫と呼んだらしい」
エスト、余計な事を言わない!
「・・・吊るしてくる」
「ちょい!」
何!?吊るすのが流行りなの!?
なんとかベルを宥めて、お茶を出した。
すると、最近こっちに来る事が多くて、臣下からあまり良く思われていない事を話してくれた。
「魔王としての仕事はきちんとやっているのだが、その・・・」
「まぁ、自国の王が頻繁に他国へ行くというのは、あまり良くはないか」
この島はどこの国にも所属してはいないけれど、人族の国の上だしね。
「う~ん、島を動かす?」
「そんな事が出来るのか?」
「出来るよ」
と言う事で、引っ越しが決定しました。
*
ツバキに相談してみると、意外な言葉が帰って来た。
「あんまりお勧めしないわぁ」
「どうして?」
「魔の地域は、魔力が安定しないのよぉ。だから、少なからず影響が出ると思うのぉ」
ツバキによると、大気中の魔力が安定せず、作物に影響が出る可能性がある。
最悪、猫達やジロー達にも出るかもしれない。
「それは困るなぁ」
魔族の領域を含めた世界地図を見せてもらった。
世界の三分の一くらいかな?が、魔の領域と呼ばれる、魔族の国だった。
「ここって、島だよね?」
境目から一番近い、こちらの領域に島があった。近いとは言え、結構な距離があるけど。
「ああ、そこがヒノモトよ」
「おお!ヒノモト!」
ジロー達から聞いて、行ってみたいと思ってたんだ!
「行きたい!」
「そうねぇ。この辺りなら、影響も無いと思うわぁ」
ヒノモト行き、決定!
ここからは三日程かかるらしく、ベルはそれまでに臣下を説得する事になった。
一応、転移石とイヤーカフスを渡しておいた。
「また、三日後に」
「気を付けてね!」
ベルは縄に縛られたままの男性を小脇に抱え、帰って行った。
「ヒナはそんなにヒノモトに行きたかったのか」
「元の世界にいた国に似てるみたいだしね」
「元の世界?」
「へ?あれ?言ってなかったっけ?」
ジローとクレスの事を話した時に・・・ああ、言ってないわ。
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