異世界着ぐるみ転生

こまちゃも

文字の大きさ
106 / 141
連載

第百十九話 平和?

しおりを挟む
第百十九話 平和?


猫の家族達が島に来てから、数日が経った頃。
島で初めて、作物以外の新しい命が産まれた。
夜中にお産が始まりそうだと黒猫さんから聞いて、部屋の外から静かに応援していた。
そして明け方、可愛い子猫が三匹産まれた。
扉の隙間から覗いていた私達だが、母猫さんから許しが出たので、そっと部屋へと入る。

「か、かわひぃ~」

皆それぞれ、小さな声で歓喜!
一生懸命乳を吸う子猫の姿。

「タオルの追加いる?ご飯は?」
『ありがとぉございます』

ちょっとおっとりした喋り方の母猫さんは、クリーム色の長毛猫さん。
子猫が毛の中に半分くらい埋まっている。

「お疲れ様。ゆっくり休んでね」
『はい~』

無事に産まれて良かったぁ。
あまり見ていても負担になるので、早々に部屋を出た。

「かわいかったぁ!」
「ちっちゃい!」

食堂に移動すると、皆それぞれに嬉しそうに話をし始める。
産まれたばかりの子猫を見るのは、初めてだった。

「本当、可愛かったわぁ」
「あんなに小さいんだな」

コマ達は得に嬉しそうだ。あの子達が来てから、一生懸命お世話してくれていたしね。
猫が猫トイレを掃除すると言う、不思議な光景を見た時はちょっとほっこりした。

「エスト、どうしたの?」

いつも手伝ってくれるエストがぼんやりと自分の手を見つめている。

「猫って」
「ん?」
「猫って・・・あんなに小さかったんだな」
「まぁ、気持ちは分かるけどね」

この島で猫って言えば、私(二メートル)かコマ達(一メートル)だもんなぁ。

「でも、その手の動きは変態オヤジっぽいから止めた方が良いよ」

モフモフを思い出しているのか、手が怪しい動きをしていたからね。

「へん・・・おや・・・」
「さぁ、朝ご飯の準備するよぉ」

子猫用のおもちゃを用意しようか?
黒猫さんの子供はまだ目が開いていないし、う~、楽しみだ!
そして次の日の昼頃、もう一人の出産が終わり、三匹の子猫が増えた。
皆がその姿に更にデレデレになったのは、言うまでもない。





「お、今日はミケとサシか」

猫家族達の部屋に、ミケとサシが入って行くのが見えた。
あまり大人数で入るのはストレスになりそうなので、交代制でお世話をしているらしい。
ガーゴとジェスカ夫妻は身体が大きいので写真で我慢してもらっているが、時々庭の方から部屋を覗きに来ている。

「ヒナ」

噂をすればと言うか、温室に行く途中でガーゴがやって来た。

「新しい写真なら、ここに」

日々ページが埋まっていくアルバムを渡そうとしたが、ガーゴが落ち込んでいる様に見えて手が止まった。

「どうしたの?」
「その・・・鉱石の事」

ガーゴには島の鍛冶をお願いしてあり、ジロー達もお世話になっている。
使う鉱石は島にある洞窟から好きに採掘して使ってくれと言ってある。

「ヒヒイロカネ、使うのに、必要な物。でも、伝説級」
「鍛冶をするのに必要な物があるけど、それが伝説級だからどうしようって事?」

ガーゴが頷いた。
何とも分かり辛いが、最近少し分かるようになってきた。

「その伝説級の物って?」
「バラ。数百年、見つかってない」

伝説級の・・・バラ?

「ガーゴ、ちょっとこっち」

手招きをして、一緒に温室へと入った。

「もしかして、これ?クリスタルローズなんだけどさ」

振り返ると、ガーゴが固まっていた。

「ちょっと育ち過ぎちゃって」

初めて花が咲いた時はかなり感動したんだけど、それからにょきにょきと成長。
まるでガラス細工の様な薄い緑色の茎と葉とトゲに、これまたガラス細工の様な透明感の深紅の花。
温室の側面を埋め尽くしそうな程になりました。

「こ、これ・・・」

固まっていたガーゴがプルプルと震え出した。

「一つで、ヒヒイロカネの山、買える」
「へぇ~」

と言われても、いまいち価値が分からん。
ヒヒイロカネが伝説級ってのは知っているけど、どれくらいの価値で取引されているのかはさっぱりだ。

「綺麗だもんねぇ」

貴族とか好きそう。
因みにこの花、見た目と名前はバラなのに、枯れる時は牡丹の様に花ごとぽとっと落ちる。しかも、綺麗な形を保ったまま。

「花だけなら・・・よいしょっと。ここにあるよ」

温室の隅に置いてあった箱を持って来た。
スーパーの買い物かごくらいの大きさだが、落ちた花が山盛り入れてある。
捨てるのももったいなくて、ね。

「あ、白色もあるよ。白っていうか、透明だけど。ん?」

固まっていると思っていたガーゴが、よく見ると白目になっていた。

「へ?」

そのまま、パタリと地面に倒れた!

「うぉぅ!?ちょ、うぇぇ!?」

慌ててイヤーカフスでジェスカを呼び出し、温室に来てもらった。

「ちょっと、あんた!どうしたってんだい!」
「ごめん。花を見せたらこうなっちゃって」
「花って・・・こいつは・・・」

温室の中を見たジェスカが固まった。
そしてそのまま、ふぅっと意識を手放してしまった。

「えぇぇ・・・これ、どうしたら良いのさぁ」

結局、ジローとエストに手伝ってもらって二人を運び出し、縁側に寝かせた。
三十分後、目を覚ましたジェスカに頭を殴られた。解せぬ。

「とんっでもないもん、突然見せるんじゃないよ!」
「え、えぇ~?だって、花じゃん」
「伝説級の、ね!まったく、心臓が止まるかと思ったよ!お前さんはもうちょっと物の価値ってのを」

お説教が始まってしまった。
そこから一時間、希少な物は数が少ないから希少であり、伝説級の物をジャガイモみたいに箱に入れておくな!的な話を延々聞かされた。

「お~い、ジェスカ。その辺にしてやってくれ」
「ジロー!あんたや他の冒険者がいながら!」
「ヒナにとっては、花は花。石は石。伝説級だろうと、そこらに落ちているもんでも、一緒」
「はぁ?」
「伝説級のお宝も、飾っておくだけなら何の意味もない。逆に、そこらに落ちている石でも、使える物なら大切にする。そこの漬物石みたいにな」

私が今朝、洗って綺麗にした漬物石。縁側で日干し中のそれをジローが指さした。

「そういう所、俺は結構好きなんだけどな」

わしゃわしゃと頭を撫でられた。

「この子が良い子なのは、あたいも知ってるさ。ただ、心配なんだよ」
「ありがとう、ジェスカ」

こうやって怒ってくれるのも、私を心配して言ってくれているのは分かっている。
私が騙されて、酷い目に合わない様に。

「ちゃんと気を付けてるから、大丈夫だよ」

この島で採れる物や作った物を、外に流通させるつもりは無い。
渡している人達には厳重に扱う様に言ってあるしね!

「その割には、欠損も治すようなポーションやら色々出してるけどな」
「ヒナ!」

ジローの裏切り者!

「いや、ほら!それは、売ったとかじゃなくて、その、ヤマタノオロチの時に怪我をした女の子とかさ!もう!ジローの馬鹿!」
「ヤマタノオロチって、あの東の島国の?封印されてるっていう化け物かい?」

うわぁっほう!墓穴掘ったぁ!

「ジェ、ジェスカさん、顔が怖いよぉ?」
「・・・まさか・・・戦ったのかい?」
「あの時のヒナは凄かったなぁ!あの化け物が手も足も出なくて」
「ジロー!ちょっと黙ろうか!?ジェスカ、その、大丈夫だったよ!?私は怪我もしなかったし!」

あああああ、ジェスカの顔がどんどん鬼の形相に!

「伝説の化け物と戦って、無傷?はは、そいつは凄い・・・って、このお馬鹿!」
「あの時はその、頭に血が上ったっていうか・・・。でも、もしまた同じ事になっても、私は戦うよ」

世界を救うなんて事は勇者とか英雄がやれば良い。
私は、私の腕が届く場所を守りたい。

「・・・はぁ・・・まぁ、あたいも冒険者なんてやってるから、気持ちは分からないでもない」
「あはは」
「それで、ヒナが化け物と戦っている時、あんたは何をしていたんだい。ジロー」
「へ?」
「まさか、黙って見ていた、なんて事はないだろうねぇ。ねぇ?Sランク冒険者さんよぉ」

あ、矛先がジローに向いた。

「ま、待て!話せば分かる!」
「へぇ~・・・じゃあ、その話とやらを聞かせてもらおうかねぇ」

ジェスカがユラリと立ち上がった。
ジローは既に、逃げ腰だ。

「ヒナ!」

助けを求められたが・・・。

「頑張れ!」
「裏切り者!」

先に裏切ったのは、そっちです。
あ、ジローが逃げた。

「待ちなぁ!」

すかさずジェスカが追いかける!
わぁ、早いなぁ。
やれやれ。今日も島は平和です。
しおりを挟む
感想 449

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。