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第百三十二話 雪に閉ざされた村
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第百三十二話 雪に閉ざされた村
暑い夏がやって来た。
子猫達もすくすくと育ち、部屋の中をパタパタと元気に走り回っている。
「あっつ~」
「うぅぅ」
ダレる冒険者組。アヌリは砂漠出身だけあって、わりと平気そうにしている。と言うか、まだ初夏だぞ。
彼等はそれぞれソロで活動しているので、お休みが重なるのは珍しい。
「俺は軽装だから、まぁ何とかなるが。フルプレートとか見ると、こっちまで暑くなる気がする」
「そうそう! で、ビキニアーマーは冬寒そう!」
フルプレートにビキニアーマー‥‥。汗疹が凄そうなのと、お腹が冷えそうだな。
「前から気になってたんだけど、ビキニアーマーって防御力あるの?」
ゲームにはよくある装備だが、あれで防御力とか言われてもなぁと思っていた。
「ほぼ無いな」
「無いんかい」
「ああいうの着てる人って、自分の身体がアーマー! みたいな人多いからねぇ」
「腹筋バッキバキなのが多いな」
「なるほどねぇ」
ボンキュボンのイメージだったが、ボディビル的な方向だったようだ。
そろそろ扇風機でも出そうかな。それとも、風鈴が先か。
「かき氷、冷やし中華‥‥むむむ」
「氷?ちゅうか?」
「あれ? 出した事なかったっけ」
夏の定番を出していないとは! まぁ、ここの人達って大食漢が多いからなぁ。晩御飯は大皿でドン! ドン! と数種類置いて、各自取り分ける事が多い。冷やし中華となると‥‥大皿一枚で一人分ってとこか? まぁ、材料はあるし、作れるけど。
「う~ん、問題は美味しい氷か」
魔法で作る事も出来るが、美味しいかどうかは別。冷蔵庫の氷では小さすぎるしなぁ。
「氷に美味しいってあるのか?」
「さぁ? あ! もしかして、出汁の湖が凍った氷とか!」
出汁の湖の氷って、どこのグルメファンタジー漫画だ。
「ゆっくりと凍った氷は、滑らかでフワフワなかき氷が作れるんだってさ」
テレビの受け売りだけどね。
「ゆっくりと凍った、ねぇ」
「氷なら、エンブラスカがよろしいかと」
「?」
「エンブラスカ。北の地にある山で、山の上半分は年中雪に閉ざされてるんだって。確か、島からも見えるはずだよ」
と言う事で、島の端にやってきました。
「あ、あそこ! あの上の方が白い山」
キャロルが指した方を見ると、周りの山とは比べ物にならない高い山があった。中腹くらいから真っ白。
「もし行かれるのでしたら、私をお連れください」
そう言ったのは、アヌリだった。
「次の依頼がエンブラスカに咲く花の採取なのです」
「凄いね、花が咲くんだ」
年中氷漬けの山に咲く花か。見てみたい!
「私も行きたい!」
「俺も!」
キャロルとジローが手をあげたが、「二人とも、明日依頼は?」と聞くと、悔しそうに唸った。ジローはSランクだし、キャロルもランクが上がったばかりだ。
結局、翌日アヌリと一緒に山へ向かう事になった。若干、不安だ。色々な意味で‥‥。
*
「そんじゃ、いってきます!」
「気を付けてな」
翌日、エストに見送られ、アヌリと二人で山へ向かう。
「アヌリ! もう少しくっついてないと、落ちるよ?」
「で、ですが、ヒナ様と密着するなど‥‥その‥‥」
乙女か。
「落ちたら拾わない」
「!」
箒を少し揺らすと、アヌリがぎゅっと私の背なかにしがみついた。
普段は「踏んで」が口癖みたいになっているのに。
「先ずは、中腹にある村に行くんだっけ?」
「はい。エンブラスカの花は薬にもなるらしのですが、いつもより雪が深く、村人が採取に行けないと」
「じゃあ、山の異変調査も入ってるんだ」
「はい」
アヌリもなんだかんだ言って、Sランクの冒険者なんだよなぁ。
「昨日も聞いたけど、本当に良いの?」
昨日の晩御飯の時だった。片付けをしていると、アヌリが食堂にやってきた。そして、「明日は、いつものお姿で」と言って来たのだ。
「このお姿に、微塵も問題はございません」
しがみ付くアヌリの腕に、少しだけ力がこもった気がする。
「魔獣だとか獣魔だとか言う虫なぞの事など、放っておけば良いのです」
「虫⁉」
「あまり煩いようなら‥‥ふふふ」
「怖いから!」
「雪崩や山崩れで村が亡ぶ事もありますから」
「止めようね⁉ って、そんな事言うなら一緒に行かないからね!」
「うっ‥‥善処します」
サラリーマンか。
やっぱり、色々と不安だぁ。
二時間ほど飛び、村の近くに降り立った。
「く・れ・ぐ・れ・も! 物騒な事は言わない、やらない!」
「‥‥」
「返事」
「‥‥はい」
本当に大丈夫かなぁ。
とりあえず歩いて村まで向かうと、木の塀で囲まれた村の門の前にたどり着いた。
「ん? こんな辺鄙な村に来るなんて、どうしたぁ」
門番らしき男性が、驚いた様に声を掛けて来た。
「冒険者です」
「ほぉ! もしかしてあんたが、依頼を受けてくれたんかね! いやぁ、ありがたい」
アヌリは基本的に口数が少ない方だ。そう言えば、仕事中の彼を見るのは初めてだな。
不愛想とも言えるアヌリに対して、門番さんはとても気さくに話しかけてくれている。
「そちらは‥‥」
おっと、門番さんと目が合った。何時でもアヌリを押さえられるようにしとかないと。
「そちらのお嬢さんも冒険者ですかね?」
「へ?」
「いや、彼女は私の連れだ」
「それは、それは。雪しかない村ですが、どうぞ入ってください」
お嬢さんって言われた‥‥あれ? 多少のゴタゴタは覚悟していたので拍子抜けだ。
もしかして、服装のおかげ⁉ 今日のコーデは、雪山用にクレスが用意してくれた。暖かロングコートにマフラー、ブーツに手袋、帽子も被っている。あ、コートの中もちゃんと着てますよ! マフラーを鼻まで上げているから、外に出ている部分と言えば、目元くらい? 鼻が冷たかったんだよね。
門番さんが門を開けてくれて、中へと入った。
村の家々は、この世界で見たどの建物とも違っていた。雪が多いからか、屋根は三角で広い。なんか、懐かしい? ああ、あれだ。岐阜県の奥にある村に似てる! テレビで見た事ある。
少し歩くと、村で一番大きな家へとたどり着いた。
アヌリが受けた依頼は、この村の村長さんが出したのだそうだ。
家の扉をノックすると、少し腰の曲がったお婆さんが出迎えてくれた。
「あらあら、まぁまぁ、お客さんなんて珍しい」
「エンブラスカの花の依頼で来た」
「あらあらあら。どうぞ中へ。お爺さん。冒険者さんが来てくれましたよ」
さっきの門番さんと言い、なんともほんわかした雰囲気だな。
家の中へと入れてもらうと、ほんのり温かかった。和風な感じを期待していたが、中はログハウス風。部屋の奥にある暖炉の前にはロッキングチェアがあり、ひざ掛けと編み物がおいてあった。
外国の絵本とかに出て来そう! 夜になると、妖精さんが出て来そう!
「婆さん、冒険者が来てくれたって⁉」
声が聞こえた途端、大柄の男性が部屋の中に走り込んで来た。
「サン‥‥」
思わず口に出そうになったのを、飲み込んだ。
暑い夏がやって来た。
子猫達もすくすくと育ち、部屋の中をパタパタと元気に走り回っている。
「あっつ~」
「うぅぅ」
ダレる冒険者組。アヌリは砂漠出身だけあって、わりと平気そうにしている。と言うか、まだ初夏だぞ。
彼等はそれぞれソロで活動しているので、お休みが重なるのは珍しい。
「俺は軽装だから、まぁ何とかなるが。フルプレートとか見ると、こっちまで暑くなる気がする」
「そうそう! で、ビキニアーマーは冬寒そう!」
フルプレートにビキニアーマー‥‥。汗疹が凄そうなのと、お腹が冷えそうだな。
「前から気になってたんだけど、ビキニアーマーって防御力あるの?」
ゲームにはよくある装備だが、あれで防御力とか言われてもなぁと思っていた。
「ほぼ無いな」
「無いんかい」
「ああいうの着てる人って、自分の身体がアーマー! みたいな人多いからねぇ」
「腹筋バッキバキなのが多いな」
「なるほどねぇ」
ボンキュボンのイメージだったが、ボディビル的な方向だったようだ。
そろそろ扇風機でも出そうかな。それとも、風鈴が先か。
「かき氷、冷やし中華‥‥むむむ」
「氷?ちゅうか?」
「あれ? 出した事なかったっけ」
夏の定番を出していないとは! まぁ、ここの人達って大食漢が多いからなぁ。晩御飯は大皿でドン! ドン! と数種類置いて、各自取り分ける事が多い。冷やし中華となると‥‥大皿一枚で一人分ってとこか? まぁ、材料はあるし、作れるけど。
「う~ん、問題は美味しい氷か」
魔法で作る事も出来るが、美味しいかどうかは別。冷蔵庫の氷では小さすぎるしなぁ。
「氷に美味しいってあるのか?」
「さぁ? あ! もしかして、出汁の湖が凍った氷とか!」
出汁の湖の氷って、どこのグルメファンタジー漫画だ。
「ゆっくりと凍った氷は、滑らかでフワフワなかき氷が作れるんだってさ」
テレビの受け売りだけどね。
「ゆっくりと凍った、ねぇ」
「氷なら、エンブラスカがよろしいかと」
「?」
「エンブラスカ。北の地にある山で、山の上半分は年中雪に閉ざされてるんだって。確か、島からも見えるはずだよ」
と言う事で、島の端にやってきました。
「あ、あそこ! あの上の方が白い山」
キャロルが指した方を見ると、周りの山とは比べ物にならない高い山があった。中腹くらいから真っ白。
「もし行かれるのでしたら、私をお連れください」
そう言ったのは、アヌリだった。
「次の依頼がエンブラスカに咲く花の採取なのです」
「凄いね、花が咲くんだ」
年中氷漬けの山に咲く花か。見てみたい!
「私も行きたい!」
「俺も!」
キャロルとジローが手をあげたが、「二人とも、明日依頼は?」と聞くと、悔しそうに唸った。ジローはSランクだし、キャロルもランクが上がったばかりだ。
結局、翌日アヌリと一緒に山へ向かう事になった。若干、不安だ。色々な意味で‥‥。
*
「そんじゃ、いってきます!」
「気を付けてな」
翌日、エストに見送られ、アヌリと二人で山へ向かう。
「アヌリ! もう少しくっついてないと、落ちるよ?」
「で、ですが、ヒナ様と密着するなど‥‥その‥‥」
乙女か。
「落ちたら拾わない」
「!」
箒を少し揺らすと、アヌリがぎゅっと私の背なかにしがみついた。
普段は「踏んで」が口癖みたいになっているのに。
「先ずは、中腹にある村に行くんだっけ?」
「はい。エンブラスカの花は薬にもなるらしのですが、いつもより雪が深く、村人が採取に行けないと」
「じゃあ、山の異変調査も入ってるんだ」
「はい」
アヌリもなんだかんだ言って、Sランクの冒険者なんだよなぁ。
「昨日も聞いたけど、本当に良いの?」
昨日の晩御飯の時だった。片付けをしていると、アヌリが食堂にやってきた。そして、「明日は、いつものお姿で」と言って来たのだ。
「このお姿に、微塵も問題はございません」
しがみ付くアヌリの腕に、少しだけ力がこもった気がする。
「魔獣だとか獣魔だとか言う虫なぞの事など、放っておけば良いのです」
「虫⁉」
「あまり煩いようなら‥‥ふふふ」
「怖いから!」
「雪崩や山崩れで村が亡ぶ事もありますから」
「止めようね⁉ って、そんな事言うなら一緒に行かないからね!」
「うっ‥‥善処します」
サラリーマンか。
やっぱり、色々と不安だぁ。
二時間ほど飛び、村の近くに降り立った。
「く・れ・ぐ・れ・も! 物騒な事は言わない、やらない!」
「‥‥」
「返事」
「‥‥はい」
本当に大丈夫かなぁ。
とりあえず歩いて村まで向かうと、木の塀で囲まれた村の門の前にたどり着いた。
「ん? こんな辺鄙な村に来るなんて、どうしたぁ」
門番らしき男性が、驚いた様に声を掛けて来た。
「冒険者です」
「ほぉ! もしかしてあんたが、依頼を受けてくれたんかね! いやぁ、ありがたい」
アヌリは基本的に口数が少ない方だ。そう言えば、仕事中の彼を見るのは初めてだな。
不愛想とも言えるアヌリに対して、門番さんはとても気さくに話しかけてくれている。
「そちらは‥‥」
おっと、門番さんと目が合った。何時でもアヌリを押さえられるようにしとかないと。
「そちらのお嬢さんも冒険者ですかね?」
「へ?」
「いや、彼女は私の連れだ」
「それは、それは。雪しかない村ですが、どうぞ入ってください」
お嬢さんって言われた‥‥あれ? 多少のゴタゴタは覚悟していたので拍子抜けだ。
もしかして、服装のおかげ⁉ 今日のコーデは、雪山用にクレスが用意してくれた。暖かロングコートにマフラー、ブーツに手袋、帽子も被っている。あ、コートの中もちゃんと着てますよ! マフラーを鼻まで上げているから、外に出ている部分と言えば、目元くらい? 鼻が冷たかったんだよね。
門番さんが門を開けてくれて、中へと入った。
村の家々は、この世界で見たどの建物とも違っていた。雪が多いからか、屋根は三角で広い。なんか、懐かしい? ああ、あれだ。岐阜県の奥にある村に似てる! テレビで見た事ある。
少し歩くと、村で一番大きな家へとたどり着いた。
アヌリが受けた依頼は、この村の村長さんが出したのだそうだ。
家の扉をノックすると、少し腰の曲がったお婆さんが出迎えてくれた。
「あらあら、まぁまぁ、お客さんなんて珍しい」
「エンブラスカの花の依頼で来た」
「あらあらあら。どうぞ中へ。お爺さん。冒険者さんが来てくれましたよ」
さっきの門番さんと言い、なんともほんわかした雰囲気だな。
家の中へと入れてもらうと、ほんのり温かかった。和風な感じを期待していたが、中はログハウス風。部屋の奥にある暖炉の前にはロッキングチェアがあり、ひざ掛けと編み物がおいてあった。
外国の絵本とかに出て来そう! 夜になると、妖精さんが出て来そう!
「婆さん、冒険者が来てくれたって⁉」
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