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07 北へ
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カーテンの奥の空間に立つイブ。
更に奥に位置する厨房から入ったのだろう。
いや、入らされたのだろう、
ラミアに。
静かに佇むイブは顔色が悪い様に見える。
「イブ、そんな所で何をしているんだ?」
平坦な声を出すブルーベル。
視線は手元の皿にある。
イブは苦笑して答える。
「はぁ、私にもよく分かりません。
お嬢様にここで皆の話を聞いているようにと仰せつかりまして?」
二人の様子を見たラミアが心底残念そうに吐き捨てる。
「本当に2人何も無いのね!
つまらないわ!
少しは私を楽しませたらどうなの?
ま、何かあったら処分するだけだけどね。
イブ、もう行っていいわ」
「あ、はい、では。
失礼致します」
ペコリと頭を下げたまま。
「ブルーベル様、
ご結婚おめでとうございます。
どうか、誰よりもお幸せに」
「ッ‥ありがとう。
勿論幸せになる」
「はい。
お世話になりました」
「世話してもらっているのはこちらだ。
感謝している」
「ありがとうございます。
お暇致します」
「‥ハハ、
暇とは気が早い‥」
フッと
笑った?
ブルーベルはチラとイブを見る。
下げたままの頭を更にもう1段低くして。
イブはスペースの奥へと消えて行く。
イブ、今笑った?
「ねぇ、ドンドンワインを持って来てぇ!」
ラミアが酒に呑まれている。
晩餐はまだまだ終わりそうにない。
ブルーベルは従者タウルスを呼び耳打ちする。
スルリと食堂を出るタウルス。
廊下の窓の外何か抱えて走るイブを見かけて外に出るタウルス。
「イブ!
何してるんだ?」
「タウルス様?
メイド長に急ぎ届ける物があって…
――タウルス様は?」
「あぁ君に‥
ブルーベル様の伝言を
『約束を忘れないで』と‥」
フッ‥
イブが笑う。
ブルーベル様の誕生日が近い。
その事で話があると‥
でもボースが呼びに来て話せなかった。
『話は後で』
『約束だよ』
笑わずにいられようか。
もう話す必要などないのに。
「‥あ、あの、俺‥
俺も君に話が‥あ、
ごめん忙しいんだね、
じゃ後で…
ブルーベル様の話の後に」
「‥あの、」
「俺も戻らないと。
ごめん、後でね!」
タウルスの後姿を見送って。
「‥急がなきゃ」
驚くメイド長にメイド服一式を返して。
低木の茂みに隠しておいた小さなバッグを手にして。
イブはプテロプース伯爵邸を出る。
ラミアに今日中に出て行く様言われている。
乱暴な話だが別に私物など無いし。
ほんの少しの荷物だけ持って
5年間暮らした部屋に別れを告げて
王都花火のお陰でまだ辻馬車が拾えそうだ。
イブがプテロプース伯爵邸を出て数時間後。
やっとラミアから解放されたブルーベルがイブの部屋を訪ねると。
「‥なッ‥」
シンとした部屋
ベッドの上に走り書きのメッセージ
『ブルーベル様にはもっと優秀なメイドが付くとの事で私はお暇となりました。
ブルーベル様が幸せな結婚をされる事を目標に生きて来ましたので丁度良かったのかもしれません。
お嬢様とお幸せに。
お世話になりました。
イブより』
メッセージを手に
蒼白になったブルーベルが唸る。
「何の為に――
誰の為にッ!!」
「北へ」
そう告げたイブに辻馬車の馭者が聞いてくる。
「北の港かい?
姉ちゃん、船に乗るのかい?」
イマーゴー王国は南北に長く北端に港がある。
「さあ…
取り敢えずよ」
取り敢えずは港を目指して――
何か仕事があれば働くし
何も無い様なら船に乗る。
(‥それで、
………)
それでどうする?
ウン先ずは新天地で職探しだ。
生きる為には働かなきゃ。
…………
生きるって何だろう
食べて寝て
食べて寝て
ただ命を長らえること?
自分を偽って
ただ生きて
(…時折勘違いして
コテンパンに勘違いに気付かされて
ひたすら惨めで悲しい気持ちになってしまう?)
港近くで宿を取り
ベッドに倒れ込んだ途端
「‥ッく‥
‥ッく、ひっ‥」
堪えていた涙が溢れる。
実はポーカーフェイスは得意。
気持ちを抑えるのも。
だけどもう限界
涙がとめどなく溢れ出す
だって
前の回も今回も
私にだけ特別な感じで
優しくて
贔屓的な事はなかったけど
でも眼差しが
私に対してだけ
違う気がして
そりゃあ勘違いするよ
なのに実際は女認定もされてなかった!
(7才も年上…)
あり得ない年齢差なのに勘違いしてしまったのは
私の精神年齢はブルーベル様と同年齢だから。
確かに体は23才だけど
心は16才だから
(もし、体も16才だったら…)
イブは首を振る。
それは自ら失ったもの
取り戻せないもの
失くしたものを追いかけるなんて無意味でしかない――
何で優しくしたの
勘違いするって思わなかった?
思わなかったんだよね
どうでもいい存在だから
考えは堂々巡りで
涙は止まらず
いつの間にか寝入って
≪ドンドンドン!≫
「‥ッ!?
え、な、何!?」
乱暴にドアを叩く不穏な音に飛び起きるイブ。
誰――!?
更に奥に位置する厨房から入ったのだろう。
いや、入らされたのだろう、
ラミアに。
静かに佇むイブは顔色が悪い様に見える。
「イブ、そんな所で何をしているんだ?」
平坦な声を出すブルーベル。
視線は手元の皿にある。
イブは苦笑して答える。
「はぁ、私にもよく分かりません。
お嬢様にここで皆の話を聞いているようにと仰せつかりまして?」
二人の様子を見たラミアが心底残念そうに吐き捨てる。
「本当に2人何も無いのね!
つまらないわ!
少しは私を楽しませたらどうなの?
ま、何かあったら処分するだけだけどね。
イブ、もう行っていいわ」
「あ、はい、では。
失礼致します」
ペコリと頭を下げたまま。
「ブルーベル様、
ご結婚おめでとうございます。
どうか、誰よりもお幸せに」
「ッ‥ありがとう。
勿論幸せになる」
「はい。
お世話になりました」
「世話してもらっているのはこちらだ。
感謝している」
「ありがとうございます。
お暇致します」
「‥ハハ、
暇とは気が早い‥」
フッと
笑った?
ブルーベルはチラとイブを見る。
下げたままの頭を更にもう1段低くして。
イブはスペースの奥へと消えて行く。
イブ、今笑った?
「ねぇ、ドンドンワインを持って来てぇ!」
ラミアが酒に呑まれている。
晩餐はまだまだ終わりそうにない。
ブルーベルは従者タウルスを呼び耳打ちする。
スルリと食堂を出るタウルス。
廊下の窓の外何か抱えて走るイブを見かけて外に出るタウルス。
「イブ!
何してるんだ?」
「タウルス様?
メイド長に急ぎ届ける物があって…
――タウルス様は?」
「あぁ君に‥
ブルーベル様の伝言を
『約束を忘れないで』と‥」
フッ‥
イブが笑う。
ブルーベル様の誕生日が近い。
その事で話があると‥
でもボースが呼びに来て話せなかった。
『話は後で』
『約束だよ』
笑わずにいられようか。
もう話す必要などないのに。
「‥あ、あの、俺‥
俺も君に話が‥あ、
ごめん忙しいんだね、
じゃ後で…
ブルーベル様の話の後に」
「‥あの、」
「俺も戻らないと。
ごめん、後でね!」
タウルスの後姿を見送って。
「‥急がなきゃ」
驚くメイド長にメイド服一式を返して。
低木の茂みに隠しておいた小さなバッグを手にして。
イブはプテロプース伯爵邸を出る。
ラミアに今日中に出て行く様言われている。
乱暴な話だが別に私物など無いし。
ほんの少しの荷物だけ持って
5年間暮らした部屋に別れを告げて
王都花火のお陰でまだ辻馬車が拾えそうだ。
イブがプテロプース伯爵邸を出て数時間後。
やっとラミアから解放されたブルーベルがイブの部屋を訪ねると。
「‥なッ‥」
シンとした部屋
ベッドの上に走り書きのメッセージ
『ブルーベル様にはもっと優秀なメイドが付くとの事で私はお暇となりました。
ブルーベル様が幸せな結婚をされる事を目標に生きて来ましたので丁度良かったのかもしれません。
お嬢様とお幸せに。
お世話になりました。
イブより』
メッセージを手に
蒼白になったブルーベルが唸る。
「何の為に――
誰の為にッ!!」
「北へ」
そう告げたイブに辻馬車の馭者が聞いてくる。
「北の港かい?
姉ちゃん、船に乗るのかい?」
イマーゴー王国は南北に長く北端に港がある。
「さあ…
取り敢えずよ」
取り敢えずは港を目指して――
何か仕事があれば働くし
何も無い様なら船に乗る。
(‥それで、
………)
それでどうする?
ウン先ずは新天地で職探しだ。
生きる為には働かなきゃ。
…………
生きるって何だろう
食べて寝て
食べて寝て
ただ命を長らえること?
自分を偽って
ただ生きて
(…時折勘違いして
コテンパンに勘違いに気付かされて
ひたすら惨めで悲しい気持ちになってしまう?)
港近くで宿を取り
ベッドに倒れ込んだ途端
「‥ッく‥
‥ッく、ひっ‥」
堪えていた涙が溢れる。
実はポーカーフェイスは得意。
気持ちを抑えるのも。
だけどもう限界
涙がとめどなく溢れ出す
だって
前の回も今回も
私にだけ特別な感じで
優しくて
贔屓的な事はなかったけど
でも眼差しが
私に対してだけ
違う気がして
そりゃあ勘違いするよ
なのに実際は女認定もされてなかった!
(7才も年上…)
あり得ない年齢差なのに勘違いしてしまったのは
私の精神年齢はブルーベル様と同年齢だから。
確かに体は23才だけど
心は16才だから
(もし、体も16才だったら…)
イブは首を振る。
それは自ら失ったもの
取り戻せないもの
失くしたものを追いかけるなんて無意味でしかない――
何で優しくしたの
勘違いするって思わなかった?
思わなかったんだよね
どうでもいい存在だから
考えは堂々巡りで
涙は止まらず
いつの間にか寝入って
≪ドンドンドン!≫
「‥ッ!?
え、な、何!?」
乱暴にドアを叩く不穏な音に飛び起きるイブ。
誰――!?
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