8 / 18
08 北北西へ
しおりを挟む
「イブ、私だ!」
「――え!?」
深夜。
宿の部屋のドアを乱暴に叩く何者かと戦うべく。
何か武器になりそうな物を捜していたイブはドアを振り返る。
「ななな、」
「開けてくれ。
両隣の部屋から不審者通報されそうだ」
≪ガチャッ!≫
そんな不名誉な思いはさせられないとドアを開けるイブ。
「イ‥ッ!?」
ドアを開けた途端
必死の形相のブルーベルに抱き締められるイブ。
「‥ごめんッ!
晩餐でのあれは本気で言ったんじゃないんだ!」
「あ‥あれ?」
「全てラミアを欺くための嘘だ!
イブがラミアに敵視されない様にああ言うしかなかった!
けど…
イブを傷つけてごめん!」
「だだ、大丈夫です!
私全然傷ついてなんていませんから!」
「‥そんなに泣きはらした顔で?」
「‥ッ‥」
泣いた痕跡を残さないのも得意なイブだが
――限度がある。
さすがにあれだけ泣けば
誤魔化しようがないのに…
「いえあのこれは、
職を失ったショックで、」
往生際が悪いイブである。
「イブ、私と一緒に逃げてくれ」
「‥え!?」
「ラミアと結婚なんて御免だ!
こんな事にならない様にダメ人間を貫いて来たのに」
「!!」
(‥だから1回目とは違うの!?
1回目は過ぎるほど勤勉で…
今回はぐーたら…
ラミア様との結婚を回避する為に!?
え?待ってそれって‥
あああ分からない!)
何か重大なピースに気付かないイブ。
敢えて避けている思考があるが故…
だがイブ自身、それに気づいていない。
≪ザッ!≫
「‥え!?」
抱き締めていた体を離して跪くブルーベル。
スッと右手を差し出し
「私はずっとイブと共に在りたい!
イブ、私と共に生きてほしい!」
「‥ッ‥」
ブルーベルの登場からドキドキしっぱなしの心臓。
更に跳ねる心臓にイブは
(ち、違う違う!
勘違いしちゃダメ!
私は女として見られていないんだから!
ただの使用人で、
7才も年上で‥)
その辺の所は先ほどブルーベルが否定したはずだが。
焦ったブルーベルが全否定した為、逆に否定が頭に入らなかったイブ。
なので何も否定された事になっていない状態な訳で――
絶対、もう二度と『勘違い』しない!
と必死なのだ。
「‥コホッ、ベル様、
もちろんですッ!」
イブは差し出された右手を両手で包む。
「メイドとして信頼頂けて嬉しいです!」
「…え?」
「お任せ下さい!
ラミア様はお美しいけど好みってものがありますものね!
引き続きこの私がベル様の婚約相手をお探しいたしましょう!
ベル様の幸せの為に!
全てはベル様の為に」
「いや…イブ、私は」
「先ずは無事にこの国を出ないとですね!
港が開くまでまだ時間があります。
体力温存の為に少しでも眠っておきましょうか!」
「………」
まるで気持ちが伝わっていない事に絶句するブルーベル。
何故に、
どこで間違えた?
その思考は深刻な声で中断される。
「いえ、やはり直ぐに出た方がいいかと…
さっき早竜馬が出て行きました。
ブルーベル様が仰っていた様に、こちらの行動は監視、報告されている様です」
そう言うのはタウルス。
ブルーベルの後から部屋に入って来て
直ぐに窓に張り付いて宿の動きを見張っていたのだ。
「やはり…
だが、ラミアは何故私に執着するのだ?」
何も思い当たらないブルーベルは首を捻る。
だが今は考えている時間は無い!
「兎に角急ごう!
ここは危険だ!
夜が明けるまでまだ数時間ある!
それまでに何とか国境を越えよう!」
イブも訳は分からないが緊急なのは分かる。
急ぎブルーベルと共に客用竜馬留へ。
だがブルーベル達が乗って来た竜馬が2頭とも居ない!?
「‥くッ‥
足を奪われたか!」
「如何致しましょう?
ブルーベル様…」
蒼褪める男たちにイブは事も無げに言い放つ。
「あー‥では、宿の竜馬を貰いましょう!
あちらに見えています厩舎には竜馬が3頭いる様です。
ほら、こっちを見ています!
可愛いですね♪
迷惑料として3頭全部頂きましょう!」
スキップする様に宿の厩舎に向かうイブ。
男達は戸惑いを隠せない。
何故なら――
竜馬とは気高く賢く
故に難しい生き物で。
そんなに簡単に人間を乗せたりしないもの。
世話して、
馴らして、
認められて
やっと乗せてくれるのだ。
知らない人間など絶対に乗せる事は無い。
「イブ、初見の竜馬に乗るなど無理だ。
ホラ、鼻息荒く‥」
「よしよし、
君達はあの2人を乗せてね、
はい、いい子」
とか何とか言いながらサッと竜馬具をつけてスッと乗るイブ。
イブを乗せた竜馬が誇らし気なのは何故だ…
「さ、お二人も早く」
そう促されて残る2頭を見れば何だかシュンとしている?
さっきまでの鼻息はどうした?
まさか誰がイブを乗せるかで小競り合っていたというのか?
時間が無い。
乗れるものなら乗って‥
乗れた!
「港はラミアの手の者に張られている恐れがある!
国境越えの最短ルートは…
北北西だ!」
ブルーベルは思い出す。
「北北西に進路を取るのは2度目だ…
母国を後にした十字路で
帝国から逃れる為
北北西にあるここ、
イマーゴーを目指した」
「!?
それはどういう‥」
帝国と聞いて目を見開くイブ。
「後で詳しく話すよ。
今は急ごう!」
足で腹を打ったりしてはいけない。
手で優しく首をポンポンすると
≪ヒュンッ!≫
竜馬は風の様に走り出す――
「――え!?」
深夜。
宿の部屋のドアを乱暴に叩く何者かと戦うべく。
何か武器になりそうな物を捜していたイブはドアを振り返る。
「ななな、」
「開けてくれ。
両隣の部屋から不審者通報されそうだ」
≪ガチャッ!≫
そんな不名誉な思いはさせられないとドアを開けるイブ。
「イ‥ッ!?」
ドアを開けた途端
必死の形相のブルーベルに抱き締められるイブ。
「‥ごめんッ!
晩餐でのあれは本気で言ったんじゃないんだ!」
「あ‥あれ?」
「全てラミアを欺くための嘘だ!
イブがラミアに敵視されない様にああ言うしかなかった!
けど…
イブを傷つけてごめん!」
「だだ、大丈夫です!
私全然傷ついてなんていませんから!」
「‥そんなに泣きはらした顔で?」
「‥ッ‥」
泣いた痕跡を残さないのも得意なイブだが
――限度がある。
さすがにあれだけ泣けば
誤魔化しようがないのに…
「いえあのこれは、
職を失ったショックで、」
往生際が悪いイブである。
「イブ、私と一緒に逃げてくれ」
「‥え!?」
「ラミアと結婚なんて御免だ!
こんな事にならない様にダメ人間を貫いて来たのに」
「!!」
(‥だから1回目とは違うの!?
1回目は過ぎるほど勤勉で…
今回はぐーたら…
ラミア様との結婚を回避する為に!?
え?待ってそれって‥
あああ分からない!)
何か重大なピースに気付かないイブ。
敢えて避けている思考があるが故…
だがイブ自身、それに気づいていない。
≪ザッ!≫
「‥え!?」
抱き締めていた体を離して跪くブルーベル。
スッと右手を差し出し
「私はずっとイブと共に在りたい!
イブ、私と共に生きてほしい!」
「‥ッ‥」
ブルーベルの登場からドキドキしっぱなしの心臓。
更に跳ねる心臓にイブは
(ち、違う違う!
勘違いしちゃダメ!
私は女として見られていないんだから!
ただの使用人で、
7才も年上で‥)
その辺の所は先ほどブルーベルが否定したはずだが。
焦ったブルーベルが全否定した為、逆に否定が頭に入らなかったイブ。
なので何も否定された事になっていない状態な訳で――
絶対、もう二度と『勘違い』しない!
と必死なのだ。
「‥コホッ、ベル様、
もちろんですッ!」
イブは差し出された右手を両手で包む。
「メイドとして信頼頂けて嬉しいです!」
「…え?」
「お任せ下さい!
ラミア様はお美しいけど好みってものがありますものね!
引き続きこの私がベル様の婚約相手をお探しいたしましょう!
ベル様の幸せの為に!
全てはベル様の為に」
「いや…イブ、私は」
「先ずは無事にこの国を出ないとですね!
港が開くまでまだ時間があります。
体力温存の為に少しでも眠っておきましょうか!」
「………」
まるで気持ちが伝わっていない事に絶句するブルーベル。
何故に、
どこで間違えた?
その思考は深刻な声で中断される。
「いえ、やはり直ぐに出た方がいいかと…
さっき早竜馬が出て行きました。
ブルーベル様が仰っていた様に、こちらの行動は監視、報告されている様です」
そう言うのはタウルス。
ブルーベルの後から部屋に入って来て
直ぐに窓に張り付いて宿の動きを見張っていたのだ。
「やはり…
だが、ラミアは何故私に執着するのだ?」
何も思い当たらないブルーベルは首を捻る。
だが今は考えている時間は無い!
「兎に角急ごう!
ここは危険だ!
夜が明けるまでまだ数時間ある!
それまでに何とか国境を越えよう!」
イブも訳は分からないが緊急なのは分かる。
急ぎブルーベルと共に客用竜馬留へ。
だがブルーベル達が乗って来た竜馬が2頭とも居ない!?
「‥くッ‥
足を奪われたか!」
「如何致しましょう?
ブルーベル様…」
蒼褪める男たちにイブは事も無げに言い放つ。
「あー‥では、宿の竜馬を貰いましょう!
あちらに見えています厩舎には竜馬が3頭いる様です。
ほら、こっちを見ています!
可愛いですね♪
迷惑料として3頭全部頂きましょう!」
スキップする様に宿の厩舎に向かうイブ。
男達は戸惑いを隠せない。
何故なら――
竜馬とは気高く賢く
故に難しい生き物で。
そんなに簡単に人間を乗せたりしないもの。
世話して、
馴らして、
認められて
やっと乗せてくれるのだ。
知らない人間など絶対に乗せる事は無い。
「イブ、初見の竜馬に乗るなど無理だ。
ホラ、鼻息荒く‥」
「よしよし、
君達はあの2人を乗せてね、
はい、いい子」
とか何とか言いながらサッと竜馬具をつけてスッと乗るイブ。
イブを乗せた竜馬が誇らし気なのは何故だ…
「さ、お二人も早く」
そう促されて残る2頭を見れば何だかシュンとしている?
さっきまでの鼻息はどうした?
まさか誰がイブを乗せるかで小競り合っていたというのか?
時間が無い。
乗れるものなら乗って‥
乗れた!
「港はラミアの手の者に張られている恐れがある!
国境越えの最短ルートは…
北北西だ!」
ブルーベルは思い出す。
「北北西に進路を取るのは2度目だ…
母国を後にした十字路で
帝国から逃れる為
北北西にあるここ、
イマーゴーを目指した」
「!?
それはどういう‥」
帝国と聞いて目を見開くイブ。
「後で詳しく話すよ。
今は急ごう!」
足で腹を打ったりしてはいけない。
手で優しく首をポンポンすると
≪ヒュンッ!≫
竜馬は風の様に走り出す――
0
あなたにおすすめの小説
「不吉な黒」と捨てられた令嬢、漆黒の竜を「痛いの飛んでいけー!」で完治させてしまう
ムラサメ
恋愛
漆黒の髪と瞳。ただそれだけの理由で「不吉なゴミ」と虐げられてきた公爵令嬢ミア。
死の森に捨てられた彼女が出会ったのは、呪いに侵され、最期を待つ最強の黒竜と、その相棒である隣国の竜騎士ゼノだった。
しかし、ミアが無邪気に放った「おまじない」は、伝説の浄化魔法となって世界を塗り替える。
向こう見ずな天才騎士に拾われたミアは、隣国で「女神」として崇められ、徹底的に甘やかされることに。
一方、浄化の源を失った王国は、みるみるうちに泥沼へと沈んでいき……?
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
閉じ込められた未亡人は、当主となった義息と契約する。
黒蜜きな粉
恋愛
借金の肩代わりとして後妻に入った私は、
妻と呼ばれながら屋敷の離れで「いないもの」として暮らしていた。
ある雪の日、夫が事故死したと告げられる。
だが、葬儀に出ることすら許されず、私は部屋に閉じ込められた。
新たに当主となった継子は言う。
外へ出れば君は利用され奪われる、と。
それが保護であり、同時に支配なのだと理解したとき、
私はその庇護を条件付きの契約に変えることを選ぶ。
短いお話です。
※第19回恋愛小説大賞にエントリーしております。
【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!
こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。
そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。
婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。
・・・だったら、婚約解消すれば良くない?
それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。
結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。
「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」
これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。
そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。
※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。
※本編完結しました。
※後日談を更新中です。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛
三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。
「……ここは?」
か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。
顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。
私は一体、誰なのだろう?
老伯爵へ嫁ぐことが決まりました。白い結婚ですが。
ルーシャオ
恋愛
グリフィン伯爵家令嬢アルビナは実家の困窮のせいで援助金目当ての結婚に同意させられ、ラポール伯爵へ嫁ぐこととなる。しかし祖父の戦友だったというラポール伯爵とは五十歳も歳が離れ、名目だけの『白い結婚』とはいえ初婚で後妻という微妙な立場に置かれることに。
ぎこちなく暮らす中、アルビナはフィーという女騎士と出会い、友人になったつもりだったが——。
折角転生したのに、婚約者が好きすぎて困ります!
たぬきち25番
恋愛
ある日私は乙女ゲームのヒロインのライバル令嬢キャメロンとして転生していた。
なんと私は最推しのディラン王子の婚約者として転生したのだ!!
幸せすぎる~~~♡
たとえ振られる運命だとしてもディラン様の笑顔のためにライバル令嬢頑張ります!!
※主人公は婚約者が好きすぎる残念女子です。
※気分転換に笑って頂けたら嬉しく思います。
短めのお話なので毎日更新
※糖度高めなので胸やけにご注意下さい。
※少しだけ塩分も含まれる箇所がございます。
《大変イチャイチャラブラブしてます!! 激甘、溺愛です!! お気を付け下さい!!》
※他サイト様にも公開始めました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる