大迷惑です!勝手に巻き戻さないで!?

ハートリオ

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12 詠唱封印

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もちろんイブだ。

頭の中で聞こえた『詠唱封印が消滅した』とのメッセージ。
自分に治癒魔法を掛けてみて…
折れていた骨もその骨が刺さっていた内臓も
見事に治りやっと立ち上がれたイブだ。

そんなイブを見てシラーは目を輝かす。
が、ラミア達には戦慄が走る。

イブ?
違う。
纏う空気が。
別人?
別モノ!
一体‥

「汚い手をどけろ!」
「きゃあッ!?」

弾かれた様に数メートル飛び地面に転がったのは――
ラミア!

ボトリッ
「ハッ‥
きゃぁぁぁぁ~~ッ!?」

ラミアより遅れてラミアの顔の側に落ちて来たのは手。
さっきまでシラーの髪を掴んでいたラミアの手である。

信じられない光景に誰もが身動きも出来ずにいる中、
ラミアだけが痛みに地面を転げまわる。
そんなラミアにイブは落ち着いた声で言う。

「皇妹ラミアよ。
シラー殿下の舌を切る意味は無い」

転げまわるラミアには聞こえていない様だ。
代わりに声を発したのはシラー。
恐れをなした騎士達が拘束を解き後退った為跪かせられた状態から立ち上がり。

「‥今のは君が?
詠唱も無しに?
君は一体…」

問う声に恐れは無い。
あまりにも普通の声音にラミアの手下達が畏怖すら感じる中、

「ベル様‥いえ、
シラー・カンパニュラータ・スピーリトゥス精霊国第一王子殿下。
精霊王様の尊き力を賜ったあなた様です。
興味が無くとも勉強するべきでしたね。
実はあなたももう詠唱無しで魔法が使えます」
「な‥私が!?」
「やはりお気付きでない‥
――そもそも詠唱封印とは魔力持ちを守る為のものなのです」

ポカンとするシラーを可愛らしいと思いながらイブは優しく説明する。

「魔法はあまりにも特別な力です。
大昔は乱発により魔力持ち自身が命を落とす事例が多かったそうです。
それよりも問題となったのは魔力持ちが自身の魔力により狂わされる事例。
自身も周囲も傷つけてしまう破壊者となれば尊い血を受け継いだ者でも殺すしかなかった…
そんな悲劇を防ぐ為に精霊王様と妖精王様によりもたらされたのが『詠唱封印』…
その内容は長い詠唱によってのみ魔法を使えるというもの――
それにより魔力は自然と制御され悲劇は無くなりました。
ですから魔力持ちは生まれながらにして『詠唱封印』が施されているのです」
「そうだったのか…
だが‥えぇと、
つまり私はその『詠唱封印』が解けた状態という事なのか?」
「‥はい。あの‥」

イブが頬を染める。
目を瞬いてシラーも赤くなる。

「あの‥え?」

戸惑うシラーにイブは俯いて。
恥ずかしそうに問う。

「頭の中で『汝、繋ぎとめる存在得たり』と聞こえませんでしたか?」

シラーはハッとする。

「その言葉を聞いた気がする――
いつだったかな‥」
「…前回です」
「前回…ハッ!」
「前回、殿下が時戻り魔法を使えたのは『詠唱封印』が解けていたからです」
「‥そうだった‥
あの時頭の中で言葉が鳴っていた‥
【汝、繋ぎとめる存在
得たり。
詠唱封印、
ここに消滅す】
――そうか…
私はイブを助けたくて…
無意識に時戻り魔法を使っていたのか――」
「やはり私の為に‥
ありがとうございました」

瞳をキラキラさせてイブが礼を言う。

「当たり前のことだ。
それに君を失いたくない私の為でもある」

熱い目で見つめられイブは更に真っ赤になる。

「時戻りの後に変身魔法を使ったのですね?」
「ああ。
ラミアに懸想されれば又君を巻き込んでしまうかもと思って。
この姿に変身したのは成功だった。
ラミアが一切近寄らなくなった。
キチンと1時間以上詠唱したのは今思えばムダだったけどね…」

苦笑するシラー。
イブは質問が止まらない。

「前回と違いぐうたらに過ごしていたのも‥」
「ラミアだけでなく誰にも利用価値があると思われない様にそうした。
そして16才成人時にプテロプース伯爵家から見切りをつけられれば…
イブを攫ってどこか別の町で結婚する積もりで‥」
「け結婚ッ」

いよいよイブの顔から湯気が出始めている。

「イブは私の大切な、愛する存在だ。
それが『繋ぎとめる存在』なのだろう?
イブが居たから『詠唱封印』が解けて
イブを助けられた」
「は、はい。
魔力持ちは魔力に魅入られ人間の心を忘れた時魔力に飲み込まれ制御出来なくなる。
なので自分を人としてあるべき自分に『繋ぎとめる存在』を得た時に『詠唱封印』は解ける――
と古文書に書いてありました!」

説明しきった感を出しながら汗をぬぐうイブ。

「…なので練習が必要かもしれませんがシラー殿下は魔法を使えるはずです。
あ、ですが…
時戻り魔法、
それと変身魔法も
あまりにも負担のある魔法は生涯に1度しか使えません。
殿下は両方使ってしまいましたね‥」

そう言って笑うイブにシラーはやっと気付く。

「…イブ…イブ?
何だか当たり前に話していたけど…
『時戻り』の事を知っているんだね…
『前回』の記憶も…
それにさっきの力――
君は…
君が…」

金切り声がシラーの声をかき消す。

「こっちは死ぬほど痛いのに!
さっきからなに訳の分かんない事を言ってんのよ!?」

自分の手を持ち地面に座って睨みつけるラミア。
静かに視線を向けて来る2人にカッとして叫ぶ。

「もう何‥もういい!
ボース!殺れッ!
イブを殺せぇ!」

皆と同様、茫然としていたボースがビクリと肩を跳ねさせる。

「‥その命令ッ!
待っておりまグォッ」

ボースは最後まで言い切ることが出来なかった。
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