静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

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冬馬君の自制心は……

冬馬君は勇気を振り絞る

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あのプールの日から、1週間が過ぎた。

あれ以来は、会っていなかった。

単純にお盆休みということで、お互いに忙しかっただけだな。

俺も、家族と父方の祖父母の家に行ったり、バイトに精を出していた。

綾の方も、お父さんが帰ってきて、家族水入らずの時間を過ごしていた。

俺はきちんと挨拶しようかと思ったのだが、綾に止められてしまった。

お父さん、帰れなくなっちゃうからと。

なにもかも手につかなくなっちゃうと。

というわけで、綾には家族を優先するように言っておいた。

それは、かけがえのない時間だからと……。

綾も、それをわかってくれた。

ほんとうに、良い彼女を持ったよ。







バイクを走らせ、俺は綾の家の前に着く。

「冬馬君!久しぶり!」

「綾、久しぶりだな。元気そうでよかったよ」

「……でも、寂しかったよ?冬馬君に会えなくて……」

「まあ、それは……俺も同じだ。だが、家族孝行できたんだろ?」

「エヘヘ、良かったぁ。うん!お父さんったら喜んじゃって……か、彼氏とかいないだろうな!?って言われちゃった」

「うーん……俺はきちんとしたいのだが、そういうわけにいかないんだろう?」

「うん、ごめんね。私は、冬馬君のそういうところ好きなんだけど……」

「いや、いい。家庭の事情は人それぞれだ。じゃあ、行くか」

「うん!」

綾は慣れた感じで、バイクの後ろに乗りメットを被る。

「よし、しっかり掴まってろよ?」

「うん!でも、いいのかな?冬馬君に送り迎えしてもらって……」

「気にするな。俺がしたいからしてるだけだからな。それに、どうしたって遠回りになるし、お金もかかる」

俺の地元駅は、綾は定期外だし、バスじゃないと来れない。
しかも、時間が片道30分はかかる。
バイクなら、ここまで10分ほどでつけるからな。
往復でも苦にはならない。

「で、でも、冬馬君だってエンジン代とか……それに、色々出してもらってちゃってるし……私も、バイトしようかな?」

「うーん……まあ、本人が気になるなら考えた方がいいか……よし、その辺の話もしてみるか」

とりあえずバイクを走らせ、俺の家に向かう。
今日は、お家デートということだ。
綾が、また行きたいと願ったからな。

果たして、俺の精神は持つのだろうか?
まあ、妹もいるから平気か。




と、思っていたんだが……。

「あれ?あいついない?」

「え?いないの?」

「自転車がないからな。まあ、とりあえず上がってくれ」

これは、忍耐力が試されるな……!

「ふ、2人きり……!お、お邪魔します!」

家に入り、リビングに向かう。
自分の部屋では、理性が持ちそうにない。
予定変更である。

 「アレ?今日はリビングで良いの?」

「まあ、誰もいないしな。ここでも、ゲーム機あるからできるぞ。ほら、あそこに」

ゲームをしてみたいと言われたから、今日はうちというわけだ。

「わぁー!ホントだ!みてもいいかな!?」

「ああ、良いぞ」

「ありがとう!」

嬉しそうな表情で、アレコレと見始める。
その可愛い笑顔に見惚れつつも、キッチンに向かう。
そして、お茶でも出そうかと思ったのだが……。

「ん?何かメモがあるな……なにぃ!?」

「ど、どうしたの!?冬馬君!?」

「い、いや!なんでもない!ちょっとコップを落としそうになっただけだ!」

「そ、そう、なら良いんだけど……」

「ああ、大丈夫だから。そのままで良い」

あんにゃろう……どういうつもりだ?
妹のメモには、こう書いてある。

「お兄!友達から誘われたから出かけてくるね!押し倒しちゃダメだよ!キスまでは許可します!~バイ貴方の可愛い妹より~」

だが、これでいない理由はわかったな。
俺に気を遣ったな……相変わらず、できた妹だ。
キスか……心に留めておこう。

とりあえずお茶を入れ、綾のところに戻る。

今更だが、気合いが入っている気もする……。
服装は赤のミニスカートに、ピッタリめのシンプルなU字型白Tシャツなのだが……。
 まさしく、俺好みの格好である。
あと……真っ直ぐに下ろしている髪が、輝いて見える気がするんだよな……。
……あと、何か違和感を感じる……まさか。

「綾……もしかして、髪切ったか?」

「……気づいてくれたぁ……!嬉しい!」

危ないところだったー!!

「いや、なんか髪が綺麗だなーと思ってな。少し、長さが違う気もするし」

「エヘヘ、そうなの。昨日、美容院に行きました!」

「そういうことか。うん、可愛いな」

「あ、ありがとう……で、でも冬馬君は、どんなのか好みかな……?」

「なんでも似合うと言いたいところだが、それは違うか。うーん……古臭いけど、染めてほしくはないかな。あと、ロングは元々好きだな。あとは、ポニテもいいな」

「そうなんだ……うん、大丈夫!私も、染める気はないから。そっか、良かったぁ……ずっと伸ばしてて……エヘヘ」

いかん、可愛すぎる……!

「と、とりあえず、ゲームするか?」

「え?うん、そうだね!これ、やりたい!」

それはゾンビが出てくるゲームで、2人プレイできるやつだ。

「お、それか。いいぞ」

起動をして、2人並んでソファーに座る。




ダダダダダダ……!!!!!
リビングに銃撃音が響く。

「き、きたよー!ど、どうすれば良い!?」

「任せろ!俺の女に近づくんじゃねえ!」

「凄い!全部倒しちゃった!」

「ハッ!ざまあねえな!」

その後も、2人で楽しくゲームを続ける……。



「あー!楽しかったね!」

「まあ、たまには2人プレイもいいな」

「えへへ、ゲームでも守ってくれたね。そ、それに、俺の女って……」

「あ、ごめんな。言い方悪かったか?」

「ううん!う、嬉しかったよ!その、ドキドキしました……」

ドキドキしてんのは、俺だっつーの!!
綾は頬を赤らめ、モジモジしている。
……これは、チャンスなのか?
初めてだから、よくわからん……。
よし!俺!勇気を出せ!

「あー……綾、俺はお前が好きだ」

「え……?」

「だが、俺は好きだからこそ大事にしたいと思う」

「うん……でも、私……」

「まあ、待ってくれ。それでも……もう気持ちを抑えられそうにない」

「冬馬君……?」

「嫌なら、振り払ってくれ」

俺は両手で、綾の肩に手を置く。

「あっ……」

綾は、ゆっくりと両目を閉じる。

俺も、ゆっくり近づき、出来るだけ優しくキスをする……。

そして、ゆっくりと離す……すると、綾の瞳から涙が零れる。

「嬉しい……ずっとしたかったの……でも、自分から言ったら……はしたないって思われちゃうかなって……私ばっかりしたいのかなって……」

「綾……」

俺は堪らなくなり、ゆっくりと抱きしめて、もう一度キスをする………。

「あっ……うん……」

綾も、それを受け入れてくれた……。

そうか……やはりあっていたようだ。

雄としての欲求を超えた何かが、俺の中に渦巻いている……。

もしかしたら……これが、愛しいということか……。



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