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冬馬君の自制心は……

冬馬君は最後に不意打ちをくらう

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 彼女とキスをした。

身体中に、電撃が走ったような感覚になった。

そして、同時にどう表現していいかわからない感情が芽生えた。

可愛い?好き?苦しい?痛い?

……それらが、ごっちゃ混ぜになったような感じだ。

真司さんが言っていたな……そのうちわかると。

これが、そういうことなのかもしれないな。







二度目のキスをし、抱きしめたままなのだが……。

さて、どうする……?

いや、どうするもなにも、離れなくてはいけない……。

このままでは、どうにかなりそうだ……。

「と、冬馬君……い、痛いよぉ……」

「す、すまん!!お、俺としたことが……!」

俺はすぐに離れ、正座をする。

「う、ううん!い、いいの!少し、痛かっただけだから……」

 「ごめん!つい、力が入ってしまった!あまりに、愛おしいものだから……」

「ふぇ!?い、愛しい……う、嬉しい……その、私も大好きです……」

「そ、そうか……」

「…………」

「……………」

「き、キスしちゃったね……す、凄いね、なんていうか……幸せな気持ちになるね」

「そ、そうだな……なんとも言えないが、幸せな気分になったな」

「でも……聞いていいかな?」

「ああ、良いぞ」

「なんで、今だったの……?わ、私ね……アピールはしてたんだけど……その、腕を組んだり、可愛い格好したり、それとなく色々と……でも今日は、特にしてなかったのに……」

「そういうことだったのか……恥ずかしいことに、全く気づかなかったな。自分のことで、一杯一杯になっていたようだな……実はな、俺もずっとしたかったんだ」

「えぇ!?そ、そうだったの?同じ気持ちだったんだ……嬉しい……」

「ああ、そうだな……でも、その、一ヶ月は我慢した方がいいのではないかとか、それ目的だと思われたら嫌だなとか……」

「そんなこと思わないよ!」

「わかっている、綾ならそう言うと思ったよ」

「え……?じゃあーー」

「ごめん、全ては俺が未熟なためだ。そのな、キスをしたらな……それだけで止まれる気がしなかったんだ……」

「え?どういう意味……あっ……えっと、その、冬馬君なら嫌じゃないよ!違う、私、なに言って……」

これは……なんという可愛さだ。
これは、自制心が必要だな。

「いや、言いたいことはわかってる。大丈夫だ、それは今は考えなくていい。俺は今、とても幸せな気持ちだ。それだけで十分だ」

……今のところはな……だが、押し付けはよくない。
限界までは耐えてみせよう……!

「冬馬君……私も幸せです……大事にしてもらえて、すっごく嬉しい……」

その時、ガチャガチャ!と音がする。

「ど、どうしよう!?」

「だ、大丈夫だ。お、お、落ち着け。ふ、普通にしよう。冷静を装うんだ」

「う、うん。が、頑張る」

急いで体勢を整えて、ゲームをしてるフリをする。

「あー、次はこれやるか?」

「うん、いいよー」

2人とも、酷い棒読みである。

「たっだいまー!可愛い妹が帰ってきましたよー!あれ?なんでここにいるの?」

「おかえり、麻里奈。いや、綾がゲームしたいっていうからさ。俺の部屋にもあるけど、ここにはソファーもあるし、画面も大きいしな」

「こんにちは、麻里奈ちゃん。お邪魔してます」

「そういうことかー。確かに、そうだね。綾さん、こんにちは!」

色々な意味で、危なかったな……。

綾にはああいったものの……思わず、押し倒したくなってしまった。

いや、言ったことに嘘はないんだが……まあ、仕方ないよな。

だって……可愛すぎるだろーー!!

……フゥ……よし、切り替えよう。

残念……いや……幸いなことに、妹が帰ってきたしな。

「ねえねえ!私もやりたい!」

「すまんな、綾。付き合ってくれるか?」

「うん!私も、遊びたい!だって、イメージじゃないとか言われてちゃうから、遊べる人いないんだもん!」

「えー!?そんなこと言うんですか!?よし!お兄!マリ○カートしよ!ただし、お兄は自分の得意キャラは禁止!」

「はいはい、わかったよ。ククク……ハンデをやろう。俺はアイテムは使わない」

「ムムム……!綾ちゃん!このお兄の鼻をへし折るのです!」

「え?そ、そういう感じなの?う、うん!わかった!」

その後、ゲームに没頭する。

「あっ!お兄!アイテム取った!嘘つき!」

「ちげーよ!お前が体当たりするからだよ!」

「あっ!抜けた!やったぁ!」

「ほら!お兄が邪魔するから!」

「ほう……?俺に本気を出させる気か……良い度胸だ。いくら愛する彼女とはいえ、手加減はしない……!」

「あ、愛する!?わ、わわ、あっー!」

  綾のカートは壁に激突する。

「お兄!卑怯だよ!そんな姑息な手を使うなんて!」

「い、いや!そんなつもりはなくてだな!ヤベッ!」

俺も壁に激突してしまう。

「あれ?お兄?珍しいね!では、おっさきー!」

結局、麻里奈がトップにとなった。
自ら墓穴を掘ってしまうとは……!
ゲーマーとしての矜持が……!

「ふふ、楽しいね。こういうの夢だったんだ」

「誠也とは……そっか……あいつは一人用プレイが多いし、あのモンスターを狩るゲームは綾には難しいかもな」

「うん、そうなの。だから、すっごく楽しい!」

うん……この笑顔を見れるなら、矜持などどうでもよくなるな。

その後もゲームを続け、夕方になったので帰る時間となる。





そして、綾を家まで送り届ける。

「冬馬君、送ってくれてありがとう!すっごく楽しかったよ!」

「お安い御用だ。楽しんでくれて何よりだ。俺も楽しかったな」

「あ、あのね……あ!お母さん!」

「何?……なんだ、いないじゃない……ッーー!!」

唇に柔らかなモノが触れ、一瞬で離れる……。

「エヘヘ……私からしちゃった……お、送ってくれたお礼!冬馬君!またね!」

綾は恥ずかしいのか、そのまま家の中に入る。

……おいおい、不意打ちとは……。

……ヤバイな、うん、ヤバイ。

思い切り壁を殴りたい気分だ。

そして叫びたい。

可愛すぎるだろーー!!と。

どうやら、俺の彼女は可愛すぎるようだ。
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