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僕の願い
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僕にはずっと好きな子がいる。
その子は、リリー・ブランシュ公爵令嬢。僕の一時的な婚約者だった。
僕は生まれてから王太子として求められるものはあっても僕本人に求められるものは無かった。好きだと言われても容姿と地位だけ。許されることも、王太子という地位によって狭まって、何をやっても僕は本当にこれをやりたいのかと疑問を抱え続けた。
何もかも上辺だけ、中は要らないのだ。
寂しかった。僕だって誰かに認められたかった。許して欲しかった。
そんな悩みが噴出してしまいそうな時、出会ったのがリリーだった。
『わぁ、キレイな子!こんな子がこんやくしゃでうれしいなぁ。よろしくねリリー!』
当たり前のように僕は、お世辞を吐いた。リリーは確かに可愛いけれど一目惚れする程じゃない。身勝手にもそう考えて、一時の契約結婚だと距離を取ろうとした。
目の前で、取られた反応を見るまでは。
『……よ、よろしくおねがいします。私、ルアン様にふさわしくなれるよう努力いたしますわ!努力してルアン様と共に立てるようなステキな者となって、おしいと言われるような人材になってみせます!』
そう言って、恋に落ちた少女の姿でにこやかな笑顔を浮かべたのだ。
その後の行動はその発言を体現していた。
彼女の口から直接僕を好きだと口にすることは無かったが使わない妃教育を必死に受け、僕とする定期的な茶会でニコニコと会話を続けるその姿はとても輝いていて。話が進むにつれてコロコロと変わる話題と、キラキラした笑顔とそれに釣られて煌めく瞳に、虜にされていく。
彼女は僕にとっての特別だった。
彼女だって、僕だって分かっていた。この感情が本当に結ばれることは無いと。結ばれても表舞台には隠される、望まれない感情になると。
『リリーが怪我を!?』
父王も分かっていたのだ。僕がリリーに気持ちを向けていると。
だから、僕の気が削がれるよう傷をつけた。僕が、国の為に聖女を留めなければならないから。
僕が浮かれていたから父の策略に気づくのが遅くなってしまった。護衛の騎士は元々力が足りないのなら排除されるべき者であったし、自己の感情で全てを投げ打つような少年騎士などさらにそこにいるべきでは無い。治癒士などもっと能力のある者がいたはずなのだ。
僕が彼女の幸せを奪った。痛みを作り出した。
計画的な事件の後、痛ましい傷ができた彼女は仮面で自分を隠し始めるようになった。
あの傷が僕の唯一の宝物の彼女に陰りを作ったのだ。
僕は、この時から王太子として望まれた枠組みに留まるのを辞めた。
裏世界にも出入りし、彼女にとって得になるもの、僕にとって利になるものを探した。
力も求められる以上に強くなった。
父上に聖女との結婚についての問題提起をしたり、聖女召喚に使われる魔法陣の一部分を書き換えたりもした。結局聖女は現れたし、そんなに結婚したいならと普通なら叶うはずもないような問題を笑いながら提起されたが。
『聖女ハルノ・サクラ。其方はこの世界に落とされた。私と共に夫婦となりこの国を治めなくてはならない』
『……だが、私には望みがあるのだ。今の婚約者を自分の本当の妻にしたい。申し訳ないが、私の提案に付き合ってくれ』
でも、僕は諦められなかった。聖女だって人間だ。結婚したい者や好く者は僕以外にいるだろうし、無理に結ばれるのは嫌だろう。僕は説明と説得を続けわかって貰えるよう言葉を続けた。無理な問題も今、僕自身が進めてることと合わせれば彼女の成人に間に合うのだと。
聖女はそれに付き添ってくれ、結局ヴルツェルと仲良くなったようだった。彼の女っ気が無い様子には少々不安があったので、全員が望みを叶えられるように収まったとは思う。
常に死に物狂いで働いた。肉体労働も知力、戦略を練るのも、そこの場所が馬車であれ、戦場であれ僕は動き続けた。全ては彼女との結婚のため。
やっと終わりを迎えられそうとなったとき彼女から放たれたのは地獄のような発言だった。
『私、ルアン殿下の婚約者を辞めさせていただきたく本日は参りましたの』
『他人となる者が貴方様の色を纏うなど許されることではありません』
どれだけ疲労を貯めても大丈夫だった体が壊れそうだった。
だから、説明中に倒れた彼女を横目に、元々するつもりがなかった作戦を決行した。
結婚前に僕自身の手で彼女を手篭めにすると決めた。しなくてもいいような盤石な体制ではあったが、本人が向けられていた愛を自覚していなかったのだ。悲しさが胸の奥で疼いて、痛くて、狂いそうだった。
最中に、何度夢ではないのかと思ったことか。僕に強い反応を示す度、今の僕は彼女を愛している、彼女の体は喜んでいるのだと感じさせ、今までの人生で一番最高の気分だった。
美しい身を汚す。求められる以上の快楽を与える。善がる姿は想像の何倍も素晴らしく。
僕の望みを、願望を叶えられたと実感させられた。
「やっとだ……これからは僕と幸せになろうね。リリー」
その子は、リリー・ブランシュ公爵令嬢。僕の一時的な婚約者だった。
僕は生まれてから王太子として求められるものはあっても僕本人に求められるものは無かった。好きだと言われても容姿と地位だけ。許されることも、王太子という地位によって狭まって、何をやっても僕は本当にこれをやりたいのかと疑問を抱え続けた。
何もかも上辺だけ、中は要らないのだ。
寂しかった。僕だって誰かに認められたかった。許して欲しかった。
そんな悩みが噴出してしまいそうな時、出会ったのがリリーだった。
『わぁ、キレイな子!こんな子がこんやくしゃでうれしいなぁ。よろしくねリリー!』
当たり前のように僕は、お世辞を吐いた。リリーは確かに可愛いけれど一目惚れする程じゃない。身勝手にもそう考えて、一時の契約結婚だと距離を取ろうとした。
目の前で、取られた反応を見るまでは。
『……よ、よろしくおねがいします。私、ルアン様にふさわしくなれるよう努力いたしますわ!努力してルアン様と共に立てるようなステキな者となって、おしいと言われるような人材になってみせます!』
そう言って、恋に落ちた少女の姿でにこやかな笑顔を浮かべたのだ。
その後の行動はその発言を体現していた。
彼女の口から直接僕を好きだと口にすることは無かったが使わない妃教育を必死に受け、僕とする定期的な茶会でニコニコと会話を続けるその姿はとても輝いていて。話が進むにつれてコロコロと変わる話題と、キラキラした笑顔とそれに釣られて煌めく瞳に、虜にされていく。
彼女は僕にとっての特別だった。
彼女だって、僕だって分かっていた。この感情が本当に結ばれることは無いと。結ばれても表舞台には隠される、望まれない感情になると。
『リリーが怪我を!?』
父王も分かっていたのだ。僕がリリーに気持ちを向けていると。
だから、僕の気が削がれるよう傷をつけた。僕が、国の為に聖女を留めなければならないから。
僕が浮かれていたから父の策略に気づくのが遅くなってしまった。護衛の騎士は元々力が足りないのなら排除されるべき者であったし、自己の感情で全てを投げ打つような少年騎士などさらにそこにいるべきでは無い。治癒士などもっと能力のある者がいたはずなのだ。
僕が彼女の幸せを奪った。痛みを作り出した。
計画的な事件の後、痛ましい傷ができた彼女は仮面で自分を隠し始めるようになった。
あの傷が僕の唯一の宝物の彼女に陰りを作ったのだ。
僕は、この時から王太子として望まれた枠組みに留まるのを辞めた。
裏世界にも出入りし、彼女にとって得になるもの、僕にとって利になるものを探した。
力も求められる以上に強くなった。
父上に聖女との結婚についての問題提起をしたり、聖女召喚に使われる魔法陣の一部分を書き換えたりもした。結局聖女は現れたし、そんなに結婚したいならと普通なら叶うはずもないような問題を笑いながら提起されたが。
『聖女ハルノ・サクラ。其方はこの世界に落とされた。私と共に夫婦となりこの国を治めなくてはならない』
『……だが、私には望みがあるのだ。今の婚約者を自分の本当の妻にしたい。申し訳ないが、私の提案に付き合ってくれ』
でも、僕は諦められなかった。聖女だって人間だ。結婚したい者や好く者は僕以外にいるだろうし、無理に結ばれるのは嫌だろう。僕は説明と説得を続けわかって貰えるよう言葉を続けた。無理な問題も今、僕自身が進めてることと合わせれば彼女の成人に間に合うのだと。
聖女はそれに付き添ってくれ、結局ヴルツェルと仲良くなったようだった。彼の女っ気が無い様子には少々不安があったので、全員が望みを叶えられるように収まったとは思う。
常に死に物狂いで働いた。肉体労働も知力、戦略を練るのも、そこの場所が馬車であれ、戦場であれ僕は動き続けた。全ては彼女との結婚のため。
やっと終わりを迎えられそうとなったとき彼女から放たれたのは地獄のような発言だった。
『私、ルアン殿下の婚約者を辞めさせていただきたく本日は参りましたの』
『他人となる者が貴方様の色を纏うなど許されることではありません』
どれだけ疲労を貯めても大丈夫だった体が壊れそうだった。
だから、説明中に倒れた彼女を横目に、元々するつもりがなかった作戦を決行した。
結婚前に僕自身の手で彼女を手篭めにすると決めた。しなくてもいいような盤石な体制ではあったが、本人が向けられていた愛を自覚していなかったのだ。悲しさが胸の奥で疼いて、痛くて、狂いそうだった。
最中に、何度夢ではないのかと思ったことか。僕に強い反応を示す度、今の僕は彼女を愛している、彼女の体は喜んでいるのだと感じさせ、今までの人生で一番最高の気分だった。
美しい身を汚す。求められる以上の快楽を与える。善がる姿は想像の何倍も素晴らしく。
僕の望みを、願望を叶えられたと実感させられた。
「やっとだ……これからは僕と幸せになろうね。リリー」
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