298 / 319
第七章 公家の政
第二百六十七話 この国の新たなあり方
しおりを挟むそうなると、そろそろこの国の在り方を決めていかないといけなくなってくる。
正直それを俺が中心になって、賛同してくる人たちを引っ張る形ですることに抵抗はあるが、どうも回りがそれを許してはくれそうにないことも理解している。
そのように考えが及ぶと、此度の二国の占有も仕組まれていたようにも思えて仕方もない部分がある。
近衛の件で、当然近衛側でも仕掛けてきてはいたのだろうが、それでもあの糞親父松永久秀が受け身に回るだけでおとなしくしているはずもない。
それにあの信長さんだ。
安土に城を造っていて忙しいのはわかるが、それでも越前については信長さんが占有しても良いはずだ。
地繋がりにもなるし、何より一乗谷へは美濃とも近い。
それを俺にと、俺が断れない状況であの戦を終わらせるとなると疑いたくもなる。
しかし、俺の知る歴史上では信長さんは天下人として成り上がる寸前までいった人だし、大和の弾正も天下を望んであの時に信長さんと袂たもとを分かれたという説まである。
しかし実際にあの二人と接しても、どちらも天下など望んでいるようには見えない。
二人とも真摯に領民のために安寧を求めて戦をしているようにしか見えないのだ。
ただ、この時代がそう簡単に領民の安寧を許してはくれないだけだ。
そこに俺たちがのこのこと伊勢を押さえてしまったので、取り込まれたというのが多分正解なのだろう。
鴨葱(かもねぎ)状態で戦国チートに飲み込まれたという訳か。
今の状態を俯瞰(ふかん)的に眺めてみることができたことで、やっと見えてきたものがある。
俺の転移が、鴨葱だったとか。
それならばそうと神様も教えてくれればいいのに、そういえば俺はそんな存在にあったことはないかな。
いきなり玄奘様に保護されたわけだし……考えても答えなどでないことくらいはわかるので、考えを辞めた。
そうなると、すぐにではないが新たな日本の形についても考える必要はあるが、これは俺一人でして良い筈は無い。
糞親父に信長さんは絶対に逃がさないとして、武士だけでなく公家の中からも人を探して新たな形を探さないといけないか。
あ、ここで有名なセリフが出るのだな。
『いま一度日本を洗濯したく……』なんてね。
まあ、どちらにしても俺が落ち着かないとできない話だ。
伊勢の時はなぜかしらうまくいった感じで、俺はほとんど手を出した記憶が無いが、今回ばかりはそうもいかないようだ。
若狭と越前の二国は俺が率先してまとめないとまずい……それならば、いっそのこと実験でもしてみるか。
幸いなことに内政については葵に任せていることから、この世界での常識はとっくに通じていない。
一応、地元の豪族たち相手に対しては半兵衛さんからの通達という形にはしてあるが、実質の政は葵が仕切ることになる。
戦災孤児の女性が一国を仕切るのだ。
考えたら面白そうな話だ。
葵や、葵に付けた孤児たちに色々と考えさせ、失敗もさせながらいろいろと試してみよう。
その結果を以て、新たな形を見つけられるような気がしてきた。
別に急ぐ話でもないし、とにかく今回のケースで一応畿内全土を俺たちが押さえたのだ。
まだまだ各地には戦国大名が俺たちの領地を狙っているが、葵の実験が終わるまでは絶対に守り切らないとまずい。
俺は京に戻り、検非違使の仕事をつづけながら、この先について考えを巡らせている。
俺の実験はみごとに図に当たったようだ。
葵が張さんや珊さんの協力を仰ぎながらだが、小浜を手中に収めたようだ。
俺も頻繁に届く手紙などから状況を聞いているが、あまりに見事な手腕に驚いた。
葵は、最初に若狭の財政基盤の構築にあたった。
俺が今までしてきたのを身近で見ていたのも葵だったが、まずは銭集めからなんて、もろに俺が最初にやりそうなことだ。
確かに伊勢では商売に血眼ちまなこになっていた記憶はあるけど、一応は公卿にまでなった俺の嫁でもあるのに、京の公家連中からは下品ともとられかねない。
しかし、葵の方針は令和に限らず為政者としては当たり前の話だ。
財政の安定は基本の中の基本だ。
その基本に忠実なのがいい。
しかも、俺なんか考えつかないやりようは無理のない手順でまとめ上げるのなんか半兵衛さんも驚いていたな。
まあ、先に小浜の実態状況調査をするのはわかるが、それを元にしても海千山千の商人がそう簡単に冥加金(みょうがきん)を収めるはずはないのだが、商人たちの方から収めてくるように仕向けるのなんか見事だ。
聞いたところでは小浜の港の調査を先にして、港施設の問題点を把握後に、珊さんに協力して貰い、近くに新たな船着き場と倉庫群を作り、そこの利用を制限して商人を仕分けして冥加金を商人の方から収めるように持って行ったのは、いったい誰が考えたんだ。
しかも、先月には小浜と博多との間に定期便を作りたいから協力を願い出てきたのは驚いた。
それも、俺に許可だけを求めてきたのだ。
葵が言うには賢島の幸と協力して常駐している博多の紅谷と話を付けたいので許可くれだって、もう驚くしかないほど成長している。
紅谷さんとの交渉事ならば張さんからも一人でしてもかまわないとまで許可を取っているから、俺には選択肢が無い。
もう頷くだけだった。
すぐに話もまとまるそうだから、じきに小浜と博多の間には物流のルートができる。
そうなれば、今以上に冥加金をとれそうだとも言っていた。
そこで俺は葵に、冥加金についてもアドバイスを行った。
登録商人について、港施設や物流経費については今のまま徴収する方向で、そのうえで小浜で商売をする上での年貢の代わりに銭を収めさせる仕組みを作るよう指示を出した。
すでに三蔵村での子供たちの教育も順調になってきており、毎年一定数のテクノクラートの輩出を可能としている。
なので、小浜の商人についてはこの世界の常識に近い形で、商家の規模に応じた金額を毎年治めさせるのと、売上金額に応じて取引金額の半分を収めさせるもの、それ以外に俺たちが使っている帳簿の提出を義務付けるが利益の2割の徴収の三つ、正確には商売を禁止もあるが、これは俺たちに銭を収めることなく商売をしようとしている者に限るので説明は省くが、利益に応じての徴収が実は一番支払う額が少なくなるようにしてもらう。
将来的には全部この方向に変
10
あなたにおすすめの小説
幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。
アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚…
スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。
いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて…
気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。
愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。
生きていればいつかは幼馴染達とまた会える!
愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」
幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。
愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。
はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?
蒼穹の裏方
Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し
未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
対ソ戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。
前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。
未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!?
小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!
母を訪ねて十万里
サクラ近衛将監
ファンタジー
エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。
この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。
概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。
仮想戦記:蒼穹のレブナント ~ 如何にして空襲を免れるか
サクラ近衛将監
ファンタジー
レブナントとは、フランス語で「帰る」、「戻る」、「再び来る」という意味のレヴニール(Revenir)に由来し、ここでは「死から戻って来たりし者」のこと。
昭和11年、広島市内で瀬戸物店を営む中年のオヤジが、唐突に転生者の記憶を呼び覚ます。
記憶のひとつは、百年も未来の科学者であり、無謀な者が引き起こした自動車事故により唐突に三十代の半ばで死んだ男の記憶だが、今ひとつは、その未来の男が異世界屈指の錬金術師に転生して百有余年を生きた記憶だった。
二つの記憶は、中年男の中で覚醒し、自分の住む日本が、この町が、空襲に遭って焦土に変わる未来を知っってしまった。
男はその未来を変えるべく立ち上がる。
この物語は、戦前に生きたオヤジが自ら持つ知識と能力を最大限に駆使して、焦土と化す未来を変えようとする物語である。
この物語は飽くまで仮想戦記であり、登場する人物や団体・組織によく似た人物や団体が過去にあったにしても、当該実在の人物もしくは団体とは関りが無いことをご承知おきください。
投稿は不定期ですが、一応毎週火曜日午後8時を予定しており、「アルファポリス」様、「カクヨム」様、「小説を読もう」様に同時投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる