299 / 319
第七章 公家の政
第二百六十八話 人材不足の顕在化
しおりを挟む当然、俺たちが使う帳簿についての説明というよりも教育?のできる学校のようなものまで小浜に準備してある。
これも順調に人が育ってきていることからできる話で、そろそろ三蔵寺での教育がパンクしそうだというクレームを前々から玄奘様から頂いてていたので、教育の体制そのものも見直しを急いだ成果だと思いたい。
俺たちの銭管理が順調に推移しているのを糞親父松永久秀も信長さんも知っており、人の派遣と教育をたびたび頼まれているが、人の派遣は数人程度でごまかしているのが現状だ。
やっと自領に子供たちを回していけるようになってはきているが、それでも足りないのが現状だ。
他に回すなんてとんでもないと言いたいところだが、流石にあの二人にはいろいろとご厄介にもなっていることもあり断り切れない。
その二人から頼まれている家臣の教育に至っては、はっきり言ってあまりうまくいっていない。
この時代の常識が邪魔しているようなのだ。こちらに回されてきているのが皆内政向きの武士ばかりなのだが、それでも彼ら自身が受け入れていない。
いくら下級の武士とはいえ、戦災孤児たちと机を並べての教育は面白くもないだろう。
だからといって、別枠で教育しようとも先生が孤児だった者たちしかいないので、はっきり言って誰も真剣に学ぼうともしない。
状況は逐一詳細にお二人には報告しているが、今のところ改善の見込みはない。
俺たちの管理方法が優れていることは戦国チートの二人にはすぐに理解していたようだが、あいにく戦国チートならではの悩みが出たようで、彼らの配下がついてこれない。
さすがに本多さんとか丹羽さんはすぐに俺たちの価値に気が付いてはいるようだが、こちらも松永さんや信長さんと同様だ。
どちらにしてもこの時代の常識が邪魔になってなかなかうまくはいかないようだ。
これは俺たちにも言えるのだが、俺たちの場合、あまりに強烈な張さんからの洗礼を受けていることと、内政について大名の九鬼さんがさっさとあきらめて俺たちに丸投げしてきたために、孤児たちが数字を扱う部署に出入りしても今のところ古参の家臣からの邪魔は入らない。
それを新たに仕官してきた武将たちは面白くはなかっただろうが、古参の武将たちが何も言わない以上文句も言えない。
それで領地が回っているのだ。
もし、一つでもまずいことでもあろうものなら途端に不満が爆発しただろうが幸いなことに今のところ一つも起きていない……あ、そういえば以前一つあったが、文句を言ってきた武将たちにそのまま対応に当たらせたら、かえってひどいことになり、伊勢の領民が志摩に逃げ込んできた。
偉そうに文句を言ってきた武将たちの統治能力があまりにひどかったわけではなかったのだが、この時代の平均といった感じの教育しか受けていなかったので、俺達でも持て余すようなときには当然対処などできようがなかった。
あの時には領民には申し訳なく思ったのだが、武士たちの不満を抑えきれなかった俺たちにも責任があると今でも思っている。
俺が令和日本にいた時に本で読んだことがあるのだが、『やって見せ、やらせて見せ、ほめてやらねば……』というのがあった。
これは第二次大戦中の山本五十六さんの言葉だと聞いていたのだが、これはあくまで余裕があるときにしかできなかった。
緊急時には、はっきり言って無理だった。
何も俺は緊急時だけに無理を言った訳でもないのだが、あいつらの常識だと普段の政をやらせようとしてもただただ部下や俺の所の者に言うだけで何もしない。
それでいて、不満たらたらなのだ。
そんなにできるのならばと、それでも比較的どうにかなりそうなのをやらせたら、非常に酷いことになったので、結局そいつらを首にした。
あ、その首だけど物理的じゃないよ。
この時代だと結構当たり前にあるようだけど、とにかくうるさいのをまとめて放逐した。
確かに、うちの子供たちでは難しいとは思ったよ、野分での被害の対応は。
それでも、幸でももう少しうまくやれるとは思うし、何よりあいつらが散々馬鹿にしていた張さんならば何ら問題なく処理できた案件だ。
何せ、あいつらがかき回して相当ひどい状況に変えた後でも比較的短時間で処理したのは張さんなのだから。
尤も半兵衛さんをはじめ豊田さんまでも借り出して処理していたから、終わった時にはほとんど全員が半べそをかいていたけど俺は見ていない。
だって、俺はあの時別件で手が離せなかったし、それでも今でもことあるたびに賢島の豊田さんからぶちぶち言われるのだから、いい加減勘弁してほしいくらいだ。
でも、俺も反省はしたが、正直信長さんじゃないけど人材の件はどうにかしないとまずい。
戦ならばまだ使えそうなものは結構いるのだが、いざ内政となると途端に心もとない。
表立って子供たちを使えるのならばまだしも、武士の沽券にかかわるのがどうとかで、裏でどうにかしていくしかない。
幸い、あいつらは使用人が仕事をしてても気にしないから、薄汚い小屋で仕事をさせている分には今のところ文句も出ていない。
いい加減、志摩を抑える前までに仲間になった九鬼さんたちのように俺たちを求めてくれれば面倒ごともないのだが、あの時の人たちはごくごく少数なので、今では皆伊勢で重要な役割を与えられて忙しそうにしていると聞いている。
そういえば、志摩を抑えるまでの短い間寺で子供たちと一緒に勉強もしていたな。
ものにした人はほとんどいなかったけど、子供たちの能力だけはみな一様に認めていたからあの時の方が今よりも政は楽だったような気がする。
尤も領地も小さかったというのもあるのだけれど、どうするかな。
今から三蔵寺に預ける訳にもいかないし、何より三蔵寺からギブアップのクレームまでもいただいてもいる。
正直九鬼さんをはじめ半兵衛さんや藤林さんは教育の重要性を理解しているので、領内各地に教育する場所を作ろうととはしているし、何より読み書きまでは始めてはいるらしい。
しかし、内政官としてはそろばんの使い方だけでなく、帳面の付け方なども理解しないとうちでは使えない。
まあ、若狭での実験だけど、葵は俺の嫁になっているので、彼女が政に口をはさんでも武士たちは腹の中では思うところがあるだろうが、反対は出来ないので、今のところどうにかなっている。
幸の様子を見ないとわからないが、賢島で内政官のための学校を整備でもしよう。
いわゆる大学のようなものを考えている。
各地では読み書きだけは出来るように教育を充実させて、自頭のよさそうなのを選んで賢島に送り英才教育を速成でおこない各地にばらまく。
そうだよ、今のところこれ以上の策は俺にも考えがつかない。
葵が若狭で頑張っているうちに幸にももう少し苦労をしてもらおう.
11
あなたにおすすめの小説
幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。
アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚…
スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。
いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて…
気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。
愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。
生きていればいつかは幼馴染達とまた会える!
愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」
幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。
愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。
はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?
マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜
美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊
ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め…
※カクヨム様にも投稿しています
※イラストはAIイラストを使用しています
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
蒼穹の裏方
Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し
未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる