名もなき民の戦国時代

のらしろ

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第七章 公家の政

第二百六十八話 人材不足の顕在化

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 当然、俺たちが使う帳簿についての説明というよりも教育?のできる学校のようなものまで小浜に準備してある。
 これも順調に人が育ってきていることからできる話で、そろそろ三蔵寺での教育がパンクしそうだというクレームを前々から玄奘様から頂いてていたので、教育の体制そのものも見直しを急いだ成果だと思いたい。

 俺たちの銭管理が順調に推移しているのを糞親父松永久秀も信長さんも知っており、人の派遣と教育をたびたび頼まれているが、人の派遣は数人程度でごまかしているのが現状だ。
 やっと自領に子供たちを回していけるようになってはきているが、それでも足りないのが現状だ。

 他に回すなんてとんでもないと言いたいところだが、流石にあの二人にはいろいろとご厄介にもなっていることもあり断り切れない。
 その二人から頼まれている家臣の教育に至っては、はっきり言ってあまりうまくいっていない。

 この時代の常識が邪魔しているようなのだ。こちらに回されてきているのが皆内政向きの武士ばかりなのだが、それでも彼ら自身が受け入れていない。
 いくら下級の武士とはいえ、戦災孤児たちと机を並べての教育は面白くもないだろう。

 だからといって、別枠で教育しようとも先生が孤児だった者たちしかいないので、はっきり言って誰も真剣に学ぼうともしない。
 状況は逐一詳細にお二人には報告しているが、今のところ改善の見込みはない。

 俺たちの管理方法が優れていることは戦国チートの二人にはすぐに理解していたようだが、あいにく戦国チートならではの悩みが出たようで、彼らの配下がついてこれない。

 さすがに本多さんとか丹羽さんはすぐに俺たちの価値に気が付いてはいるようだが、こちらも松永さんや信長さんと同様だ。
 どちらにしてもこの時代の常識が邪魔になってなかなかうまくはいかないようだ。

 これは俺たちにも言えるのだが、俺たちの場合、あまりに強烈な張さんからの洗礼を受けていることと、内政について大名の九鬼さんがさっさとあきらめて俺たちに丸投げしてきたために、孤児たちが数字を扱う部署に出入りしても今のところ古参の家臣からの邪魔は入らない。

 それを新たに仕官してきた武将たちは面白くはなかっただろうが、古参の武将たちが何も言わない以上文句も言えない。
 それで領地が回っているのだ。

 もし、一つでもまずいことでもあろうものなら途端に不満が爆発しただろうが幸いなことに今のところ一つも起きていない……あ、そういえば以前一つあったが、文句を言ってきた武将たちにそのまま対応に当たらせたら、かえってひどいことになり、伊勢の領民が志摩に逃げ込んできた。

 偉そうに文句を言ってきた武将たちの統治能力があまりにひどかったわけではなかったのだが、この時代の平均といった感じの教育しか受けていなかったので、俺達でも持て余すようなときには当然対処などできようがなかった。

 あの時には領民には申し訳なく思ったのだが、武士たちの不満を抑えきれなかった俺たちにも責任があると今でも思っている。
 俺が令和日本にいた時に本で読んだことがあるのだが、『やって見せ、やらせて見せ、ほめてやらねば……』というのがあった。 
 これは第二次大戦中の山本五十六さんの言葉だと聞いていたのだが、これはあくまで余裕があるときにしかできなかった。 

 緊急時には、はっきり言って無理だった。
 何も俺は緊急時だけに無理を言った訳でもないのだが、あいつらの常識だと普段の政をやらせようとしてもただただ部下や俺の所の者に言うだけで何もしない。
 それでいて、不満たらたらなのだ。

 そんなにできるのならばと、それでも比較的どうにかなりそうなのをやらせたら、非常に酷いことになったので、結局そいつらを首にした。
 あ、その首だけど物理的じゃないよ。 
 この時代だと結構当たり前にあるようだけど、とにかくうるさいのをまとめて放逐した。

 確かに、うちの子供たちでは難しいとは思ったよ、野分での被害の対応は。
 それでも、幸でももう少しうまくやれるとは思うし、何よりあいつらが散々馬鹿にしていた張さんならば何ら問題なく処理できた案件だ。

 何せ、あいつらがかき回して相当ひどい状況に変えた後でも比較的短時間で処理したのは張さんなのだから。
 尤も半兵衛さんをはじめ豊田さんまでも借り出して処理していたから、終わった時にはほとんど全員が半べそをかいていたけど俺は見ていない。

 だって、俺はあの時別件で手が離せなかったし、それでも今でもことあるたびに賢島の豊田さんからぶちぶち言われるのだから、いい加減勘弁してほしいくらいだ。
 でも、俺も反省はしたが、正直信長さんじゃないけど人材の件はどうにかしないとまずい。
 戦ならばまだ使えそうなものは結構いるのだが、いざ内政となると途端に心もとない。

 表立って子供たちを使えるのならばまだしも、武士の沽券にかかわるのがどうとかで、裏でどうにかしていくしかない。 
 幸い、あいつらは使用人が仕事をしてても気にしないから、薄汚い小屋で仕事をさせている分には今のところ文句も出ていない。

 いい加減、志摩を抑える前までに仲間になった九鬼さんたちのように俺たちを求めてくれれば面倒ごともないのだが、あの時の人たちはごくごく少数なので、今では皆伊勢で重要な役割を与えられて忙しそうにしていると聞いている。

 そういえば、志摩を抑えるまでの短い間寺で子供たちと一緒に勉強もしていたな。
 ものにした人はほとんどいなかったけど、子供たちの能力だけはみな一様に認めていたからあの時の方が今よりも政は楽だったような気がする。

 尤も領地も小さかったというのもあるのだけれど、どうするかな。
 今から三蔵寺に預ける訳にもいかないし、何より三蔵寺からギブアップのクレームまでもいただいてもいる。

 正直九鬼さんをはじめ半兵衛さんや藤林さんは教育の重要性を理解しているので、領内各地に教育する場所を作ろうととはしているし、何より読み書きまでは始めてはいるらしい。

 しかし、内政官としてはそろばんの使い方だけでなく、帳面の付け方なども理解しないとうちでは使えない。

 まあ、若狭での実験だけど、葵は俺の嫁になっているので、彼女が政に口をはさんでも武士たちは腹の中では思うところがあるだろうが、反対は出来ないので、今のところどうにかなっている。
 幸の様子を見ないとわからないが、賢島で内政官のための学校を整備でもしよう。
 いわゆる大学のようなものを考えている。

 各地では読み書きだけは出来るように教育を充実させて、自頭のよさそうなのを選んで賢島に送り英才教育を速成でおこない各地にばらまく。
 そうだよ、今のところこれ以上の策は俺にも考えがつかない。
 葵が若狭で頑張っているうちに幸にももう少し苦労をしてもらおう.
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