ある日、ぶりっ子悪役令嬢になりまして。

桜あげは

文字の大きさ
68 / 101
子供編・学園編(一年目一学期)まとめ

改・学生時代(ハートのJ)5

しおりを挟む

 俺の傍らに立つカミーユが、メイを追う探索魔法を再び発動する。
 光は、真っすぐに地下通路の奥まで進むと、迷いなく階段を上り始めた。

 階段を上っている途中で再び敵に矢を射かけられたが、全て防御魔法で防ぐ。
 ついでに、氷魔法で敵の動きを止めておいた。

「カミーユはあんまり魔力を無駄遣いしないようにね。回復したと言っても本調子じゃないだろ?」
「うん……アシルは平気なの? 私に魔力くれちゃったのに」
「まだまだ平気だよ。欲しくなったらいつでも言いなよ」

 但し、口移し限定だけどな。
 俺の考えを読み取ったのか……カミーユは、真っ赤な顔で慌てて視線を逸らせた。そんな俺達の様子を見た殿下が、楽しそうに声を掛けてくる。

「それにしても、アシルとカミーユは婚約者らしく仲良くなったね。僕も安心したよ」

 どうやら、殿下は先程の魔力受け渡しの現場を、最初からバッチリ見ていたらしい……

「カミーユもようやく僕に誰かを重ねて理想化することから卒業できたみたいで良かったね」
「理想化?」

 一体、彼はなんのことを指しているのだろう?
 俺と同じ疑問を抱いたのか、カミーユも不思議そうに首を傾げている。

「自覚がないのかな? カミーユは僕を見ているようで見ていないよね? 僕を通して他の誰かを見ているでしょう。もしくは僕と誰かを比べている」
「そんなことはないですよ? ロイス様……」
「始めは、カミーユは僕に気があるのかな……と思っていたんだけど、すぐに違うと気付いたよ」

 カミーユは、殿下に気があるわけではないと……!?
 あれだけ殿下に纏わり付いているのに、彼女は今も殿下の眼中にないらしい。
 俺としてはその方が助かるけれど、少し彼女が気の毒だ。

 モヤモヤとした思いを抱えた俺が足を進めていると、いつの間にかメイがいるであろう扉の前まで辿り着いた。
 用心しつつ、三人で部屋の扉に手を掛ける。
 扉を開けた俺達は、目の前に広がる光景にしばし唖然とした。

「なんだ、これ?」

 大きな部屋の中には、大勢の屈強な男達が蠢いていた。
 即席兵士達とは違い、少しは骨のありそうな者達である。
 部屋の隅には、淡い色の破けたドレスを着たメイが蹲っていた。
 そして、彼女を庇いながら戦っているのは……

「カイ・ザクロ!?」

 城を出て行方不明になっていたメイの双子の弟が、何故か姉を庇いながら敵と対峙している。
 部屋の中央では、太った貴族の男と、派手な化粧をした令嬢が高みの見物をしていた。
 男は王弟派のティト伯爵、女はその娘だろう。
 令嬢の方は、青ざめた顔で先に部屋に侵入しているライガの方を見ていた。
 そのライガといえば、現在は屈強な男達に囲まれて交戦中だ。多勢に無勢の状態で戦っている。

「ライガ様ー、助っ人に来ましたよー!」

 カミーユが張り上げた声に、ライガが言葉を返す。

「メイの怪我を見てやってくれ! こいつらにやられたんだ!」
「了解しました!」

 ライガの言葉に頷いたカミーユは、素早い動きで部屋の隅にいるメイの方へと駆け寄った。そのまま、メイの側にしゃがんで手当を始める。
 彼女は、今回は魔力枯渇にならないようにと、慎重に回復魔法を使っていた。

「メイちゃん、もう大丈夫だからね」

 回復魔法を掛けられたメイの傷が、徐々に引いていく。
 それを見届けた俺は、近くにいたロイス殿下に声を掛けた。彼もまた狙われている身だ。

「殿下、こちらへ。メイ嬢と一緒に下がっていてください。ついでに防御魔法を展開しておいて下さると助かります」
「うん、任せてよ!」

 やるべきことを見いだした殿下は、嬉しそうな声を上げた。
 魔法学園で優秀な成績を修めている殿下は、防御魔法程度なら簡単に使うことができる。
 こちらの隙を狙って、敵方の魔法使いの一人が、雷の魔法を放ってきた。
 俺も、防御魔法を使って、それを素早く防ぐ。
 敵の魔法は簡単に霧散した。

「なんだ、大したことなさそうだね」

 俺の感想に、カミーユも同意する。

「うん。職業魔法使いではないね。魔力不足の私でも大丈夫そうだよ」

 そう答えたカミーユは、魔法で部屋の床に穴を空けていた。
 先程、広間で階下に落下した件を根に持っているようだ。

 敵は急に地面が消えたことに動揺し、悲鳴も上げないまま階下の大広間へと落ちていった。
 その様子を確認したカミーユは、再び穴を塞ぐ。
 これで、敵が通る道は階段に限定された。
 この部屋に入るには、必ず入口の扉を通過しなければならない。

 カミーユは、ドアの前に陣取って生き残りを狙う戦法に出た。
 魔力消費が少なく、楽な方法を彼女なりに編み出したらしい。
 彼女が階下に落としたことで、敵の数が半分以下になった。

 俺は、部屋に残った敵を片っ端から凍らせていく。
 殿下は、メイと自分を透明な壁で防御しながら、伯爵達が逃げないようにと茨の蔓で彼等を拘束していた。
 あの茨の蔓は、カミーユが以前殿下に教えていた魔法だが、彼女の教えたものよりも刺が鋭く凶悪な形になっているのは気のせいだろうか……?

 そうしているうちに、カミーユに階下に落とされた兵士達が階段を上がってきたようだ。
 待ってましたとばかりに、カミーユが魔法を準備している。

「もう一回行ってみようか♪」

 やっとのことで戻ってきた彼等の立つ地面に、カミーユが再び大穴を開ける。

「今度は、何人戻って来るかな?」

 カミーユは、楽しそうに凶悪な笑みを浮かべていた。

 俺とカミーユとライガに容赦なく攻撃されて……
 間もなく、敵の兵士達は全滅した。
 俺は、扉の前に陣取っていたカミーユを回収して殿下の元へと戻る。

「これ、どうしよっか?」

 殿下は、茨の巻き付いている伯爵と令嬢をキラキラした瞳で見つめながら指差した。
 良い笑顔だ……

 伯爵は茨から抜け出そうとかなり奮闘したのだろう。服が破けてボロボロになっている。
 令嬢の方は、なんだか元気がない。
 彼女は、俺達が部屋に入って来た時から様子がおかしかった。
 今も顔色が悪く、ビクビクとした様子でライガの方を伺っている。
 そのライガだが、一人で先駆けてこの部屋に突入したせいで全身が傷だらけになっていた。
 カイも同様に酷い怪我だ。

 そんな様子を見たカミーユが二人に回復魔法を使おうとしたので、俺は急いで彼女を止めた。
 婚約者が自分以外の男に回復魔法を掛けるなんてことは、出来る限り避けたい。なんか嫌だ。

「カミーユは魔力が少ないんだから、俺がやるよ」
「でも……」
「カミーユ、アシルに任せときなよ」

 殿下が、ニヤニヤしながら俺に加勢してくれた。
 彼は、今の俺の状況を楽しんでいる。

「アシルって、意外と独占欲が強いね。カミーユに他の男の手当をさせたくないんだよ」

 俺は、遠距離から正確に二人に回復魔法を放つ。
 それにしても、行方不明だったはずのカイ・ザクロが、どうしてこんな場所にいるのだろうか。
 たまたま姉の危機を知ったにしては、助けに入るのが早過ぎる。

「ティト伯爵。メイやロイスを攫った主犯は、お前だな?」

 怪我が直ったライガが、ゆっくりとこちらに近付きながら伯爵に問いかけた。
 丸太のように肥え太ったティト伯爵は、茨に絡み取られたまま声を張り上げている。

「ライガ様! どうして国王派の一味なんかと馴れ合っておられるのですか! あなたは、王弟様のご子息なのですぞ!」

 伯爵は、俺達とライガが共同戦線を張ったことが不満のようだ。

「俺が誰とつるもうが、俺の勝手だ。お前には関係ない」
「ですが、奴らは敵です!」
「メイをこんな目に遭わせたお前達の方が、俺にとっては敵だ」

 ライガは憤怒の表情を浮かべて、伯爵達を見据えている。

「俺とメイを別れさせて、自分の娘と婚約させる算段だったそうじゃないか。俺にまで剣を向けて来たのは、弱った俺を捕えて周囲を思い通りに動かしたかったからか?」

 凶悪な笑みを張り付かせて、ライガは伯爵と令嬢に近づいていった。

「それは、ライガ様のために……」
「お前の為だろうが! ロイスを使って王を追い落とし、メイと俺を別れさせて……将来的には義理の息子になった俺を傀儡にして権力を牛耳りたかったのだろう!」
「ひぃっ!」

 ライガの怒りは止まらない。ティト伯爵を殺してしまいそうな勢いだ。
 追いつめられた伯爵は、尚も言い訳を続けている。

「そこにいる女が悪いんだ! たかだか男爵家の娘の分際でライガ様に何を吹き込んだ、この国王派の間者めが!」

 ティト伯爵は、矛先をこの中で一番立場の弱いメイに向けた。
 無抵抗のメイにだけ容赦なく攻撃の言葉を吐くところに、伯爵の小者さを感じる。

「それはもういいよ」

 突然、ティト伯爵を拘束している茨の蔓の一本が空中に伸びて、彼の尻に降り降ろされた。
 茨を操ったのは、なんとロイス殿下だ。
 殿下も、今回の件で怒りを感じていたのだろう。

「ひぎいっ」

 伯爵が豚のような苦悶の声を上げる。

「で? 他にお前は誰と繋がっているんだい?」
「くぅ……あなたにお話しする事など何もありません!」
「そう、これでも?」

 再び茨が振り下ろされた。殿下は、新たな性癖に目覚めたようだ。
 今や、伯爵の巨大な尻は、ズボンが破れて真っ赤に腫れ上がっている。

「どうせ、父を王位から降ろした後で僕と共に殺すつもりだったんでしょう? 誰から指示を貰ったの? それとも、自分で考えついたの? どうやってこんなに兵を集めたのかなあ?」
「……ぐああっ!」

 俺の隣では、憧れの殿下の豹変ぶりを見たカミーユが、僅かに青ざめている。
 俺は彼女を抱き寄せて、その視界を塞いだ。

「殿下、あとは尋問官に任せましょう。そのうち城の者達が来るはずです」

 これ以上、カミーユに尋問の様子を見せたくはない。

「ふぅん、仕方ないなあ」

 殿下は多少不服そうだったが、素直に俺の提案に頷いてくれた。
 彼から解放された伯爵は、安堵で失禁し気を失った。

 一人残された化粧の濃い伯爵令嬢は、青ざめた顔でガタガタと震えている。
 彼女は、一心にライガの方を見つめていた。

「ライガ、こちらのご令嬢は、君関連かな?」

 令嬢の視線に気付いたロイス殿下の質問に、ライガは無愛想に答える。

「そんな女は知らん」
「ラ、ライガ様……彼女はスペードクラスの生徒ですよ?」

 横からメイが口を挟んだ。

「クレール・ティト伯爵令嬢は、確かにウチの学園に在籍していますね」

 俺も言葉を添える。
 クレール・ティト伯爵令嬢は、間違いなく魔法学園の生徒だ。

「ライガ様……私……は……」

 か細い声でクレールが話し出すと、ライガが厳しい表情で彼女を睨んだ。

「お前の話など聞くに値しない。今すぐその不愉快な言葉しか紡がない口を閉じろ」
「……っ」

 ライガは、王弟派の令嬢相手にも容赦がない。

「っ……この、ゴキブリ女がぁっ!」

 突如、地の底から這い出すような声を出し、クレールがメイを睨みつける。
 父娘だけあって、矛先が向く方向は同じらしい。

「一体、なんと言ってライガ様を誑かしたの! 何故、ライガ様がお前ごときに!」

 先程まで縮こまって震えていたかと思えば、急にメイに向かって暴言を吐く。
 彼女の行動の一貫性のなさに、俺は僅かな違和感を覚えた。

「なんとか言ったらどうなのよ! いつもいつも他人の陰に隠れてばっかりで、守られるだけのくだらない女のくせに! どうしてお前なの?」

 クレールは激しく髪を振り乱しながら叫ぶ。

「殺してやる! 何度だって、私がこのゴキブリ女を駆除してやるわ! ライガ様が目を覚まして下さるまで!」

 叫びながら、彼女は痛みに醜く顔を歪めて茨から這い出ようとした。
 そんな中、カミーユが、怒り狂う令嬢に近づいて行く。

「ねえクレール、アンタちょっと落ち着きなよ?」
「何よ! あなたには関係ない話でしょう!」
「ライガ様とメイちゃんが婚約したことが嫌だったんだよね。アンタはライガ様が好きなんでしょう?」
「国王派の刺青女には関係ない話よ!」

 クレールの矛先が、メイからカミーユに切り替わった。

「ライガ様に振られたの?」
「煩い! 煩い!」

 クレールは頭を振り、大きな声で叫んでいる。
 対するカミーユは、冷静だ。

「彼に気持ちを告げた?」
「貴女に私の気持ちなんて分かってたまるものですか! 顔さえ、名前さえも覚えて頂けない! 話す機会も与えられず、いつも鬱陶しげに振り払われるばかりで……近づく事さえ出来ない! こんな状態で告白なんて出来る訳ないでしょう!」
「なのに、いつの間にかメイちゃんとライガ様が婚約してしまったと……」
「そうよ! 私の方が絶対に彼に相応しいのに! 許さないわ、ゴキブリ女! たまたま仕事でライガ様の近くに配属されたってだけなのに! だからお父様に話したのよ、お父様の策略に私を使ってと……」
「クレールはティト伯爵の陰謀を始めから知っていたということ?」
「いいえ、ある人が私に教えてくれたの。父が国王の失脚を目論んでいて、近々実行に移そうとしているって。お父様に私の話を告げたら、それは良い考えだと喜んで下さったわ! お父様は権力を手に入れられるし、私はライガ様を手に入れられる!」

 クレール親子は、何者かに利用されていたということだろうか。
 しかし、彼女がこの件について、それ以上話を続けることはなかった。
 途中で、ライガが口出ししてきたからだ……

「それで、俺がお前を愛するとでも思ったのか? 馬鹿げた話だ」
「そんな恐れ多いこと、考えていません! でも、近くにいれば話す機会だって出来るし、少しは……」
「フン、くだらない。そんなことは一生あり得ない」

 好意を抱いていた相手からの冷たい言葉に、クレールの大きな瞳が零れ落ちそうなくらいに、大きく目が見開かれている。

「何故、どうしてその女なのですか……私の方が」

 先程までの勢いが嘘のように、急激にクレールの言葉が弱くなっていく。
 彼女の目は、空ろだ。

「もしかして……」

 そう呟いたカミーユが、クレールに更に近づいた。
 彼女はクレールの首の辺りを観察すると、華奢な指で自らの桜色の口元を覆う。

「酷い……誰がこんなことを」
「どうしたの、お姉様?」

 離れた場所から、メイが心配そうにカミーユにそう尋ねた。
 こんな恐ろしい目に遭わされてまで、彼女はクレールのことを気に掛けているようだ。お人好しにも程がある。
 カミーユも、メイも……恐ろしく他人に甘い。
 きっと、ライガも婚約者のことが気が気でないだろう。

「おそらく、クレールは禁術を掛けられていると思う」
「何ですって!」

 事の重大さに気付いたメイが、悲鳴のような声を上げた。

 禁術とは、普通の魔法ではなく、精神系に作用する類いの魔法だ。
 この国では法律で使用を禁じられている。
 ただ、尋問官のような職は、自白を促す魔法のみ使用許可が出されていた。

「クレールに掛けられているのは、精神に作用する魔法で……主に、憎悪の感情を増幅させるものだよ。大昔の戦場で、兵士達の士気を上げるのに使われていたとされる魔法だけれど、現在はその非道徳性から使用を禁じられていて……」

 カミーユの説明の最中に、殿下の声が割り込む。

「どうして、カミーユが禁術の事を知っているかはさておいて。そんな魔法を易々と使ってしまうような人物がいることは由々しき事態だね」
「……ソウデスネ」

 俺は、殿下の言葉に片手で顔を覆った。
 その可能性には思い当たっていたが……やはりか。

 カミーユは、無断で禁術書を読んだことがあるようだ。
 禁術についての本は厳重に管理されており、王宮の書庫と学園の書庫の閲覧禁止の棚にしか置かれていないのに……

「この禁術なら、私でも解除は出来ます……が、もう一個、私にも分からない術が禁術の上から施されています。そちらが何か分からないことには、うっかり解いて良いものか……」
「それは困ったな……カミーユ。あとで禁断魔法書の閲覧許可を出すから、一通り調べて見てくれる? 伯爵と令嬢は、ここで捕えて城へ連行するよ」
「え、いいの!? かしこまりました!!」

 堂々と閲覧禁止の魔法書が読めることになって、カミーユは密かに嬉しそうな顔をしている。
 対するクレールは、その間も虚ろな表情を続けていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつもりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。