ある日、ぶりっ子悪役令嬢になりまして。

桜あげは

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番外編

ゲームの中の悪役令嬢(ハートのQ【裏】)

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 ゲーム版「カミーユがロイスに執着し始めるまで」


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 冬から春へ、季節が移り変わろうとしていたある日。

 かねてより、自分に一向に興味を示さない父に憤慨したカミーユは、仕事向かう彼の馬車の荷台にこっそり乗り込んでいた。
 彼女は年の割に頭の発達が早く、行動力に溢れた子供だったのだ。

「こうなったら、お父様を徹底的に困らせてやるわ!」

 そうして、カミーユは一人で父の職場……城へとやって来たのである。
 無事に城へと辿り着いたものの……
 荷台から出るのに苦労したカミーユは、気付けば父を見失っていた。

「ま、まあいいわ。誰かに聞けば良いものね!」

 馬車から降りたカミーユの興味は、いなくなった父親よりも、城の綺麗な庭に向けられる。
 侯爵邸よりも数段広い場所に、幼いカミーユの好奇心は疼いた。

「ちょっと寄り道くらい、大丈夫よ」

 自分に言い訳をしつつ、カミーユは無断で庭に足を踏み入れる。

 そして、その場所で、彼女は一人の男の子に出会った。
 カミーユは、しばし立ち止まり、子供に見入る。

「綺麗な子」

 金色の頭に碧色の瞳を持つその子供は、物語に出てくる天使のようだった。

「年は、私と同じくらいかしら。ねえ、あなた! そこで何をしているの?」

 男の子は、花の咲きかけている花壇の縁にしゃがみ込み、一人で空を眺めている。
 急に自分に掛けられたカミーユの声にハッと我に返ったその子は、慌てて周囲をキョロキョロと見回した。

「ここよ。こっちよ」

 物陰からヒョッコリと顔を出したカミーユに、男の子は碧色の瞳を丸くする。

「君は、誰? 花の妖精なの?」
「花の妖精ですって!?」

 カミーユは、驚いてラズベリー色の目を瞬かせた。
 彼の言葉を嬉しく思ってしまう。
 孤独に育ったカミーユは、今まで他人に興味を持ってもらえる機会がなかったのだ。

「私は、カミーユ・ロードライトよ! あなたは?」
「僕!? ロイス・ガーネット……だけど」
「そうなの。どこかで聞いた名前ね。まあいいわ、少し私とお話ししない?」
「うん、いいよ」

 広い王宮の庭の片隅で、カミーユとロイスは他愛もない話に花を咲かせた。
 同い年の子供と話す機会のなかった二人は、すぐに打ち解けて仲良くなる。

 ロイスも、この年代にしては頭の回転が速い子供だった。
 好きな食べ物の話、お気に入りの持ち物の話、過去の悪戯武勇伝など、話題は山ほどある。

「カミーユ、そんな悪戯ばかりして大丈夫なの? 怒られない?」
「平気よ! お父様は、私なんてどうでもいいの。使用人も、私のことを我が儘な子供だと厄介がっているわ。お母様はいないし」
「シャルルは、乳母も置いていないって噂だったけど……本当だったんだ」

 ロイスの言葉に、カミーユはキョトンとした顔で首を傾げた。

「ウバって何? 食べ物?」
「母親代わりの人間のこと。僕にも乳母が二人いたんだよ? どっちも殺されちゃったけどね……だから、この間侍従のアンリに『もういらない』って言った」

 二人は、子供にしては重い話題で仲良く盛り上がっている。

「ふーん。でも、私はウバに興味あるわ。お父様に頼めばウバを買ってもらえるかしら?」
「どうだろうね? カミーユは、乳母が欲しいの?」

 ロイスにそう聞かれたカミーユは、少し考え込んでしまった。
 もし、今、ウバとやらが現れても、父の興味が自分に向く可能性は限りなく低いように思える。

「分からない。ウバが来ても、何も変わらないかもしれない。お父様は、私なんてどうでもいいんだもの。ところで、ロイスのお父様はどんな人? 優しいの?」
「優しくないよ。仕事が忙しいらしくて、あまり会わないし」
「そうなの。私と一緒ね」

 カミーユは、ロイスに対して親近感を持った。
 ロイスならば、自分を理解してくれる。自分を受け入れてくれる。

 孤独なカミーユが、同じく孤独なロイスに執着し始めた瞬間だった。


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