侯爵様に婚約破棄されたのですが、どうやら私と王太子が幼馴染だったことは知らなかったようですね?

ルイス

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55話 対談

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 ついにこの時が来た……エドモンド・デューイ公爵との対談。以前はエドモンド様の屋敷に私とフューリが向かった形になっていたけど、今回は違う。

 宮殿内にある会議室を使う予定になっていた。お互いに、対等な話し合いをするための場でもある。宮殿内の会議室を使うということで、やや、フューリに有利な条件ではあるけれど。

 代わりに国王陛下などの参戦はしないことを、エドモンド様には伝えていた。



 約束の日が訪れていた……もちろん、エドモンド様にも日取りは伝えている。私とフューリ、ダンテ兄さま達は早めに会議室に到着していた。

「それでは、私はエドモンド様を迎える準備をして参ります」

「よろしく頼む、ダンテ殿」

「畏まりました、王太子殿下」


 ダンテ兄さまは軽く礼をすると、護衛の数名と共に会議室から出て行った。


「ねえ、フューリ」

「どうしたんだ、レオーネ?」

「ダンテ兄さまがエドモンド様を迎える立場になるなんて……なんだか不思議ね」

「そうだな、エドモンド・デューイも同じように思うだろう」


 ダンテ兄さまの地位はあくまでも伯爵でしかない。通常ならば、公爵であるエドモンド様を迎え、この会議室に連れて来るには、身分が低いと言える。

 しかも今回は、エドモンド様を糾弾する場面に呼び出すわけだから……猶更、エドモンド様のプライドを傷付けるだろう。フューリにはそういった狙いもあったのだ。

「フューリ……はあ、あなたはやっぱり凄いわ」

「ありがとう、レオーネ。君にそう言ってもらえると、とても嬉しいよ」

「もう……」


 わざとらしく喜びを表現しているフューリに、私は笑顔が出てしまっていた。彼はエドモンド様との対談を楽しみにしている節がある。いえ、楽しみにしているという言葉が御幣があるかもしれないけど。楽しんでいるのは確かだと思えた。


「フューリ……なんだか、楽しんでいない?」

「楽しんでいるのとは違うさ。エドモンド・デューイがどういう言い訳を用意してくるのか……それについては、楽しみではあるけど」

「それを楽しんでいると言うんだけど……」

 やっぱりフューリは楽しんでいた。まあ、それでこそ次代を築く王太子殿下と呼べるのかもしれない。国民を導くにはこれくらいの度量は必須なんだと思う。エドモンド様程度が何をしようとも動じない鋼の精神と、その状況を楽しめる柔軟さ……どちらも統治には必要なことだと思うから。

 私は頭を抱えながらも、フューリの頼もしさには素直に惹かれていた。私はこの人を好きになって正解だった……今では、心からそう思っている。まだ、身体の関係には至っていないけど……フューリとは一生を添い遂げたいという強い想いがあった。


「それにしても……遅いな、エドモンドは……何をしているんだ?」

「そういえばそうね……」


 そろそろ、予定していた対談の時間になっている。こういった重要な対談で遅刻なんてしたら、それだけで印象が悪くなるのは、エドモンド様なら分かっているはずなのに。

 おかしい……なんだか、嫌な予感がしてしまう。

 と、その直後、ダンテ兄さまが急いで会議室に入ってきた。

「フューリ王太子殿下! 大変でございます!」

「どうした? なにがあったのだ?」


 ダンテ兄さまの血相を変えた表情を見て、私は嫌な予感が的中したことを感じ取った。そして、兄さまから放たれた言葉は……。

「エドモンド・デューイ公爵はここには来ません……! どうやら首都の中心で、大規模な演説を実施するようです!」

「なんだと……!?」


 私は予想していなかった事態に度肝を抜かされた気分だった。おそらくはフューリも同じ気持ちだったのだと思う。

「演説だと……?」

「左様でございます……! 如何いたしましょうか!?」

 エドモンド様の強硬策と言えばいいのか……まともに対談したのでは、勝ち目がないと思っての行為だろう。ただ、そんな強硬策に出るということは、向こうも余裕がないということだ……そこに付け入る隙があると、私は確信していた。
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