侯爵様に婚約破棄されたのですが、どうやら私と王太子が幼馴染だったことは知らなかったようですね?

ルイス

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54話 エドモンド公爵の目的

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(エドモンド公爵視点)


「どうか……状況は大体吞み込めた。ご苦労だったな、カリス」

「いえ……とんでもないですわ。それにしてもあなた……」

「どうした?」

 私は妻であり、デューイ公爵家の正規の血筋である彼女に問いかけた。言わんとしていることは分かっているが、彼女の口から直接聞こうと思ったのだ。

「近いうちに王太子殿下がいらっしゃるわ。大丈夫なの?」

「そのことか……お前が心配する必要はない」


 やはりそのことだったか……しかし、準備は進めている。フューリ王太子殿下が来ようとも問題はない。


「心配するな、カリスよ。私を信じていれば良いのだ」

「ですが……ビクティム侯爵は捕縛されたと聞きましたけど? とても、その事実を覆せるとは思えないわ」

「確かにビクティムの件は失態だったが……私の方でも、王太子殿下の失態を掴んでいる」

「王太子殿下の失態……ですか?」


 カリスは首を傾げて質問をしていた。よく分かっていないようだ。

「その通りだ。実はフューリ王太子殿下は、懇意にしている噂のレオーネ嬢と親しくてな」

「この前、一緒に来ていましたね」

「うむ、そうだな。あの二人は貴族街で何度かデートを重ねている仲なのだ」

「まあ! 正式に婚約をしているわけでもないのに……?」

「そういうことになるな」


 レオーネ・ルヴィンス伯爵令嬢とフューリ・オルカスト王太子殿下の関係は、貴族の間では割と有名だ。それを知らないとなると……しまった、少しカリスを箱入りにし過ぎたかもしれん。彼女は優秀ではあるが、室内での仕事を頼んでいたからな。あまり、外での情報が入りにくくしてしまっていたか。


「あの二人は……宿で一夜を過ごしたという情報もある」

「ま、まあ……! そんなことが……! 本当なの?」

「うむ……確かな筋からの情報だ」


 私に味方をしてくれる貴族は多い。こういった情報はすぐに仕入れることが可能なのだ。ふはははは、フューリ王子殿下。どうやら、詰めが甘かったようですな。

「それをネタにすれば……一気に攻勢に出ることが可能だろう。私の目的である新国家の樹立……それが見えてくるというものだ」

 反逆に関しては後ろめたく思っている家系も多い。しかし、王太子殿下の不貞が明るみになれば話は違ってくる。不貞というにはやや弱い事実ではあるが……フリーの立場である男女が、結婚前にそういう関係になっただけだからな。

 現にビクティムなどは、婚前交渉など当たり前のようにしていたようだし。レオーネ嬢は断っていたらしいが。

 だが世の中には、清廉潔白を望む貴族だって居る。そういう連中を味方に付ければ、私の新国家樹立の成立はさらに加速するというものだ。

 ふははははっ、見ているが良いわ! 私の計画を邪魔立てする者は……例え、王族であったとしても容赦などしない。


「でもあなた……本当に大丈夫なんですの? 新国家の樹立宣言だなんて……完全に反逆罪になってしまいますのよ?」

「以前から考えていたことではないか」

「そ、それはそうかもしれませんが……でも、私はそこまでしてトップになりたいとは」

「私達は何もトップになることが目的ではないだろう? お前も今の王族には不満があるのではないのか?」

「それは……」

「これは貴族至上主義社会を生み出す為の戦いなのだ。今後、オルカスト王国はフューリ王太子殿下を中心として、融和政策を実施していくだろう」


 カリスもその意見には頷いていた。そう……だからこそ、私達は動き出さなければならない。国民と触れ合い、発展していく国家など、ただの詭弁だ。上に立つ者は常に毅然とした態度を維持しなければならない……国民から税金を取り立て、逆らう者には容赦しないという風にだ。

 現在の王族と私の思想……その根底は完全に違うものである。最早、分かり合える日など来るはずがなかった。
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