15 / 23
15 誕生日を祝ったことが無いといったら
しおりを挟む
アリサも似たことは考えていたらしい。
今更だけど、という言葉を添えて。
そしてその手紙に、今度はびっくりする様なことが書かれていた。
「ペット?」
母の元に、どうやら瓶と共に東洋から少年だか青年だか判らない男が送られてきたのだという。
*
「ペット、ですか」
「人身売買に関しては、まだ確固とした法ができて居ないですからねえ。とは言え道徳的には宜しくない」
オラルフさんは言う。
「ですが、これが向こうの土地の人間だとするとまた話が別なんですね」
「と言うと?」
「本国の子供の売買よりいい加減になりますね。当然ながら」
「まあ違法だ、という雰囲気はあるんだけどね」
「で、ペットって何するんですか」
そう私が尋ねると、二人は顔を見合わせた。
何だか話しにくそうなことなのか。
「あー…… ミュゼットさん。相変わらず男爵はそうそう帰って来ないってアリサさん言ってましたかね」
「え? ええ」
いや、それ以前に母のもとに男爵が訪れること自体あまり無かったんじゃないか。
だからこそ苛立って私を追い出そうとしたのか。
相変わらずその辺りは判らないのだけど。
「何というか…… 女性の元にそういう少年だか青年だかのペットが送り込まれた場合、それはまず、まあ、閨ですね」
「閨」
「夫人は今おいくつですか?」
「私が今十五、六だから…… 三十代であることは確かだと思うけど」
でも私は母の誕生日を知らない。
これが奇妙だ、ということは、エリーゼ様のところで知った。
家族の誕生日を皆知っていて、祝っているということに私は驚いた。
私は祝ったことも祝われたこともない。
それは男爵が私を娘と認めていた時も、その前も。
母は私の誕生日を祝わなかったし、私も母の誕生日も正確な歳も知らない。
そう、エリーゼ様のところで、
「もうじきこの子のお誕生日だから、何をプレゼントしようか考えているの」
そううきうきと言われた時、まず意味がわからなかった。
「誕生日って、生まれた日のことですよね」
「そう。それが?」
「何故プレゼントを?」
「え?」
その時エリーゼ様の表情が露骨に曇った。
「ちょ、ちょっと言っている意味が判らないわ」
「え? だから、誕生日にプレゼントを何故するのか、と」
「いや、それはするものでしょう? ……って、貴女、まさか」
唐突にそこでエリーゼ様の視線が可哀想なものを見る様なものになった。
「お誕生日にお祝いをされない…… の?」
「するんですか?」
使用人達の間で時々何か贈り合っていた…… かもしれない。
でもあの二年は何かと忙しなくて、何かの祝日だったかな、と思った程度だった。
アリサはアリサで、誕生日はそもそも母親の命日だ、ということだったから祝われたことは無かったのだろう。
「大事な人が生まれた日だもの。そういう時にはお祝いをするの。そして欲しがっているものを考えて贈り物をしたり……」
そこまで言って、エリーゼ様の目にふと涙が浮かんでいたのを思い出した。
いい人だ。
今更だけど、という言葉を添えて。
そしてその手紙に、今度はびっくりする様なことが書かれていた。
「ペット?」
母の元に、どうやら瓶と共に東洋から少年だか青年だか判らない男が送られてきたのだという。
*
「ペット、ですか」
「人身売買に関しては、まだ確固とした法ができて居ないですからねえ。とは言え道徳的には宜しくない」
オラルフさんは言う。
「ですが、これが向こうの土地の人間だとするとまた話が別なんですね」
「と言うと?」
「本国の子供の売買よりいい加減になりますね。当然ながら」
「まあ違法だ、という雰囲気はあるんだけどね」
「で、ペットって何するんですか」
そう私が尋ねると、二人は顔を見合わせた。
何だか話しにくそうなことなのか。
「あー…… ミュゼットさん。相変わらず男爵はそうそう帰って来ないってアリサさん言ってましたかね」
「え? ええ」
いや、それ以前に母のもとに男爵が訪れること自体あまり無かったんじゃないか。
だからこそ苛立って私を追い出そうとしたのか。
相変わらずその辺りは判らないのだけど。
「何というか…… 女性の元にそういう少年だか青年だかのペットが送り込まれた場合、それはまず、まあ、閨ですね」
「閨」
「夫人は今おいくつですか?」
「私が今十五、六だから…… 三十代であることは確かだと思うけど」
でも私は母の誕生日を知らない。
これが奇妙だ、ということは、エリーゼ様のところで知った。
家族の誕生日を皆知っていて、祝っているということに私は驚いた。
私は祝ったことも祝われたこともない。
それは男爵が私を娘と認めていた時も、その前も。
母は私の誕生日を祝わなかったし、私も母の誕生日も正確な歳も知らない。
そう、エリーゼ様のところで、
「もうじきこの子のお誕生日だから、何をプレゼントしようか考えているの」
そううきうきと言われた時、まず意味がわからなかった。
「誕生日って、生まれた日のことですよね」
「そう。それが?」
「何故プレゼントを?」
「え?」
その時エリーゼ様の表情が露骨に曇った。
「ちょ、ちょっと言っている意味が判らないわ」
「え? だから、誕生日にプレゼントを何故するのか、と」
「いや、それはするものでしょう? ……って、貴女、まさか」
唐突にそこでエリーゼ様の視線が可哀想なものを見る様なものになった。
「お誕生日にお祝いをされない…… の?」
「するんですか?」
使用人達の間で時々何か贈り合っていた…… かもしれない。
でもあの二年は何かと忙しなくて、何かの祝日だったかな、と思った程度だった。
アリサはアリサで、誕生日はそもそも母親の命日だ、ということだったから祝われたことは無かったのだろう。
「大事な人が生まれた日だもの。そういう時にはお祝いをするの。そして欲しがっているものを考えて贈り物をしたり……」
そこまで言って、エリーゼ様の目にふと涙が浮かんでいたのを思い出した。
いい人だ。
11
あなたにおすすめの小説
透明な貴方
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
政略結婚の両親は、私が生まれてから離縁した。
私の名は、マーシャ・フャルム・ククルス。
ククルス公爵家の一人娘。
父ククルス公爵は仕事人間で、殆ど家には帰って来ない。母は既に年下の伯爵と再婚し、伯爵夫人として暮らしているらしい。
複雑な環境で育つマーシャの家庭には、秘密があった。
(カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています)
犠牲になるのは、妹である私
木山楽斗
恋愛
男爵家の令嬢であるソフィーナは、父親から冷遇されていた。彼女は溺愛されている双子の姉の陰とみなされており、個人として認められていなかったのだ。
ソフィーナはある時、姉に代わって悪名高きボルガン公爵の元に嫁ぐことになった。
好色家として有名な彼は、離婚を繰り返しており隠し子もいる。そんな彼の元に嫁げば幸せなどないとわかっていつつも、彼女は家のために犠牲になると決めたのだった。
婚約者となってボルガン公爵家の屋敷に赴いたソフィーナだったが、彼女はそこでとある騒ぎに巻き込まれることになった。
ボルガン公爵の子供達は、彼の横暴な振る舞いに耐えかねて、公爵家の改革に取り掛かっていたのである。
結果として、ボルガン公爵はその力を失った。ソフィーナは彼に弄ばれることなく、彼の子供達と良好な関係を築くことに成功したのである。
さらにソフィーナの実家でも、同じように改革が起こっていた。彼女を冷遇する父親が、その力を失っていたのである。
妹のために犠牲になることを姉だから仕方ないで片付けないでください。
木山楽斗
恋愛
妹のリオーラは、幼い頃は病弱であった。両親はそんな妹を心配して、いつも甘やかしていた。
それはリオーラが健康体になってからも、続いていた。お医者様の言葉も聞かず、リオーラは病弱であると思い込んでいるのだ。
リオーラは、姉である私のことを侮っていた。
彼女は両親にわがままを言い、犠牲になるのはいつも私だった。妹はいつしか、私を苦しめることに重きを置くようになっていたのだ。
ある時私は、妹のわがままによって舞踏会に無理な日程で参加することになった。
そこで私は、クロード殿下と出会う。彼との出会いは、私の現状を変えていくことになるのだった。
生まれたことが間違いとまで言っておいて、今更擦り寄ろうなんて許される訳ないではありませんか。
木山楽斗
恋愛
伯父である子爵の元で、ルシェーラは苦しい生活を送っていた。
父親が不明の子ということもあって、彼女は伯母やいとこの令嬢から虐げられて、生きてきたのだ。
ルシェーラの唯一の味方は、子爵令息であるロナードだけだった。彼は家族の非道に心を痛めており、ルシェーラのことを気遣っていた。
そんな彼が子爵家を継ぐまで、自身の生活は変わらない。ルシェーラはずっとそう思っていた。
しかしある時、彼女が亡き王弟の娘であることが判明する。王位継承戦において負けて命を落とした彼は、ルシェーラを忘れ形見として残していたのだ。
王家の方針が当時とは変わったこともあって、ルシェーラは王族の一員として認められることになった。
すると彼女の周りで変化が起こった。今まで自分を虐げていた伯父や伯母やいとこの令嬢が、態度を一変させたのである。
それはルシェーラにとって、到底許せることではなかった。彼女は王家に子爵家であった今までのことを告げて、然るべき罰を与えるのだった。
婚約者を取り替えて欲しいと妹に言われました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ポーレット伯爵家の一人娘レティシア。レティシアの母が亡くなってすぐに父は後妻と娘ヘザーを屋敷に迎え入れた。
将来伯爵家を継ぐことになっているレティシアに、縁談が持ち上がる。相手は伯爵家の次男ジョナス。美しい青年ジョナスは顔合わせの日にヘザーを見て顔を赤くする。
レティシアとジョナスの縁談は一旦まとまったが、男爵との縁談を嫌がったヘザーのため義母が婚約者の交換を提案する……。
義妹がいつの間にか婚約者に躾けられていた件について抗議させてください
Ruhuna
ファンタジー
義妹の印象
・我儘
・自己中心
・人のものを盗る
・楽観的
・・・・だったはず。
気付いたら義妹は人が変わったように大人しくなっていました。
義妹のことに関して抗議したいことがあります。義妹の婚約者殿。
*大公殿下に結婚したら実は姉が私を呪っていたらしい、の最後に登場したアマリリスのお話になります。
この作品だけでも楽しめますが、ぜひ前作もお読みいただければ嬉しいです。
4/22 完結予定
〜attention〜
*誤字脱字は気をつけておりますが、見落としがある場合もあります。どうか寛大なお心でお読み下さい
*話の矛盾点など多々あると思います。ゆるふわ設定ですのでご了承ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる