42 / 89
第三章
開拓
しおりを挟む
耳に増幅魔法をかけ、魔物の鳴き声を探る。いくつかの声の中に、コウ特有の「マ~」という声が聞こえた。
「やった、ビンゴ。島のどこかにはいるみたい。さっきの魔物も食べられるかもしれないし、食料は大丈夫そう」
リルは森の端、海がよく見える場所の地面を魔法で平らにさせた。そこに魔法袋から取り出した板と並べていく。
「袋があれば木の運搬もらくちん。魔法様様だ」
せっせと別荘を建てていくが、無人島なのでたまに魔物の気配がするだけで人の声は無い。静かな時間に家造りが捗る。
「これこれ、これを求めていた。でも、おひとり様がしたいだけで人と関わりたくないわけじゃないから、たまには誰かと会話するくらいならありかな。アミル様、私のこと友だちだって思ってくれているみたいだし。ルッツ様は……まあ、たまになら許そう」
ルッツはやたらと声が大きいだけで、粗暴な振る舞いは無かった。魔法士の件だって、彼が本気になれば無理やりリルを連れて行くことだってできたはずだ。それをしなかったのは彼の優しさあってのことだろう。
一人で生きていきたい気持ちは今も変わらない。魔法士と呼ばれるのはいいが、王宮魔法士にはならない。しかし、せっかく生まれ変わったのだ。周囲の人間と関わりを持ってたまには笑い合うのもいい。
「何をするのも自分の自由。これが一番」
家の枠組みと屋根まで出来上がったところで、部屋のど真ん中に寝転んだ。一人と一匹用の別荘なので、ワンルームの小さなものだ。そこがまた秘密基地みたいで良い。
「トイレは消滅魔法でいい。泊まる予定は無いから、お風呂も無し。あとはドアと窓、ベッドだけ用意すれば完璧。最高」
何も無い、誰もいない小島に一人。そしてこじんまりとした部屋。まだ完成してもいないというのにどんどん気分が高揚していく。このままここで寝続けたい。
「いやいや、ダメだ。さすがに」
今寝てしまうと、さきほどの魔物が現れたら一撃で家が壊されてしまう。この島はいつもの山と違って狂暴な魔物がいるのだから。
あのような魔物を目の前にすると、異世界で暮らしている実感が今さらながら湧いてくる。ウォルフを最初に手懐けたため、魔物は可愛らしいものという認識が心のどこかで根付いていた。
「せっかくだから、この島を開拓してみようかな」
別荘だけでも満足だが、誰もいないのなら島自体を自分の家にしたい。もしも権利関係で契約に金がいるのなら、その時はアミルからもらった宝石をありがたく使わせてもらおう。リルはドアと窓を完成させ、鼻歌を歌いながら別荘を出た。
「ここは暖かいなぁ。半袖でも暑いくらい。山も別に寒くないけど、南へ行くとこんなに気温が違うんだ」
サイと住んでいた山も今の山も、年間を通して前世よりやや涼しい。はっきりした四季はなく、肌寒い時期とやや暖かい時期が交互にやってくる。それはそれで過ごしやすいのだが、野菜や果物などを育てるには難しいことも多いだろう。
そこで役立つのが魔法だ。魔法士が豊富な街であれば、農業も捗るにちがいない。小さな範囲での温度を操る魔法であれば、初級魔法士でも可能だ。魔法石に熱や氷を閉じ込めることもできる。それらが一般に売られているのかは定かではないが。
「ルッツ様たち曰く、王都は野菜が豊富とは言えないんだよね。単純に農業が盛んじゃないのかなぁ。それとも、そもそもこの世界の食物の数が多くないとか」
十五年の人生の中、世の中を旅した経験も無く、今リルに圧倒的に足りないのはこの世界の知識だった。引きこもりスローライフを楽しむだけならそこまで必要無いかもしれないが、いったいいつまでそれを行えるのか分からない。いつかの時のために知識を得ておくのも手だ。
「とりあえずは地図。それがあれば、新しい土地を探す時に飛び回らなくて済む。島の開拓が終わったら地図を買いに行こう」
「やった、ビンゴ。島のどこかにはいるみたい。さっきの魔物も食べられるかもしれないし、食料は大丈夫そう」
リルは森の端、海がよく見える場所の地面を魔法で平らにさせた。そこに魔法袋から取り出した板と並べていく。
「袋があれば木の運搬もらくちん。魔法様様だ」
せっせと別荘を建てていくが、無人島なのでたまに魔物の気配がするだけで人の声は無い。静かな時間に家造りが捗る。
「これこれ、これを求めていた。でも、おひとり様がしたいだけで人と関わりたくないわけじゃないから、たまには誰かと会話するくらいならありかな。アミル様、私のこと友だちだって思ってくれているみたいだし。ルッツ様は……まあ、たまになら許そう」
ルッツはやたらと声が大きいだけで、粗暴な振る舞いは無かった。魔法士の件だって、彼が本気になれば無理やりリルを連れて行くことだってできたはずだ。それをしなかったのは彼の優しさあってのことだろう。
一人で生きていきたい気持ちは今も変わらない。魔法士と呼ばれるのはいいが、王宮魔法士にはならない。しかし、せっかく生まれ変わったのだ。周囲の人間と関わりを持ってたまには笑い合うのもいい。
「何をするのも自分の自由。これが一番」
家の枠組みと屋根まで出来上がったところで、部屋のど真ん中に寝転んだ。一人と一匹用の別荘なので、ワンルームの小さなものだ。そこがまた秘密基地みたいで良い。
「トイレは消滅魔法でいい。泊まる予定は無いから、お風呂も無し。あとはドアと窓、ベッドだけ用意すれば完璧。最高」
何も無い、誰もいない小島に一人。そしてこじんまりとした部屋。まだ完成してもいないというのにどんどん気分が高揚していく。このままここで寝続けたい。
「いやいや、ダメだ。さすがに」
今寝てしまうと、さきほどの魔物が現れたら一撃で家が壊されてしまう。この島はいつもの山と違って狂暴な魔物がいるのだから。
あのような魔物を目の前にすると、異世界で暮らしている実感が今さらながら湧いてくる。ウォルフを最初に手懐けたため、魔物は可愛らしいものという認識が心のどこかで根付いていた。
「せっかくだから、この島を開拓してみようかな」
別荘だけでも満足だが、誰もいないのなら島自体を自分の家にしたい。もしも権利関係で契約に金がいるのなら、その時はアミルからもらった宝石をありがたく使わせてもらおう。リルはドアと窓を完成させ、鼻歌を歌いながら別荘を出た。
「ここは暖かいなぁ。半袖でも暑いくらい。山も別に寒くないけど、南へ行くとこんなに気温が違うんだ」
サイと住んでいた山も今の山も、年間を通して前世よりやや涼しい。はっきりした四季はなく、肌寒い時期とやや暖かい時期が交互にやってくる。それはそれで過ごしやすいのだが、野菜や果物などを育てるには難しいことも多いだろう。
そこで役立つのが魔法だ。魔法士が豊富な街であれば、農業も捗るにちがいない。小さな範囲での温度を操る魔法であれば、初級魔法士でも可能だ。魔法石に熱や氷を閉じ込めることもできる。それらが一般に売られているのかは定かではないが。
「ルッツ様たち曰く、王都は野菜が豊富とは言えないんだよね。単純に農業が盛んじゃないのかなぁ。それとも、そもそもこの世界の食物の数が多くないとか」
十五年の人生の中、世の中を旅した経験も無く、今リルに圧倒的に足りないのはこの世界の知識だった。引きこもりスローライフを楽しむだけならそこまで必要無いかもしれないが、いったいいつまでそれを行えるのか分からない。いつかの時のために知識を得ておくのも手だ。
「とりあえずは地図。それがあれば、新しい土地を探す時に飛び回らなくて済む。島の開拓が終わったら地図を買いに行こう」
511
あなたにおすすめの小説
弁えすぎた令嬢
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。
彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。
彼女は思った。
(今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。
今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
いらない子のようなので、出ていきます。さようなら♪
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
魔力がないと決めつけられ、乳母アズメロウと共に彼女の嫁ぎ先に捨てられたラミュレン。だが乳母の夫は、想像以上の嫌な奴だった。
乳母の息子であるリュミアンもまた、実母のことを知らず、父とその愛人のいる冷たい家庭で生きていた。
そんなに邪魔なら、お望み通りに消えましょう。
(小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています)
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
転生したみたいなので異世界生活を楽しみます
さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。
誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。
感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる