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第三章
自分の意志
浜辺に沿って歩いてみたが、小島だけあって、人の足でも一時間程で一周できる広さであった。浜辺の向こうは鬱蒼とした森が茂っている。中には先ほどの魔物やコウ、他にもいくつかの鳴き声がしたので、複数の魔物が生息しているのが分かっている。
彼らの住処を全て奪うのは忍びないため、森は残しつつ、自分が楽しむ分とチョコが遊ぶ用の広場、そしてコウなどを捕らえておく場所を作ることにした。
「まずは魔物を傷つけないように、あまり生息していない場所を探さなくちゃ」
魔物を一掃するなら簡単だ。しかし、無意味な殺生は避けたい。リルが音魔法で甲高い音を響かせた。
「キィィィッ」
「グォォ」
辺りにいた魔物たちが驚いて逃げていく。これでリルから半径数十メートルの範囲を確保できた。
「オッケー、これでゆっくりできる」
木の棒を円周沿いに差し、間にも板を貼っていく。あっという間にチョコの遊び場が出来上がった。端の方にはリルの休憩用の椅子も用意した。その上にはクッションを置いた。クッションの材料である綿が無いため、中には服を敷き詰めている。
「綿もどこかで調達した方がよさそう。クッションはいくらでもあっていいからね。私がいつでもどこでも休めるように」
特にこだわりのないリルだが、体を休めるための家具は別だ。硬い床で眠れば体が痛くなるし、ペラペラの布団だとやはり長時間眠れない。そんなことを考えていたら、ふとあることに思い至った。
「あれ、もしかして、綿って植物なのでは……?」
植物であれば、綿を大量生産して布団を休みたいところ全部に置くことができる。しかし、詳しく調べようとして手元にスマートフォンが無いことにも気が付いてしまった。
「ああッスマホで調べものができない! 今まで困ったことなかったんだけどなぁ。適当にのんびり生きていたから」
結局綿花がどういう植物なのか分からず、暇な時に穴を観察して、偶然見つけたら採取しようということにした。
「お金は少しあるから、とりあえずはそれで買えばいいか。綿って安かったと思うし」
チョコを出来立ての広場で遊ばせつつ、リルは椅子に腰かけ、穴を出現させて実家の近くをうろうろして観察した。
「お父さんは元気そう。なんか鶏飼いだしてる。あ、あっちはスイカの季節なんだ。いいなぁ、スイカ。でも、一人暮らしでスイカがいっぱい出来たら食べきれない」
誰にも縛られず生きていたいが、誰のことも何のことも考えず好き勝手に生きたいということではない。フードロスだって最小限に留めたい。いつだって自分たちは世界という大きな家を借りているだけだ。
「あ、小玉スイカとか。それを一人で食べられる量を作る。これだ」
残念ながら父はスイカを食べているだけで育てているわけではなかったので、近くを散策する。父の性格上、一人でスイカを丸ごと購入するとは考えにくい。おそらく、ご近所さんがおすそ分けした、もしくは父の育てた野菜とぶつぶつ交換をしたということだろう。ということは、スイカを育てている家が近くにあるはずだ。
「スイカをもらうのは泥棒だから、できれば種、無理なら葉っぱをもらおう。そこからこっちで育てればいい」
魔法書を超え、いろいろな魔法を開発しているリルにスイカの葉から小玉スイカを育てることなど簡単なものだ。サイから早起きを強制されるのは大変だったが、あの四年間は本当に意義のあるものだった。今でも感謝している。
「はは、チョコ楽しそう」
広場の中にはチョコが退屈しないよう、ジャンプ台や滑り台などの遊具も作ってみた。初めての場所だから、一匹でも高い声を上げて走り回ってみる。
「──師匠のところ行ってみようかな」
こうして一人で冷静に考える時間が出来、ふとそんなことを思った。勢いで山を飛び出したが、サイはリルの才能を買ってくれているだけだった。本気で嫌がっていることを伝えれば、推薦状も取り消してくれるかもしれない。しっかりリルの意思を伝えることが四年間育ててくれた彼女への敬意となろう。
「そう上手くいくかは分からないけど、伝えるだけ伝えてみよう」
今日か明日か、はたまた一週間後になるかは分からないが、リルはサイの山へ行くことを決めた。
彼らの住処を全て奪うのは忍びないため、森は残しつつ、自分が楽しむ分とチョコが遊ぶ用の広場、そしてコウなどを捕らえておく場所を作ることにした。
「まずは魔物を傷つけないように、あまり生息していない場所を探さなくちゃ」
魔物を一掃するなら簡単だ。しかし、無意味な殺生は避けたい。リルが音魔法で甲高い音を響かせた。
「キィィィッ」
「グォォ」
辺りにいた魔物たちが驚いて逃げていく。これでリルから半径数十メートルの範囲を確保できた。
「オッケー、これでゆっくりできる」
木の棒を円周沿いに差し、間にも板を貼っていく。あっという間にチョコの遊び場が出来上がった。端の方にはリルの休憩用の椅子も用意した。その上にはクッションを置いた。クッションの材料である綿が無いため、中には服を敷き詰めている。
「綿もどこかで調達した方がよさそう。クッションはいくらでもあっていいからね。私がいつでもどこでも休めるように」
特にこだわりのないリルだが、体を休めるための家具は別だ。硬い床で眠れば体が痛くなるし、ペラペラの布団だとやはり長時間眠れない。そんなことを考えていたら、ふとあることに思い至った。
「あれ、もしかして、綿って植物なのでは……?」
植物であれば、綿を大量生産して布団を休みたいところ全部に置くことができる。しかし、詳しく調べようとして手元にスマートフォンが無いことにも気が付いてしまった。
「ああッスマホで調べものができない! 今まで困ったことなかったんだけどなぁ。適当にのんびり生きていたから」
結局綿花がどういう植物なのか分からず、暇な時に穴を観察して、偶然見つけたら採取しようということにした。
「お金は少しあるから、とりあえずはそれで買えばいいか。綿って安かったと思うし」
チョコを出来立ての広場で遊ばせつつ、リルは椅子に腰かけ、穴を出現させて実家の近くをうろうろして観察した。
「お父さんは元気そう。なんか鶏飼いだしてる。あ、あっちはスイカの季節なんだ。いいなぁ、スイカ。でも、一人暮らしでスイカがいっぱい出来たら食べきれない」
誰にも縛られず生きていたいが、誰のことも何のことも考えず好き勝手に生きたいということではない。フードロスだって最小限に留めたい。いつだって自分たちは世界という大きな家を借りているだけだ。
「あ、小玉スイカとか。それを一人で食べられる量を作る。これだ」
残念ながら父はスイカを食べているだけで育てているわけではなかったので、近くを散策する。父の性格上、一人でスイカを丸ごと購入するとは考えにくい。おそらく、ご近所さんがおすそ分けした、もしくは父の育てた野菜とぶつぶつ交換をしたということだろう。ということは、スイカを育てている家が近くにあるはずだ。
「スイカをもらうのは泥棒だから、できれば種、無理なら葉っぱをもらおう。そこからこっちで育てればいい」
魔法書を超え、いろいろな魔法を開発しているリルにスイカの葉から小玉スイカを育てることなど簡単なものだ。サイから早起きを強制されるのは大変だったが、あの四年間は本当に意義のあるものだった。今でも感謝している。
「はは、チョコ楽しそう」
広場の中にはチョコが退屈しないよう、ジャンプ台や滑り台などの遊具も作ってみた。初めての場所だから、一匹でも高い声を上げて走り回ってみる。
「──師匠のところ行ってみようかな」
こうして一人で冷静に考える時間が出来、ふとそんなことを思った。勢いで山を飛び出したが、サイはリルの才能を買ってくれているだけだった。本気で嫌がっていることを伝えれば、推薦状も取り消してくれるかもしれない。しっかりリルの意思を伝えることが四年間育ててくれた彼女への敬意となろう。
「そう上手くいくかは分からないけど、伝えるだけ伝えてみよう」
今日か明日か、はたまた一週間後になるかは分からないが、リルはサイの山へ行くことを決めた。
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