貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

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第三章

発見

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 食器を片づけ、部屋の隅に魔法陣を一つ描いたあと、リルはチョコにまたがり空へ舞い上がった。

「とりあえず、王都からなるべく離れた方がいいよね。一回行ったところなら移動魔法を使えばいつでも行き来できるから距離は関係無いし」

 マンガのような瞬間移動は残念ながらないが、魔法陣を描いた場所であればいつでも行くことができる。魔法陣はそれを描いた者の魔力と反応するため、他人が悪用することもない。

 後ろを振り返るが、もう王都は見えない。リルは真っすぐに飛び続けた。

「山、山~……じゃなくてもいいか。コウがいれば」

 コウ以外にも食べられる魔物はいると言っていたので、肉が取れそうな魔物を探すのもいいかもしれない。

 とはいえ肉を捌いた経験の無いリルにとって、それは魔法を開発するより難しい可能性はある。

「まあ、何事も経験。やってみなくちゃね」
「ギャオ!」
「お、やる気だね。期待しているよチョコ君」

 久々の一人と一匹とあって、チョコも気合が入っている。飛ぶ速度がぐんぐん加速した。

 いくつかの山を抜け、ついにリルは大陸の端にたどり着いた。その先には海が見える。ここにやってきて初めての海だ。ずっと引きこもり生活をしていたので当然である。

 砂浜に足を付け、サクサクと右に左に歩いてみる。

「素敵。砂浜にはゴミが落ちていないし、海も透き通っていて綺麗」

 この土地がはたしてオトラ国の領土なのか、他国のものなのかは定かではないが、どうやらこの辺りは人が住み着いていないようだ。チョコも海が気になるのか、前足を海に一瞬入れては出すを繰り返している。

「そっか。山暮らしだからチョコも海初めてだよね」

 リルも腰を下ろし、足だけ海に付けてみる。思ったよりも冷たく、何故だか実家の父を思い出した。

「この辺に別荘建てようか」

 そう思いつつも、魔物らしき影は無い。風魔法で体に付いた砂を落とし、周囲の土地を空から窺う。すると、近くの小島に魔物が何匹か見えた。

「ちょっと下りてみよう」

 上から見た限りでは家や人は確認できなかった。無人島かもしれない。リルが木の枝を拾って、道なき道を枝で草を避けながら進む。

「無人島を探検ってドキドキするね」
「ガウ」

 チョコがよく分からないといった表情で返事をする。それがまた面白くて笑い声を上げながら歩いていった。

「お、お……?」

 リルとチョコに大きな影が落ちる。見上げると、三メートルはあろうかという魔物がこちらを見下ろしていた。低い唸り声に黒い硬そうな毛並みは、こちらを明らかに捕食する目つきをしている。

「なるほどなるほど」

 コウも二メートル近くになるが、あちらはどちらかというと大人しい方で、小さな魔物を食べるが人間を襲うことはまれだ。

「すごい、ウォルフよりずっと狂暴そう」
「ギュゥ」
「ごめん、チョコのことじゃないよ」
「グゥオァアアア!」

 のんきに会話をしていたら、魔物が鋭い爪で襲いかかってきた。リルが人差し指を差し出し、風魔法をかける。魔物の腹に当たり、動きが止まったところで横からチョコが体当たりをした。戦意を失った魔物がよろよろと逃げていく。リルがチョコを抱きしめた。

「チョコすごい! チョコのおかげで魔物が逃げていったよ」
「ガゥガゥ」

 誇らしげに鳴くチョコがまた愛らしい。ひとしきり褒めてから、リルは散策を続けた。

「さっきの魔物がいるからか、やっぱり人は住んでいなさそう。なら、適当なところに別荘を建てても大丈夫かな。あとはコウがいるかどうか……」
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