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嘘1
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しおりを挟む威の胸を叩き、悲鳴にならない声を上げ始めた葉人の口を、威はとっさに両手で碗の形を作って塞ぐ。
「ひ、…ぅ…っ……ひっ……」
「腹で息をして。ゆっくり…ゆっくり…」
掠れそうになる意識の端で、葉人は威の声を頼りに呼吸を繰り返す。
「ぅ……っ…、はっ…」
「………落ち着いたか?」
「…ぅん……も…大丈夫…」
階段で崩れ落ちた葉人を支えている威は、葉人の様子が落ち着いたのを確かめて少し距離をとった。
「………」
「…いつから?」
「え?」
「羽鳥と」
微かに痺れたような感覚のする手で手すりを掴み、震えないように力を込める。
「威に…関係ないよ…」
こちらをじっと見つめてくる威の顔が見れなくて、顔を伏せたまま呟くように言う。
「羽鳥のことが好きなのか?」
威に問われ、葉人はすぐに返事ができず、一呼吸分置いてうなずいた。
それを見て、威が眉間に皺を寄せる。
「…なんで嘘つくんだ」
小さな頃から傍にいた威には、葉人のその答え方が嘘を言う時の癖そのものだとすぐに分かった。
「え…」
嘘と指摘され、戸惑いながら首を振る。
「葉が嘘つくときの癖くらい…知ってるよ」
その言葉に、葉人はもう一度首を振りながら心の中で繰り返す。
光彦のことが、好きなはず…
「……何があった?保健室で葉は俺に好きだって言ったよな?」
「………あんなの…ノリだよ」
足元を見つめ、視線を合わせないままボソボソと言うのは、嘘が後ろめたいものとしている葉人らしい行動だった。
「葉が嘘ついてるかどうかわかるって言ったろ?」
「っ……」
「何があったんだ」
じりっとこちらに近寄られ、咄嗟に壁に身を寄せる。
「……ぅ…嘘ついてないとか、オレの何を知ってるんだよっ!!」
「葉?」
「ずっと一緒にいたからって、威の知らないことだってあるんだっ……」
声が上ずり、涙が滲み始めたのが恥ずかしくなって目を乱暴に擦る。
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