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しおりを挟む「っ…離せ!葉!」
「威っ止めろっ怒るなら…オレにだろっ!?威に…変なこと言った、オレに怒れよ…」
光彦を睨みつけてた目がこちらを向いたとき、その険しさにはっと息を飲んだ。
複雑な色を映した黒い瞳が、じっとこちらを見詰める。
「……こいつが好きか?」
搾り出された声に、俯きながら答えようとして止める。
顔を上げ、苦しげにこちらを見つめる威にしっかりと視線を合わせながら、一度こくりとうなずく。
「先生のことが、好きなんだ」
息を呑んだ威の瞳が、水の膜を張ってゆらりと揺れたのが見えた。
「ごめんな」
引きつらないことを祈りながら、葉人は笑みの形に顔を歪める。
「さぁ、行こうか」
涙が滲みそうになった瞬間、光彦はさっと葉人の体を引っ張り、威に背中を向ける形で歩き出す。
一歩歩き出した瞬間に胸元に雫が落ちる。
「よく、言えたな」
ぽん…と手が頭の上に下り、亜麻色の髪を優しくかき混ぜると、堰を切ったかのように涙が零れ出す。
「……っ…」
葉人の腕を掴んで足早に車に乗り込むと、光彦はそっと葉人の肩を抱き寄せ、流れ出る涙を拭う。
「…先生……オレ、やっぱり………」
続く言葉は光彦の指が唇に当てられたことによって遮られた。
「わかってるよ」
困ったように微笑む。
「でも、あいつの所には戻れないんだろ?」
「……」
「小田切の気持ちが、俺に向くまで待つから」
ぽとん…ぽとん…と、尚も流れる涙を一滴ずつ拭っていく。
涙で濡れた長い睫毛を伏せ、葉人は小さくこくりとうなずいた。
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