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携帯電話
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しおりを挟む教員用の駐車場へと向かう為に上履きから靴に履き替え、ぱっと顔を上げたときだった。
「葉…」
びくっと体が震えるのが分かる。
ゆっくり振り返ると、威が何か言いたげにこちらを見ている。顔を伏せるように下駄箱の前から退こうとすると、威の温かな手が葉人の手首を掴んだ。
「待っててくれたのか?」
どこか期待しているかのようなその声音を裏切りたくなくて戸惑っていると、さっと伸びてきた手が威の腕を振り払った。
「なっ!?」
「小田切、行こうか」
葉人の肩を抱いた光彦は、眼鏡の奥の瞳を細めて威を睨みつけた。
振り払われた手でもう一度葉人の腕を掴みながら、威は光彦を眼中に入れずに葉人に向かって喋りかける。
「ちゃんと話がしたいんだ」
「小田切から話すことはない、離せ」
挑発的な目をした光彦を睨み返し、威は低い声で言い放つ。
「あんたは関係ない」
「お前とは関係ない。だが小田切とはあるんだ」
腰に手を回し、葉人を自分の方へ引き寄せる。
「関係がな」
「あ…っあんた、生徒に手を出してるって分かってんのかよっ!」
乱暴に光彦の胸倉を掴み上げる威は、葉人が今まで見たことのないような険しい表情をしていた。
ぎりぎりと掴み上げられ、光彦は苦しげに眉を寄せる。
「威っ!」
「気付けよ、小田切はお前より俺を選んだんだ」
力で敵わないことは分かっていたが、葉人は威の固く胸倉を掴み上げる手にすがり付く。
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