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二人
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しおりを挟む「お前は、ちょっと流されやすすぎる」
「…そう…ですか?」
司郎の長い襟足に指を絡め、葉人は小さく唸る。
「そう…なんでしょうか?」
「ああ」
怒る…怒るべきなのだろうが、怒りが沸かないのはどうしようもない。
葉人は項垂れるようにして目を閉じ、指先に感じる髪を弄り続ける。
「なぁ……聞いた方がいいか?」
「え?」
昨夜もそんな事を言われたのを思い出して胸がずん…と重くなる。
「あいつと、何があった?」
振り返る司郎が、溜息交じりに強く尋ねて来た。
言うべきか…
逡巡し、ぐるぐると胸の中を巡り始めたその嫌悪感を吐き出したくてそろりと口を開く。
「…先輩は、オレがここにいるのに、隣の部屋で他の奴を抱けますか?」
「………は?」
質問に質問で返され、内容が内容だっただけに司郎は面食らって目を瞬かせる。
「なんだそりゃ」
「あ…いや………威がいる傍で、先輩に抱かれたオレが言える立場じゃないんだろうけど…でも」
形容しがたいその嫌悪感に口を閉ざす。
言葉を出せば少しは楽になるかと思ったそれは、声に出すと言う行為を得てさらに質量を増したかのように思える。
「オレが…いるのに。なんで……他の奴を家に呼ぶんだろうって」
「…俺がお人よしなら、お前を大事にしたいからだ…とか言ってやるんだろうけどな」
シュっと音がして煙草のきつい臭いが鼻を突く。
「まぁ…普通は好きな奴が隣の部屋で寝てるのに、他のを呼んでシやしないよな」
「……」
「ショックか?」
問われ、考える間もなく頷いた。
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