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まこと side
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しおりを挟む藍我はそんなちょっと媚を売るような、可愛さで許してもらおうとするような行動は好きじゃないから、怒り出すと思った。
思ったのに……藍我はしょうがないなって呆れた様子で笑い、「オレの後ろにいたらいいから」って一言で収めてしまう。
「…………僕、最初、そんな挨拶に連れて行ってもらってないんだけど」
気づけばつーんと唇が尖ってて、藍我に聞こえるか聞こえないかくらいの声量で呟いてしまっていた。
「しょうがねぇだろ。桃路は特別なんだから」
はぁー……めんどくせぇと言葉を漏らすけれど、自分が本当に面倒だったらやらないのが藍我って男だ。
だから、長年に渡って藍我を見てきた僕から言わせると本当にこれは珍しいことだった。
「 特別」
「あ、いや、変なこと考えるなよ? まぁお前なら説明しなくてもわかるだろうけど……」
「それならっ! 僕だってっ! 特別でしょ!」
「キスしたんだからっ!」の言葉は尻すぼんで、代わりにこれでもかってくらい耳が赤くなってくる。
「…………」
「…………」
僕の声に固まってしまったのは藍我と桃路だけじゃなかった。
教室が一瞬でシーンと静まり返って、居心地の悪い重苦しい空気がその場を支配する。
カタ って、誰かが消しゴムを落とした音がした途端、教室の皆は一時停止が解かれたかのように騒ぎ出した。
「この前のかぁ」
「お前らなかなかすごいの引き当てちゃったもんな」
「そりゃ、山口の特別だろ、あはははは!」
「あれ可愛かったね、手で覆って見えないようにするの。ちょっとやってみたいなってもうもん」
「まぁ、してないのバレバレだったけどな」
「写真撮る時、よく使うよねー!」
わっと上がった笑い声に押しつぶされてしまって、あれは本当にしてたんだ! って言葉が言えなくなった。
オロオロと藍我を見上げると、やっぱり視線は桃路の方へ向いていて僕には向けられていない。
「二人、キスしたの?」
「桃路! 打ち上げのゲームの時の話だ」
「文化祭だっけ? 楽しかった? 俺ももっと早く引っ越してくればよかったぁ!」
盛大に嘆く桃路の声に、皆は文化祭がどう言ったものだったかを説明し始めて……もう、僕だって特別なんだからって言葉を皆が忘れてしまっていた。
せっかく、勢い半分気になってた半分のこの質問を聞くことができたと言うのに!
結局僕は、幼馴染のままだった。
しょんぼりした自分を覗き込むように、桃路がぐいっと体を曲げて耳元に唇を寄せてくる。
「 そうしたら、ちゅーしてたのは俺だったかもしれないよ?」
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