ある日、友達とキスをした

Kokonuca.

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まこと side

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 先輩のカーディガンの袖で口元を覆いながらこそっと囁かれた言葉を、一瞬理解し損ねて「へ?」って返した。
 とっても小さな声だったから聞き間違いかなって思おうとしたけれど、イタズラをしようとする猫のようなキラキラとした……けれどきつい印象の瞳と視線が絡まる。

「ふふふ、どうかな?」

 どうかな? どうかなって、どう言うこと⁉︎
 それはっ! あの打ち上げの時に自分がいたら、藍我とキスしたのは……って言いたいってこと⁉︎

 僕はっ! 僕は……

「そんなのっクジなんだからわからないよっ」

 必死に言い返した僕の前に藍我がやってきて、桃路と物理的に距離ができて話はそこでおしまいだった。





 藍我と桃路が並んで帰っていくのを木の陰から見送って……
 二人の間に飛び込んで「一緒に帰ろう!」っていうことができるような性格なら、僕と藍我はもっと前から違う関係になれていただろう。

 あの打ち上げの日に、もしかしたらと欲を出したからバチが当たったのか……もしくはあの日に、僕の人生の幸運を全部使っちゃったから今こうなっているのか……

 泣きそうになりながらとぼとぼと歩き出す。
 いつも通る道は一番の近道だけどあの廃神社があるから通りたくなくて、仕方なくちょっと騒がしい商店街もどきの傍を通って帰ることにする。

 廃神社は廃神社で苦手だったけれど、こっちの道はこっちの道で苦手だった。
 小さいゲーム店やコンビニがあって、ちょっとやんちゃな人達がたむろっていることが多くて、昔ちょっと絡まれたことがあったからだ。
 その時は、体が大きくてつよつよ雰囲気出してる藍我がいてくれてどうにかなったけど、僕一人だけだといいカモになっていたと思う。

 だって、こうやって再び絡まれてるんだもんっ!

「だから、どこいくの? って!」
「ど……家、に、か、える」
「家に帰るだけならおサイフいらないよねー?」
「ゃ……おさいふ、は、持ってないんで」

 ちょっと背が低めの僕からしてみたら、目の前に立ちはだかる他校の生徒達は巨人も同然だ。
 壁際に囲まれるように追い詰められてしまうと、僕の姿は隠されて周りからは見えなくなってしまう。

 震える声でぴーぴー言い返してみても、多勢に無勢で言い返されて身を縮めるしかできない。

 いつもは藍我が傍に居てくれるから、こうやってカツアゲとかされることもない。
 だから、膝がガクガク震えて頭の中は真っ白だ。どうすればこのピンチを切り抜けられるのかわからなかった。

「ひぇ……っ」

 どっから出してんの⁉︎ って聞きたくなるようなドスの利いた声を至近距離で聞いて、僕は今にも漏らしてしまいそうなほど怯えてしまっていた。
 


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