14 / 71
まこと side
14
しおりを挟む先輩のカーディガンの袖で口元を覆いながらこそっと囁かれた言葉を、一瞬理解し損ねて「へ?」って返した。
とっても小さな声だったから聞き間違いかなって思おうとしたけれど、イタズラをしようとする猫のようなキラキラとした……けれどきつい印象の瞳と視線が絡まる。
「ふふふ、どうかな?」
どうかな? どうかなって、どう言うこと⁉︎
それはっ! あの打ち上げの時に自分がいたら、藍我とキスしたのは……って言いたいってこと⁉︎
僕はっ! 僕は……
「そんなのっクジなんだからわからないよっ」
必死に言い返した僕の前に藍我がやってきて、桃路と物理的に距離ができて話はそこでおしまいだった。
藍我と桃路が並んで帰っていくのを木の陰から見送って……
二人の間に飛び込んで「一緒に帰ろう!」っていうことができるような性格なら、僕と藍我はもっと前から違う関係になれていただろう。
あの打ち上げの日に、もしかしたらと欲を出したからバチが当たったのか……もしくはあの日に、僕の人生の幸運を全部使っちゃったから今こうなっているのか……
泣きそうになりながらとぼとぼと歩き出す。
いつも通る道は一番の近道だけどあの廃神社があるから通りたくなくて、仕方なくちょっと騒がしい商店街もどきの傍を通って帰ることにする。
廃神社は廃神社で苦手だったけれど、こっちの道はこっちの道で苦手だった。
小さいゲーム店やコンビニがあって、ちょっとやんちゃな人達がたむろっていることが多くて、昔ちょっと絡まれたことがあったからだ。
その時は、体が大きくてつよつよ雰囲気出してる藍我がいてくれてどうにかなったけど、僕一人だけだといいカモになっていたと思う。
だって、こうやって再び絡まれてるんだもんっ!
「だから、どこいくの? って!」
「ど……家、に、か、える」
「家に帰るだけならおサイフいらないよねー?」
「ゃ……おさいふ、は、持ってないんで」
ちょっと背が低めの僕からしてみたら、目の前に立ちはだかる他校の生徒達は巨人も同然だ。
壁際に囲まれるように追い詰められてしまうと、僕の姿は隠されて周りからは見えなくなってしまう。
震える声でぴーぴー言い返してみても、多勢に無勢で言い返されて身を縮めるしかできない。
いつもは藍我が傍に居てくれるから、こうやってカツアゲとかされることもない。
だから、膝がガクガク震えて頭の中は真っ白だ。どうすればこのピンチを切り抜けられるのかわからなかった。
「ひぇ……っ」
どっから出してんの⁉︎ って聞きたくなるようなドスの利いた声を至近距離で聞いて、僕は今にも漏らしてしまいそうなほど怯えてしまっていた。
89
あなたにおすすめの小説
両片思いの幼馴染
kouta
BL
密かに恋をしていた幼馴染から自分が嫌われていることを知って距離を取ろうとする受けと受けの突然の変化に気づいて苛々が止まらない攻めの両片思いから始まる物語。
くっついた後も色々とすれ違いながら最終的にはいつもイチャイチャしています。
めちゃくちゃハッピーエンドです。
嘘をついたのは……
hamapito
BL
――これから俺は、人生最大の嘘をつく。
幼馴染の浩輔に彼女ができたと知り、ショックを受ける悠太。
それでも想いを隠したまま、幼馴染として接する。
そんな悠太に浩輔はある「お願い」を言ってきて……。
誰がどんな嘘をついているのか。
嘘の先にあるものとはーー?
【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について
kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって……
※ムーンライトノベルズでも投稿しています
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。
失恋したのに離してくれないから友達卒業式をすることになった人たちの話
雷尾
BL
攻のトラウマ描写あります。高校生たちのお話。
主人公(受)
園山 翔(そのやまかける)
攻
城島 涼(きじまりょう)
攻の恋人
高梨 詩(たかなしうた)
《一時完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ
MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
続編執筆中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる