ある日、友達とキスをした

Kokonuca.

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まこと side

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「あれ! まこの声だ!」

 気楽そうな声が不良達の頭の上を軽やかに飛び越えてくる。
 僕はまこととかまこちゃんとかいろいろ呼ばれるけれど、この二文字だけで呼ぶのは洸平ただ一人だけだ。

「あ、あま  の、せんぱぁい!」

 人垣の中で手を懸命に伸ばして振ってみるも、僕の身長では洸平に見えてるか定かじゃなかった。
 でも、隙間から洸平の長い足が見えて、それが駆け寄ってくるのがわかったからホッと胸を撫で下ろす。

「あ゙?」

 やった! 助けが来た! って思ったのも束の間の話で、よくよく考えてみたらあんな優男風の洸平がこんな状態から僕を救出できるのかって考えたら望み薄が気がして……
 結局は身を守るように鞄をギュッと抱きしめたまま萎れるしかなかった。

「君達何してんの?」
「なん  ? っ、あ、天野、さん……」
「天野さん⁉︎ な なんっ」
「その子、誰か知ってる?」
「え⁉︎ あ、天野さんのお知り合いですか⁉︎」

 諦め切った僕の耳に、呑気な洸平の声と慌てまくる他校の皆さんの声がして……まるでモーゼのように人を割って洸平が「バァ!」って登場する。

「あ! やっぱりまこだったー! 家に帰る途中?」
「は はい っ」
「あははははは!」

 洸平が笑い出した瞬間、周りにいた人たちの雰囲気が凍って……なんだか弾けば砕けちゃうんじゃないかって感じの空気になった。

 何、これ。

 そろりと見上げた洸平は大きい人だったけれど、腕が胴につけられないくらい筋肉がついているとかそんなことはない、普通の体型の人だ。
 周りを囲う人たちにはいかにもって感じの筋肉でむちむちの人もいて、そんな人から比べたらめっちゃよわよわに見えるのに……

 この場で一番の高みから支配しているのは洸平だって、肌で理解した。

「じゃあ、一緒におうち帰ろうかぁ?」
「え⁉︎ 天野先輩の家ってこっちでしたっけ?」
「違うよー」

 はっきりとはわからないけど、いつも駅の方に帰っていくような記憶があるから、僕の家の方に行こうとしたら逆方向になってしまう。

「あのっあのっ大丈夫です!」
「どこが?」
「ど……」

 洸平の視線が僕の涙の溜まった目を見て、鞄をぎゅうぎゅうに抱きしめている腕に動いて、最後はヘソ……よりも下に動いていく。
 その視線に、思わず飛び上がりそうになったけれど、僕はその理由を墓場まで持っていかなくてはならない。

 …………怖くて、ちょっと、ちょっとだけ、本当にちょびっとだけ、おしっこ漏らしちゃった なんて。

「い、急いで帰らないと だし」
「ここでオレと仲良くしているように見せると、今後、ここを通るのが楽になると思うよ?」


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