未来の王妃として幸せを紡ぐ

林 業

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貴方を支える未来

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この国での結婚式は市民とは少々違う。
と言っても大きくは服を着替える回数が違う。
他は細々とした所作ぐらいだろう。

実家に家紋がある場合は家紋の付きの家紋の色の正装を着る。
ない場合はそれなりの良い服で。
協会へ向かう結婚式専用の馬車で向かう。
当然貴族用と市民用では違う装飾の豪華さや家紋が入っていたり、貴族用では手を振る窓が小さかったり。
護衛騎士がついたりと変わってくる。
つまりはピンキリ。

教会へ行き、教会内で身を清める。
その後、嫁ぐ側は白い文様なしの服へ着替える。
嫁がれる側は、白い文様ありの服を。
イネスはわかりやすいようにと黒い正装であったが脱いで身を清める。
そして教会の司祭たちに手伝ってもらって着替える。
フリルが可愛いパゴダスリーブと一体化しているズボンを履き、腰に布を巻いたオーバースカート。
そこから流れるように地面を長く伸びるトレーン。
それら全てに金色の刺繍が施され、上品ながらも美しくイネスの美しいラインを浮き彫りにしている。

そして父とともにバージンロードを歩く。
すでに待機して待っている父母と長兄夫婦と、次兄。
そして次兄の婚約者。
その他のお付き合いのある貴族たち。
少々高い場所に各国の来賓。

王や王妃は少々高い位置からこちらを見ており、流石に貫禄が違うと眺める。


布越しに初めて夫となる相手を見る。

王族として物語でもよく出てくる金髪に碧眼。
顔立ちは整っており、近くで見ればくらりと悩殺されそうな様子。

そっと父から腕をしたまま、父とともに臣下として頭を下げる。

王族へ嫁ぐ時独特の儀礼の一つである。

「エルトリア国の王族が一人として其方を娶らせてもらう」
その言葉を受けて、父から手を離して彼の差し出された手を取り、彼のいる壇上へと登る。

父が必死に歯を食いしばり司祭とともに椅子へと案内される。
母がまだ早いから。とハンカチを渡しながら告げている。
夫となる彼と腕を組んで共に教皇のもとへとゆっくりと向かう。
一歩一歩、お互いの歩幅を合わせるようにしっかりとゆっくりと進む。

「よい父だな」
ぼそりと王子に囁やかれ、驚いて視線だけでなんとか彼を見れば照れ臭そうなのが見える。
「知っての通り君の兄たちと文のやりとりをさせてもらっていたときから良い家族とは思っていたが、今向き合って君を幸せにしないと殺されかねない勢いだった。とても愛し、愛されているのだな」
「はい。自慢の家族なんです」
微笑みを浮かべて、そう返す。
「兄上たちはあまり手紙の内容を教えてくれませんでしたから、意地悪なところもありますけど」

そうこっそり話をすれば、王子がほっと息を吐いたように思える。
だがそれを聞く前に、教皇の前に立つ。
王子はいなかったがリハーサルのときにお世話になった人。

彼が結婚式にありがちな言葉を紡ぎだす。
この人となら大丈夫だと腕を持つ手を握り直す。


リーマンが途中で下がった気配がしたがとりあえず今は式に集中する。

「なお、この結婚に反対するものはいないか。居るならば今ここで名乗りを」
「はんた。ぐばっ」
聞き覚えのある声が聞こえて、そっと後ろを見るがそこには誰もいない。
教皇は何かを見たのか目を細めているだけ。
不思議な声にざわめく結婚式だが教皇は咳払いをすると続ける。
「それでは大樹より清酒を授かるため、盃をこちらへ」
声にざわめきは消え、渡された対になっている盃をお互いに受け取る。
王国の文様が刻まれた代々使ってきた盃を大樹へ捧げる。

大樹が音を立てて揺れて、そして大樹の葉から一枚の葉っぱが落ちる。

一枚の葉っぱは空中を舞い、二粒の雫へと変化する。
そして盃へと落ちて溢れることなく器に広がる。
その盃の水をまず一口飲む。
そして盃を交換してその中身を飲み干す。

甘く苦い清酒を夢中で飲み干す。
一気に飲み干せば彼も同時に終える。
中に残ったのは一対のリング。
それをお互いに取り、盃を司祭へと返却し、再び教皇が言葉を続ける。

「大樹のリングを交換し、近いの口づけを」



お互いに向き合い指へとそれぞれの中指に付ける。
そして彼にベールを退けてもらい、口へとキスを受ける。

それが終われば、教皇は再び話を続け、バージングロードを歩いてその場を退出する。


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