22 / 25
貴方を支える未来
8
しおりを挟む
急ぎ控室へ向かい、正装に身を包むが今度は、王家の文様が刺繍されている。
先程の結婚式と似たような物だが、今度は王家の色である朱色と、王妃となるものが代々羽織ってきたマントを付け、外に用意されている馬車に夫となるものと乗り、食事会場へ。
各々のお祝いの言葉を聞き、食事を済ませ、時々服を着替えて、ようやく夕方頃に解散となり王城へと訪れる。
明日は市民への顔を見せる日。
「終わりました」
「ようやく終わったな」
服を動きやすいものへと変えて、皇子と同じ部屋で寛がされる。
少々の話をして、休憩と軽食を取る。
そして湯呑みをして、初めて初夜となる。
「そういえば、イネス、でいいかな。君の義兄上たちから私について何か聞いたりとかは」
「兄上からですか?性格は聞いても答えてはくれませんでした。付き合えるようになったときだけだと。手紙も要約を聞かされてました」
「そ、そうか」
心底安堵しているのがわかり、何かあったのかと首を捻る。
「あ、でもリアム殿下が」
「リアムでいい」
「あ、はい。リアム様がお好きなことや本とか趣味とかお伺いしてますので、時間つぶしでよろしければお付き合いさせていただきます」
「それは楽しみだ」
満面の笑みを浮かべる。
「君が好きなことは聞いているが、せっかくだから話し合いも楽しみたい。駒遊びは好きか?」
「あまり強くはありませんがお付き合いはできます」
「じゃあ、軽食を取りながら語り合おうか」
はい。と微笑み、机を挟みながらサンドウィッチやお菓子を摘み、用意されている飲み物であるワインや紅茶で喉を潤す。
駒取り勝負が盛り上がってきた。
と言うところでドアが叩かれ、返事をすればリーマンが申し訳なさそうに入ってくる。
「おくつろぎのところ申し訳ありません。皇太子殿下、皇太子妃様」
礼儀正しく敬うリーマンに少々の寂しさを覚えつつも、何かあったのかと聞き返す。
「皇太子妃様のお父上様の領地の者が乗り込んできて」
「まさか、アーケロン?」
「はい。連れて帰るとお話を聞きません。申し訳ないのですが湯呑みの時間が少々遅れてしまいます。今しばらくお待ちください」
「今すぐ、会わせてください」
「いえ。すぐにお父上たちが連れて帰ると」
「会わせてください。先生。最後になるでしょうから言いたいことがあります」
お願いですと言えば、しょうがないですね。と甘い部分を見せて連れて行ってくれる。
「他の使用人達は平気でしょうか」
一緒に付いてきたリアムは腕に捕まってろ。と言われ、素直に従い腕を組む。
ここで下手に断り、アーケロンと恋仲だと誤解されたくないのが一番に浮かんだからである。
少々照れ臭そうな様子に可愛いと思ってしまう。
部屋へと入れば檻の中にいるアーケロン。
イネスに気づいて顔を明るくすると檻にしがみつく。
「イネス。俺と帰ろう。な。そんな暴れん坊と噂のある王子より俺と領地で暮らそう。幸せにするから。だから此処を」
リアムがイネスを見下ろしイネスは彼に近づくと頬をグーで殴る。
「幸せって、何?お前から与えられたことは」
背後に控えていたリーマンと、突然の出来事に驚くリアムは何もできずに、オロオロと見守る。
「全部、全部、怖かったんだ。嫌いな虫を渡されたことも、毒虫投げられたことも、泥を投げられたことも、川に落とされたことも、父上や母上、兄上、先生から頂いたお土産を壊されたことも。大好きな本を台無しにされたことも。全部。怖くて辛かったんだ。お前なんて嫌い。大ッ嫌い。顔も見たくない。記憶から消したい。二度と出て来ないでほしい」
一気に言い終わったイネス。
肩で息をしていればリアムがそっと背後から抱き寄せる。
「言いたいことは言えたか」
「はい。すいません。わがままいいました」
「とりあえず手の手当をしよう。そのために部屋へと戻ろう」
そう告げてイネスの肩を支えて連れていく。
とりあえずイネスをあまり怒らせないようにしようと心に誓ったリアム。
「ま、待ってくれ。謝る。謝るから行かないでくれよ」
「それと結婚式のときの声、貴方ですよね」
じろりと冷たい眼差しと声が空気を凍らせていく。
「私の晴れ舞台を壊そうとしたこと、一生、許しません。貴方を過去も未来も、記憶から消したいので二度と現れないでください」
そう告げて、イネスはリーマンを見る。
「先生が結婚式を守ってくださったんですよね。ありがとうございます」
「いえ。まさか無理矢理忍び込んでくることは思わず、あそこまで侵入を許して申し訳ありませんでした」
リーマンは頭を下げると、湯呑みの準備が整ったので手の手当と一緒にどうぞと進められる。
リーマンは息をしているのかと思うほど魂が抜けたアーケロンを見る。
同情はできないが同じように可愛い教え子の一人、イネスから嫌いとあそこまで言われたら流石に辛い。
御愁傷様と内心で唱えておく。
さらに怒らせないようにと固く固く心に誓い直す。
先程の結婚式と似たような物だが、今度は王家の色である朱色と、王妃となるものが代々羽織ってきたマントを付け、外に用意されている馬車に夫となるものと乗り、食事会場へ。
各々のお祝いの言葉を聞き、食事を済ませ、時々服を着替えて、ようやく夕方頃に解散となり王城へと訪れる。
明日は市民への顔を見せる日。
「終わりました」
「ようやく終わったな」
服を動きやすいものへと変えて、皇子と同じ部屋で寛がされる。
少々の話をして、休憩と軽食を取る。
そして湯呑みをして、初めて初夜となる。
「そういえば、イネス、でいいかな。君の義兄上たちから私について何か聞いたりとかは」
「兄上からですか?性格は聞いても答えてはくれませんでした。付き合えるようになったときだけだと。手紙も要約を聞かされてました」
「そ、そうか」
心底安堵しているのがわかり、何かあったのかと首を捻る。
「あ、でもリアム殿下が」
「リアムでいい」
「あ、はい。リアム様がお好きなことや本とか趣味とかお伺いしてますので、時間つぶしでよろしければお付き合いさせていただきます」
「それは楽しみだ」
満面の笑みを浮かべる。
「君が好きなことは聞いているが、せっかくだから話し合いも楽しみたい。駒遊びは好きか?」
「あまり強くはありませんがお付き合いはできます」
「じゃあ、軽食を取りながら語り合おうか」
はい。と微笑み、机を挟みながらサンドウィッチやお菓子を摘み、用意されている飲み物であるワインや紅茶で喉を潤す。
駒取り勝負が盛り上がってきた。
と言うところでドアが叩かれ、返事をすればリーマンが申し訳なさそうに入ってくる。
「おくつろぎのところ申し訳ありません。皇太子殿下、皇太子妃様」
礼儀正しく敬うリーマンに少々の寂しさを覚えつつも、何かあったのかと聞き返す。
「皇太子妃様のお父上様の領地の者が乗り込んできて」
「まさか、アーケロン?」
「はい。連れて帰るとお話を聞きません。申し訳ないのですが湯呑みの時間が少々遅れてしまいます。今しばらくお待ちください」
「今すぐ、会わせてください」
「いえ。すぐにお父上たちが連れて帰ると」
「会わせてください。先生。最後になるでしょうから言いたいことがあります」
お願いですと言えば、しょうがないですね。と甘い部分を見せて連れて行ってくれる。
「他の使用人達は平気でしょうか」
一緒に付いてきたリアムは腕に捕まってろ。と言われ、素直に従い腕を組む。
ここで下手に断り、アーケロンと恋仲だと誤解されたくないのが一番に浮かんだからである。
少々照れ臭そうな様子に可愛いと思ってしまう。
部屋へと入れば檻の中にいるアーケロン。
イネスに気づいて顔を明るくすると檻にしがみつく。
「イネス。俺と帰ろう。な。そんな暴れん坊と噂のある王子より俺と領地で暮らそう。幸せにするから。だから此処を」
リアムがイネスを見下ろしイネスは彼に近づくと頬をグーで殴る。
「幸せって、何?お前から与えられたことは」
背後に控えていたリーマンと、突然の出来事に驚くリアムは何もできずに、オロオロと見守る。
「全部、全部、怖かったんだ。嫌いな虫を渡されたことも、毒虫投げられたことも、泥を投げられたことも、川に落とされたことも、父上や母上、兄上、先生から頂いたお土産を壊されたことも。大好きな本を台無しにされたことも。全部。怖くて辛かったんだ。お前なんて嫌い。大ッ嫌い。顔も見たくない。記憶から消したい。二度と出て来ないでほしい」
一気に言い終わったイネス。
肩で息をしていればリアムがそっと背後から抱き寄せる。
「言いたいことは言えたか」
「はい。すいません。わがままいいました」
「とりあえず手の手当をしよう。そのために部屋へと戻ろう」
そう告げてイネスの肩を支えて連れていく。
とりあえずイネスをあまり怒らせないようにしようと心に誓ったリアム。
「ま、待ってくれ。謝る。謝るから行かないでくれよ」
「それと結婚式のときの声、貴方ですよね」
じろりと冷たい眼差しと声が空気を凍らせていく。
「私の晴れ舞台を壊そうとしたこと、一生、許しません。貴方を過去も未来も、記憶から消したいので二度と現れないでください」
そう告げて、イネスはリーマンを見る。
「先生が結婚式を守ってくださったんですよね。ありがとうございます」
「いえ。まさか無理矢理忍び込んでくることは思わず、あそこまで侵入を許して申し訳ありませんでした」
リーマンは頭を下げると、湯呑みの準備が整ったので手の手当と一緒にどうぞと進められる。
リーマンは息をしているのかと思うほど魂が抜けたアーケロンを見る。
同情はできないが同じように可愛い教え子の一人、イネスから嫌いとあそこまで言われたら流石に辛い。
御愁傷様と内心で唱えておく。
さらに怒らせないようにと固く固く心に誓い直す。
27
あなたにおすすめの小説
君の恋人
risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。
伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。
もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。
不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。
ジャスミン茶は、君のかおり
霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。
大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。
裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。
困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。
その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。
学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
魔力ゼロのポーション屋手伝い
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
15歳で測定する魔力の量によって、人生の大部分が左右されてしまう世界。
そんな世界で、運命の日を迎えたひとりの平凡な少年──リクは、抱いた淡い期待を大きく裏切られる。魔力が前代未聞のゼロと言い渡されたのだ。
深い絶望とともに頭を抱えていたとき、森でポーション屋を営んでいるというくたびれた男が声をかける。路頭に迷っていたリクは、店で手伝いをしてはどうかという彼の誘いを受けることにする。
捨てかけた夢を拾ってもらった少年と、拾った男。ふたりが絆を深めていく、ポーション屋でのお話です。
一人称おじさんくたびれ男性×魔力ゼロ以外平凡青年のBLです。
カクヨムにも載せています。(完結済み)
【完結】浮薄な文官は嘘をつく
七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。
イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。
父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。
イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。
カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。
そう、これは───
浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。
□『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。
□全17話
僕を惑わせるのは素直な君
秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。
なんの不自由もない。
5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が
全てやって居た。
そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。
「俺、再婚しようと思うんだけど……」
この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。
だが、好きになってしまったになら仕方がない。
反対する事なく母親になる人と会う事に……。
そこには兄になる青年がついていて…。
いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。
だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。
自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて
いってしまうが……。
それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。
何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる