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アレクサンドラは勇者を拒否する。
馬車の中で勇者が上に乗って叫んでくる。
目を閉じて口を手で塞ぎ体を丸めて守る。
精霊が力になってくれない今、サンムーンからもらった白銀の鱗が身を守ってくれる。
竜人族の竜化の喉元にあるという普通の鱗とは逆向きに生える鱗は生涯を共に過ごす相手に渡すという。
竜人族はこれを交換し、相手がいることを示したり、その相手の身を守るお守りになる。
そしてこの白銀の鱗には実力のあるサンムーンの鱗に精霊が加護を付与してある。
勇者相手でも一応身を守ってくれている。
勇者が無理強いをしてくるが、それでも目を固く閉じる。
腐っても勇者。
加護を殴りつけて、僅かながら、加護が打ち負けている。
「こっちを見ろよ」
加護の限界が来たのかひび割れる音、その修復の瞬間を狙ってか頬を殴られる。
「殴られたくなきゃそれを解除しろよ。俺はお前の、救世主だぞ」
それでも目を開けたくないと閉じる。
勇者なんかの言うことなんか聞かない。
開けたらまた幽閉されるかもしれない。
外から勇者を呼ぶ声。
「まぁいい。明日には魔族の国境を越えるからな。そうなったらこっちのもんだ。その加護も数人がかりで押さえ込めば」
嬉しそうに笑う彼。
外に出ると逃げれないようにと馬車に鍵をかけて野宿の準備をする。という声が聞こえてくる。
(アレク)
家族、皆を思い出して、会いたい。そう思えば思うほど喉が焼けるように痛い。
頬に熱が集まっていくのを感じつつ、サンムーンを抱きしめたいと願う。
だが勇者のために泣いてやるものかと歯を食いしばる。
今は母のときのように力ない子供ではない。
そう決意して知恵を絞り出す。
色々と考えて、勇者から逃げなきゃと馬車の窓を見る。
どうにか開かないかと触れれば、何故か窓の外を精霊が通り過ぎていく。
今のは勇者に気づかれるのを嫌がって雲隠れした精霊であると時間を置いて理解する。
今一度どこに向かったのかを探る。
窓から業者窓へ視線を動かして、発見するより先に繋ぎっぱなしの馬が嘶き、馬車が走り出す。
「っ!」
衝撃で椅子から落ちて、腕を打ち付け、痛みに歯を食いしばる。
それでもと這って外を見れば、馬が走り続けており、勇者が豆のように小さくなっていく。
お互い呆然と見ている間に完全に勇者は消え失せる。
驚きながらも御者に繋がる窓を覗けば馬を操る精霊がいる。
助けてくれたのだと気づくと同時に何故か行者の真似をする精霊が楽しそうだと思ってしまう。
しばらく走っていたかと思えば街路が見えてきて止まる。
馬車の、鍵がかかっていたはずのドアが開き、恐る恐る外に出る。
誰もいない静かな場所。
馬の荒い呼吸音が響いてくる。
夜風が頬を撫でて、頬と腕の痛みに反射的に擦る。
痛い場所を撫でながら見上げればトカゲに似た竜の群れが上空埋め尽くしている。
その竜の巨体は腕だけでアレクサンドラを支えられるほど。
夜の月明かりが竜を、彼を照らす。
月のように輝く銀の鱗。
太陽のごとく輝く金の瞳。
一番会いたかったあの人。
あぁ、綺麗だ。
あの日、地下の暗闇から救い出してくれた一筋の光。
アレクサンドラが心から惹かれた、唯一無二の愛した人。
「サンムーン」
手を伸ばして、名前を呼ぶ。
人となった、嬉しそうに、申し訳なさそうな瞳のサンムーンに抱きしめられる。
サンムーンは部隊に指示を出しながら腕の中でしがみついているアレクサンドラを抱き締める。
不安そうに昼とは違う赤い瞳がこちらを見つめてくる。
今にも泣きそうな瞳だが、涙を必死に耐える姿がいじらしい。
大丈夫だと耳元で囁き、不安を取り除く。
綺麗な瞳だと夜間しか見れないのを不満に思い、同時に緑の瞳も昼間にしか見れないのが勿体ない。
贅沢な悩みだと部下からは言われる。
どちらの色もアレクサンドラに似合って素敵だと思う。
むしろ夜の瞳の色は自分だけが堪能できる特別な色で、その色の笑顔を見ることができるのも自分だけと自負している。
そして勇者に見られたかと不安と僅かながら嫉妬する。
それに気づいたのか、アレクサンドラにずっと目を閉じてたと言われて安堵。
この瞳を危険だと言った勇者が、彼の母を間接的にだが殺した。
勇者に、人に知られるわけにはいかない。
もし知られたら、勇者が殺しに来るかもしれない。
この瞳があったから勇者が殺すのだと聞いている。
人族では知らないがとても綺麗な瞳だというのに。
アレクサンドライトの宝石のようで、いくらでも見つめていられる。
いや。自分を見る宝石のような瞳を誰にも見せなくて済む。
「どうしてくれようか」
パーティー会場で王と勇者を待っていれば何時もアレクサンドラの側を離れない精霊が急ぎ王城に飛び込んできた。
そして勇者がアレクサンドラを誘拐したとわかった瞬間、王の指示で部隊を引き連れて来た。
警告をしていたというのに勇者は強行した。
道中で倒れていた部下は精霊が死なない程度に治療してくれていたらしい。
どうやら死なないでとアレクサンドラが願ったらしい。
命拾いしたなと部下の運の良さとアレクサンドラの優しさに感謝する。
後で自慢しよう。
そして勇者は此処でとどめを刺さなければまたアレクサンドラを誘拐するだろう。
アレクサンドラ曰く勇者が右向けといえば村人は右を向くぐらいには従うのだという。
だから彼の母親は勇者の心無い言葉に殺された。
あの勇者は未熟で、今なら竜族の精鋭数人でかこめば簡単に殺せる。
だが和平を組んだばっかりでそれは戦争を誘発するだけ。
人族程度は問題ないとはいえ、アレクサンドラの同族を殺すのをためらう部下は少なくない。
何より竜人族が勇者のせいで傷つくのをアレクサンドラは嫌う。
どうしようかと悩む。
ふと、精霊がアレクサンドラに囁く。
「アレク」
アレクサンドラの赤い瞳が精霊を見る。
この精霊は確か勇者の背後にいた精霊であった。
「勇者を色々やってハイイロ?せーのー?あ、再教育して主導権を奪うことできるって言ってるけど」
「こちらに敵意はないのか?」
アレクサンドラが精霊を見る。
ハイイロやせーのと言われて考え、廃人と洗脳のことだとすぐに理解する。
あまり物騒な言葉を意図して教えたりはしていないから意味が理解できないらしい。
「神様も見守ってたけど、やばい?勇者、だから、再教育、じさない。って」
部下が持ってきてくれた濡れたタオルをアレクサンドラの腫れた頬に当てる。
こんな傷をつけた勇者を殺したい。
だが、人族を傷つけた手でアレクサンドラを抱きしめられるか、だ。
「わかった。それで手を打とう。下手に勇者を殺して国を巻き込んでも、アレクが望むとは思えないからな」
精霊がアレクサンドラに歌と彼の持つ髪の毛を代価に欲する。
アレクサンドラが切ってというので、部下から借りたナイフで髪の毛の一部を切り渡す。
ナイフを見て固く目を閉じてしがみつく姿に可愛いと頬にキスをする。
歌は成功報酬だからと言えば精霊は消える。
国へと戻るために竜化しアレクサンドラを手にのせて飛ぶ。
安心したのか道中で寝たアレクサンドラを庇いなおす。
これがあるから背中には乗せれない。
落ちても最終的に精霊が助けてくれるだろうが二度と運ぶことを許してくれないだろう。
精霊が何かを囁いてくる。
耳を澄ませば声が聞こえる。
【金髪赤目の勇者と聖女の子供、アレクサンドラ。
赤目の勇者、国家反逆の疑いで処刑される。
聖女、逃げて故郷で産んだ子供アレクサンドラ
愛し子に勇者という栄誉を奪われると恐怖した金髪黒目の勇者。
妻を慰みものにして子供アレクサンドラを処分する】
囁きを止めさせる。
そんな悲しい物語をアレクサンドラに聞かせたくない。
精霊にある程度の物語を隠してアレクサンドラに伝えるよう願う。
なんでだと聞かれたのでアレクサンドラが泣くといえば精霊が素直に言うことを聞く。
呻くアレクサンドラに急いで国へと戻る。
早く体の様子を見て、体と心の怪我を治さなければ。と。
馬車の中で勇者が上に乗って叫んでくる。
目を閉じて口を手で塞ぎ体を丸めて守る。
精霊が力になってくれない今、サンムーンからもらった白銀の鱗が身を守ってくれる。
竜人族の竜化の喉元にあるという普通の鱗とは逆向きに生える鱗は生涯を共に過ごす相手に渡すという。
竜人族はこれを交換し、相手がいることを示したり、その相手の身を守るお守りになる。
そしてこの白銀の鱗には実力のあるサンムーンの鱗に精霊が加護を付与してある。
勇者相手でも一応身を守ってくれている。
勇者が無理強いをしてくるが、それでも目を固く閉じる。
腐っても勇者。
加護を殴りつけて、僅かながら、加護が打ち負けている。
「こっちを見ろよ」
加護の限界が来たのかひび割れる音、その修復の瞬間を狙ってか頬を殴られる。
「殴られたくなきゃそれを解除しろよ。俺はお前の、救世主だぞ」
それでも目を開けたくないと閉じる。
勇者なんかの言うことなんか聞かない。
開けたらまた幽閉されるかもしれない。
外から勇者を呼ぶ声。
「まぁいい。明日には魔族の国境を越えるからな。そうなったらこっちのもんだ。その加護も数人がかりで押さえ込めば」
嬉しそうに笑う彼。
外に出ると逃げれないようにと馬車に鍵をかけて野宿の準備をする。という声が聞こえてくる。
(アレク)
家族、皆を思い出して、会いたい。そう思えば思うほど喉が焼けるように痛い。
頬に熱が集まっていくのを感じつつ、サンムーンを抱きしめたいと願う。
だが勇者のために泣いてやるものかと歯を食いしばる。
今は母のときのように力ない子供ではない。
そう決意して知恵を絞り出す。
色々と考えて、勇者から逃げなきゃと馬車の窓を見る。
どうにか開かないかと触れれば、何故か窓の外を精霊が通り過ぎていく。
今のは勇者に気づかれるのを嫌がって雲隠れした精霊であると時間を置いて理解する。
今一度どこに向かったのかを探る。
窓から業者窓へ視線を動かして、発見するより先に繋ぎっぱなしの馬が嘶き、馬車が走り出す。
「っ!」
衝撃で椅子から落ちて、腕を打ち付け、痛みに歯を食いしばる。
それでもと這って外を見れば、馬が走り続けており、勇者が豆のように小さくなっていく。
お互い呆然と見ている間に完全に勇者は消え失せる。
驚きながらも御者に繋がる窓を覗けば馬を操る精霊がいる。
助けてくれたのだと気づくと同時に何故か行者の真似をする精霊が楽しそうだと思ってしまう。
しばらく走っていたかと思えば街路が見えてきて止まる。
馬車の、鍵がかかっていたはずのドアが開き、恐る恐る外に出る。
誰もいない静かな場所。
馬の荒い呼吸音が響いてくる。
夜風が頬を撫でて、頬と腕の痛みに反射的に擦る。
痛い場所を撫でながら見上げればトカゲに似た竜の群れが上空埋め尽くしている。
その竜の巨体は腕だけでアレクサンドラを支えられるほど。
夜の月明かりが竜を、彼を照らす。
月のように輝く銀の鱗。
太陽のごとく輝く金の瞳。
一番会いたかったあの人。
あぁ、綺麗だ。
あの日、地下の暗闇から救い出してくれた一筋の光。
アレクサンドラが心から惹かれた、唯一無二の愛した人。
「サンムーン」
手を伸ばして、名前を呼ぶ。
人となった、嬉しそうに、申し訳なさそうな瞳のサンムーンに抱きしめられる。
サンムーンは部隊に指示を出しながら腕の中でしがみついているアレクサンドラを抱き締める。
不安そうに昼とは違う赤い瞳がこちらを見つめてくる。
今にも泣きそうな瞳だが、涙を必死に耐える姿がいじらしい。
大丈夫だと耳元で囁き、不安を取り除く。
綺麗な瞳だと夜間しか見れないのを不満に思い、同時に緑の瞳も昼間にしか見れないのが勿体ない。
贅沢な悩みだと部下からは言われる。
どちらの色もアレクサンドラに似合って素敵だと思う。
むしろ夜の瞳の色は自分だけが堪能できる特別な色で、その色の笑顔を見ることができるのも自分だけと自負している。
そして勇者に見られたかと不安と僅かながら嫉妬する。
それに気づいたのか、アレクサンドラにずっと目を閉じてたと言われて安堵。
この瞳を危険だと言った勇者が、彼の母を間接的にだが殺した。
勇者に、人に知られるわけにはいかない。
もし知られたら、勇者が殺しに来るかもしれない。
この瞳があったから勇者が殺すのだと聞いている。
人族では知らないがとても綺麗な瞳だというのに。
アレクサンドライトの宝石のようで、いくらでも見つめていられる。
いや。自分を見る宝石のような瞳を誰にも見せなくて済む。
「どうしてくれようか」
パーティー会場で王と勇者を待っていれば何時もアレクサンドラの側を離れない精霊が急ぎ王城に飛び込んできた。
そして勇者がアレクサンドラを誘拐したとわかった瞬間、王の指示で部隊を引き連れて来た。
警告をしていたというのに勇者は強行した。
道中で倒れていた部下は精霊が死なない程度に治療してくれていたらしい。
どうやら死なないでとアレクサンドラが願ったらしい。
命拾いしたなと部下の運の良さとアレクサンドラの優しさに感謝する。
後で自慢しよう。
そして勇者は此処でとどめを刺さなければまたアレクサンドラを誘拐するだろう。
アレクサンドラ曰く勇者が右向けといえば村人は右を向くぐらいには従うのだという。
だから彼の母親は勇者の心無い言葉に殺された。
あの勇者は未熟で、今なら竜族の精鋭数人でかこめば簡単に殺せる。
だが和平を組んだばっかりでそれは戦争を誘発するだけ。
人族程度は問題ないとはいえ、アレクサンドラの同族を殺すのをためらう部下は少なくない。
何より竜人族が勇者のせいで傷つくのをアレクサンドラは嫌う。
どうしようかと悩む。
ふと、精霊がアレクサンドラに囁く。
「アレク」
アレクサンドラの赤い瞳が精霊を見る。
この精霊は確か勇者の背後にいた精霊であった。
「勇者を色々やってハイイロ?せーのー?あ、再教育して主導権を奪うことできるって言ってるけど」
「こちらに敵意はないのか?」
アレクサンドラが精霊を見る。
ハイイロやせーのと言われて考え、廃人と洗脳のことだとすぐに理解する。
あまり物騒な言葉を意図して教えたりはしていないから意味が理解できないらしい。
「神様も見守ってたけど、やばい?勇者、だから、再教育、じさない。って」
部下が持ってきてくれた濡れたタオルをアレクサンドラの腫れた頬に当てる。
こんな傷をつけた勇者を殺したい。
だが、人族を傷つけた手でアレクサンドラを抱きしめられるか、だ。
「わかった。それで手を打とう。下手に勇者を殺して国を巻き込んでも、アレクが望むとは思えないからな」
精霊がアレクサンドラに歌と彼の持つ髪の毛を代価に欲する。
アレクサンドラが切ってというので、部下から借りたナイフで髪の毛の一部を切り渡す。
ナイフを見て固く目を閉じてしがみつく姿に可愛いと頬にキスをする。
歌は成功報酬だからと言えば精霊は消える。
国へと戻るために竜化しアレクサンドラを手にのせて飛ぶ。
安心したのか道中で寝たアレクサンドラを庇いなおす。
これがあるから背中には乗せれない。
落ちても最終的に精霊が助けてくれるだろうが二度と運ぶことを許してくれないだろう。
精霊が何かを囁いてくる。
耳を澄ませば声が聞こえる。
【金髪赤目の勇者と聖女の子供、アレクサンドラ。
赤目の勇者、国家反逆の疑いで処刑される。
聖女、逃げて故郷で産んだ子供アレクサンドラ
愛し子に勇者という栄誉を奪われると恐怖した金髪黒目の勇者。
妻を慰みものにして子供アレクサンドラを処分する】
囁きを止めさせる。
そんな悲しい物語をアレクサンドラに聞かせたくない。
精霊にある程度の物語を隠してアレクサンドラに伝えるよう願う。
なんでだと聞かれたのでアレクサンドラが泣くといえば精霊が素直に言うことを聞く。
呻くアレクサンドラに急いで国へと戻る。
早く体の様子を見て、体と心の怪我を治さなければ。と。
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