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おさとうじゅっさじ
7.
しおりを挟む遼雅さんの指先でねつを灯されるたびに感じる体の変調が出ていることに焦って、声をあげようとしても、くぐもって高い声が響くだけだ。
「ん、っ…‥ふ、ぅ」
「ゆず」
「う、りょ、う」
頭の中なんて、とっくに遼雅さんでいっぱいだ。
いくつも仕掛けられて、呼吸もままならなくなったところで抱き留められる。
すこしも身体を動かせない。へろへろのまま、耳元で遼雅さんの声が囁いた。まるで、誑かすみたいな音だと思う。
「今日、きみを抱く」
「な、」
情熱的な音に声が詰まった。
私の頭をあやすように撫でながら、訂正するつもりもないらしい遼雅さんが、くつりと笑った。
いつも選択肢を提示してくれているのに、そうするつもりはないみたいだ。遼雅さんの意のままに身体を動かされて、すぐ目の前で遼雅さんのきれいな瞳が私を覗き込んだ。
「りょうが、さ」
もう一度、ちゅう、と唇に吸い付かれる。
まるでさっきまでとは違って、すこし慰めるようなあまいキスだった。胸がしびれてあつくなってしまう。
「きみは、誰の奥さん?」
「……りょうが、さんの、です」
何度か問いかけられたことのある質問だ。舌が回らない口で丁寧に発音したら、やさしい指先が頬を撫でてくれた。
「うん。……だから、俺のくだらない嫉妬にも、付き合ってくれますか」
「し、っと……して、くれた、んですか」
ぽろりと本音がこぼれて、隠すこともできずに見つめている。遼雅さんは私の質問にすこし間を置いてから苦笑して、やさしいキスをもう一度触れさせてくれた。
「きみはかわいいからね。いつも気が気じゃない」
「ええ、そ、れは、きのせい、です」
「気のせい?」
「うん、わたし、ぜんぜんかわいくない」
「峯田さんの影響力にここまで煽られるとは思わなかったな」
「うん? そう……」
名前を呼びかけて、途中で口を噤んだ。
もう、どうして遼雅さんが嫉妬してくれたのか、ただのあまやかしだったとしても、原因がどこにあるのかはよくわかってしまった。
そういう関係じゃないと弁明するにも名前を口に出してしまいそうだ。思い悩んでいれば、遼雅さんが小さく笑い声をあげてしまった。
「きみはかわいいよ」
「う、ええ、と……」
「俺のものにしたくて、暴走するくらい」
どう答えればいいのか、わからない問いが続いてしまった。困り果てて遼雅さんの胸に顔を隠したら、今度こそ遼雅さんの笑い声が響いた。
「ああ、もう。かなわないな……、いじめようと思ったのに、かわいすぎて、やっぱりあまやかしたくなる」
「……くちべにつけてもいい、は、だめです」
「きみにしか言わないから、ゆるしてくれないですか」
「ええ……? どういう」
「柚葉さん」
頬を撫でながら抱きしめてくれていた人に、もう一度名前を呼ばれてしまった。
顔をあげてほしいという意味だと理解できて、おずおずと持ち上げる。
視界の真ん中で、すこしいたずらな瞳が私を見つめていた。
もう、それだけでやっぱり好きだと思ってしまうから、遼雅さんはずるい。
「どういう意味か答えるから、俺のお願いも聞いてくれないかな?」
「おねがい?」
「もう忘れちゃった?」
「う、ん?」
「きみを抱きたい」
「う、あ……」
「隅々まで舐めて、キスして、俺のものだって、確認したい」
隠すことなくまっすぐに願われて、眩暈がしてしまう。
遼雅さんは至って当たり前に囁くから、どうしたらいいのかわからないのだ。考えあぐねて、ようやく意味のない問いを返す。
「どう、したんですか」
その問いの答えが、交換条件になっていた遼雅さんの言葉の意味とまったく同じ回答になることを知っていたら、もうすこしうまく言葉を返せていたのだろうか。
「あまやかしたいんだ。――柚葉さんだけ」
「わたし、だけ……?」
「そう。柚葉さんだから、嫉妬するんだ。他の誰でもない、きみだけ」
「それ、は……」
「あはは、おどろいてもかわいい。……どういう意味か、答えたよ。柚葉?」
「え!? あ、まって」
「かわいい俺の柚葉さん」
「――俺の言ってる意味、そろそろわかってくれませんか?」
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