『しろくま通りのピノ屋さん 〜転生モブは今日もお菓子を焼く〜』

miigumi

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4章

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■第36話『伝えるために、動き出すために』

 *

 王都、中央議会庁舎。
 勇者リュシオンは、首席顧問の前で静かに報告を終えた。

 「……彼女は、“危険”ではありません。むしろ、“機会”です」

 「機会?」

 「魔物と共に在りながら、人に寄り添える。
 彼女が人の心を動かせるなら――戦わずに変えられる世界が、あるかもしれない」

 顧問たちはざわめく。

 「では、“保護下に置く”というのが妥当か?」

 「否。束縛では、彼女の力は失われる。……“彼女の意思”に委ねるべきです」

 リュシオンはそう答えて、自分自身に問いかけていた。

 (もし、自分の“正しさ”が人を傷つけてきたなら――
  彼女の“まあるさ”は、もっと正しいのかもしれない)

 *

 そのころ、しろくま通り。

 「モル、“つぎの算数”やりたい!」

 「ぴっぴ(素振りしよう)」

 ピノとモルの訓練は本格的になりつつあった。
 ピノはちいさな木刀をぶんぶん振り回し、モルはチョークで書いた問題を夢中で解く。

 その姿を見ていたリィナは、ふとノートを閉じて立ち上がる。

 「……わたしも、“できること”を増やしたい」

 「ぴ?」

 「お菓子作りだけじゃなくて、“伝える力”があったら、
  きっと、もっとちゃんと“誰かに届く”と思うの」

 リィナは、まっすぐにレオを見た。

 「レオさん、私に“話し方”を教えてください。
  誰かを動かせるような、言葉の力を」

 レオはわずかに驚き、そして静かに微笑んだ。

 「……承知しました。剣と同じく、言葉もまた、“技”ですから」

 *

 その夜、リィナはまたノートに書き留める。

 《“伝えること”を学びたい。誰かと争わずに、分かり合えるように》
 《勇者さんの目を、私はちゃんと覚えてる。あれは“敵”の目じゃなかった》

 ページの隅には、モルとピノが描いた“まあるいお店の絵”が貼られていた。
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