私と貴方の報われない恋

梨丸

文字の大きさ
3 / 11
アーシャ

3 再会

しおりを挟む
 二十歳の秋。
 アーシャは自分の誕生日パーティーが行われているのにも関わらず、会場のバルコニーで涼んでいた。

 夜の風が心地よい。
 
 パーティー会場の中ではアーシャそっちのけでルイスが喋り続けている。
 アーシャははあ、とため息をついた。

 ルイスは私と婚約してから、しばらくして全くかまってくれないようになった。
 今日のパーティーでもルイスが一人で喋り続けている。

 バルコニーの手すりに腕を置く。
 
 もう少しで私はルイスと結婚することになる。

 ルイスの希望で、アーシャと彼が婚約していることは周囲には知らせていない。
 今日、結婚の発表をするつもりなのだが、ルイスのおしゃべりが終わるまでお預けだ。
 
 
 「こんばんは」

 アーシャが黄昏ているところに一人の男が声をかけてきた。

 一目でわかるほど、見た目は変わっていない。
 声をかけてきたのは、フェルナンだった。

 苦い想い出が蘇り、多少の気まずさを覚えながら挨拶を返す。

 「ごきげんよう」

 フェルナンの瞳に星が映る。
 昔は瞳自体が星のようだと褒めたりもしたものだ。
 

 アーシャとフェルナンは、それからたくさんの思い出話をした。
 アーシャはというと、思ったよりスムーズに話ができている自身に驚いていた。
 
 初恋の人と再会するって、こんな気持ちだったんだ。
 掴みどころのない雲を掴んでいる感じ。
 フェルナンに対して特に何も思わない。
 時が流れ、自分の中でフェルナンの印象が誇張されていたんだ。
 恋心と共に。
 
 アーシャは案外あっさりとしている自分の思考に笑ってしまった。

 「何笑ってんの?」
 「いや、なんでもない」

 アーシャが会場に戻ろうとする。

 「フェルナンも戻りなよ」

 昔のようにアーシャが手を差し出すと、フェルナンはその手を引っ張った。
 アーシャが目をまんまるにする。

 フェルナンは一呼吸おくとこういった。


 「アーシャのこと、好きだったんだ」


 アーシャは目を見開いた。

 何度妄想したことだろうか。
 フェルナンに告白される自分の姿を。

 「私も、よ」
 「えっ……」
 「でも」

 アーシャはフェルナンの言葉を遮った。
 フェルナンの言葉を聞いたら駄目な気がしたからだ。

 「私、結婚しますので」

 アーシャの声は、自分でも驚くほど冷ややかな声だった。

 「あ、そうか」

 フェルナンはへらっとした笑いを浮かべた。
 それからくしゃっと髪を掴んだ。



 「……遅かったか……」

 静寂が辺りを包み込む。


 その後フェルナンは他の貴族に呼ばれ、会場に入っていった。


 アーシャはその場でしゃがみ込み、つぶやいた。





 「……遅いよ」
 
 
 
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【短編】ちゃんと好きになる前に、終わっただけ

月下花音
恋愛
曖昧な関係を続けていたユウトとの恋は、彼のインスタ投稿によって一方的に終わりを告げた。 泣くのも違う。怒るのも違う。 ただ静かに消えよう。 そう決意してトーク履歴を消そうとした瞬間、指が滑った。 画面に表示されたのは、間の抜けたクマのスタンプ。 相手に気付かれた? 見られた? 「未練ある」って思われる!? 恐怖でブロックボタンを連打した夜。 カモメのフンより、失恋より、最後の誤爆が一番のトラウマになった女子大生の叫び。

ローザリンデの第二の人生

梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。 彼には今はもういない想い人がいた。 私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。 けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。 あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。 吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)

演じるのはもうやめます

たくわん
恋愛
「君は完璧すぎて、つまらない」 完璧な淑女として知られる公爵令嬢アリシア・ヴァンフリートは、婚約者ヴィクター侯爵から、17歳の誕生日に婚約破棄を告げられた。

地味顔令嬢の私を「嘘の告白」で笑いものにするつもりですか? 結構です、なら本気で惚れさせてから逆にこっちが盛大に振ってあげます!

日々埋没。
恋愛
「お前が好きだ。この俺と付き合ってくれないか?」    学園のアイドル、マルスからの突然の告白。  憧れの人からの言葉に喜んだのも束の間、伯爵令嬢リーンベイルは偶然知ってしまう。それが退屈しのぎの「嘘の告白(ウソコク)」だったことを。 「あの地味顔令嬢が俺に釣り合うわけないだろ。ドッキリのプラカードでも用意しとくわ」  親友のミネルバと共に怒りに震える彼女は、復讐を決意する。まずは父の言いつけで隠していた「絶世の美貌」を解禁! 嘘の恋を「真実の恋(マジコク)」に変えさせ、最高のタイミングで彼を地獄へ突き落とす――。 「……今さら本気になった? 冗談はやめてください、これドッキリですよ?」

白い結婚を終えて自由に生きてまいります

なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。  忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。  「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」 「白い結婚ですか?」 「実は俺には……他に愛する女性がいる」   それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。 私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた ――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。 ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。 「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」 アロルド、貴方は何を言い出すの? なにを言っているか、分かっているの? 「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」 私の答えは決まっていた。 受け入れられるはずがない。  自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。    ◇◇◇ 設定はゆるめです。 とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。 もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!

記憶喪失の婚約者は私を侍女だと思ってる

きまま
恋愛
王家に仕える名門ラングフォード家の令嬢セレナは王太子サフィルと婚約を結んだばかりだった。 穏やかで優しい彼との未来を疑いもしなかった。 ——あの日までは。 突如として王都を揺るがした 「王太子サフィル、重傷」の報せ。 駆けつけた医務室でセレナを待っていたのは、彼女を“知らない”婚約者の姿だった。

[完結]裏切りの果てに……

青空一夏
恋愛
王都に本邸を構える大商会、アルマード男爵家の一人娘リリアは、父の勧めで王立近衛騎士団から引き抜かれた青年カイルと婚約する。 彼は公爵家の分家筋の出身で、政争で没落したものの、誇り高く優秀な騎士だった。 穏やかで誠実な彼に惹かれていくリリア。 だが、学園の同級生レオンのささやいた一言が、彼女の心を揺らす。 「カイルは優しい人なんだろ? 君が望めば、何でもしてくれるはずさ。 でも、それは――仕事だからだよ。結婚も仕事のうちさ。 だって、雇い主の命令に逆らえないでしょ? 君に好意がなくても、義務でそうするんだ」 その言葉が頭から離れないリリアは、カイルの同僚たちに聞き込み、彼に病気の家族がいると知った。「治療費のために自分と結婚するの?」 そう思い込んだリリアに、父母がそろって事故死するという不幸が襲う。 レオンはリリアを惑わし、孤立させ、莫大な持参金を持って自分の元へ嫁ぐように仕向けるのだった。 だが、待っていたのは愛ではなく、孤独と裏切り。 日差しの差さない部屋に閉じ込められ、心身を衰弱させていくリリア。 「……カイル、助けて……」 そう呟いたとき。動き出したのは、かつて彼女を守ると誓った男――カイル・グランベルだった。そしてリリアも自らここを抜けだし、レオンを懲らしめてやろうと決意するようになり…… 今、失われた愛と誇りを取り戻す物語が始まる。

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

処理中です...