2 / 11
アーシャ
2 失恋
学院を卒業する頃には、アーシャはフェルナンと全く話さないようになっていた。
きっとフェルナンと一緒にいてもうまくいかなくなるだろう。
どれだけ上手く親友の仮面をつけていても、いつかはボロが出る。
私の気持ちに彼が気づいた時、それが私と彼の関係を壊すことになってしまう。
そう考えたアーシャは少しずつ、でも確実にフェルナンと距離をとっていった。
淡々と日々を過ごしていく。
そんな中、アーシャは友人のメアリーに、フェルナンが婚約者を作ったという話を聞いた。
アーシャが固まっているのを見て「まあ、単なる噂だけれど」とメアリーは付け加えた。
アーシャがフェルナンに密かに恋愛感情を抱いていたのを感じ取っていたのかもしれない。
嘘……だよね。
自分から距離をとってフェルナンへの気持ちを洗い流そうとした。
けれど、アーシャの恋心は少し距離をとったくらいで治るものではなかった。
お願いだから、婚約者なんて作らないで。
しかし、そんなアーシャの願望は打ち砕かれることとなる。
先生方と話していて遅くなり、急いで帰ろうとした日のことだった。
中庭でフェルナンの話声が聞こえた。
「…で……だから……」
何を話しているかは全くわからない。
唯一分かったことはフェルナンと話しているのが同い年のマリーということだ。
マリーは整った顔立ちでニコッと笑い、フェルナンに抱きついた。
マリーの綺麗な若葉色の髪が揺れる。
フェルナンはマリーを抱きしめ返した。
パキン。
自分の中の何かが壊れた気がした。
貴族学院を一八歳で無事卒業し、両親が喜んでくれる中アーシャは一人違うことを考えていた。
これで、これでやっとフェルナンを見なくて済む。
アーシャの中でフェルナンへの恋心は呪いへと変わっていた。
卒業後の生活はアーシャにとって快適なものだった。
悩みの種のフェルナンがいないのもあるし、社交界は新鮮なことばかり。
しかし、頭の片隅ではいつもフェルナンがこちらに手を振っていた。
そんな生活の中でアーシャには婚約者ができた。
伯爵令息のルイスとは社交パーティーの時に出会った。
アーシャ自身は全く気づいていなかったが、美しいストロベリーブロンドの彼女は社交界で人気だった。
彼女が見た目の美しさから高嶺の花の扱い(アーシャが思うには孤立)を受けている時にルイスから話しかけてくれたのだ。
ルイスは真面目で優しく、一緒にいて楽しかった。
この人となら恋ができるかもしれない。
そう思ったアーシャはルイスのプロポーズを承諾し、見事婚約したのだ。
ルイスは観察眼に長けており、フェルナンのことを忘れられないアーシャの様子を見てこう言った。
「アーシャに好きな人がいても僕は君のことが好きだよ」と。
その言葉を聞いたアーシャは本気でルイスのことが好きだなあ、そう思った。
綻んだセーターの裾を繕うように、ルイスはフェルナンのことを忘れさせてくれた。
きっとフェルナンと一緒にいてもうまくいかなくなるだろう。
どれだけ上手く親友の仮面をつけていても、いつかはボロが出る。
私の気持ちに彼が気づいた時、それが私と彼の関係を壊すことになってしまう。
そう考えたアーシャは少しずつ、でも確実にフェルナンと距離をとっていった。
淡々と日々を過ごしていく。
そんな中、アーシャは友人のメアリーに、フェルナンが婚約者を作ったという話を聞いた。
アーシャが固まっているのを見て「まあ、単なる噂だけれど」とメアリーは付け加えた。
アーシャがフェルナンに密かに恋愛感情を抱いていたのを感じ取っていたのかもしれない。
嘘……だよね。
自分から距離をとってフェルナンへの気持ちを洗い流そうとした。
けれど、アーシャの恋心は少し距離をとったくらいで治るものではなかった。
お願いだから、婚約者なんて作らないで。
しかし、そんなアーシャの願望は打ち砕かれることとなる。
先生方と話していて遅くなり、急いで帰ろうとした日のことだった。
中庭でフェルナンの話声が聞こえた。
「…で……だから……」
何を話しているかは全くわからない。
唯一分かったことはフェルナンと話しているのが同い年のマリーということだ。
マリーは整った顔立ちでニコッと笑い、フェルナンに抱きついた。
マリーの綺麗な若葉色の髪が揺れる。
フェルナンはマリーを抱きしめ返した。
パキン。
自分の中の何かが壊れた気がした。
貴族学院を一八歳で無事卒業し、両親が喜んでくれる中アーシャは一人違うことを考えていた。
これで、これでやっとフェルナンを見なくて済む。
アーシャの中でフェルナンへの恋心は呪いへと変わっていた。
卒業後の生活はアーシャにとって快適なものだった。
悩みの種のフェルナンがいないのもあるし、社交界は新鮮なことばかり。
しかし、頭の片隅ではいつもフェルナンがこちらに手を振っていた。
そんな生活の中でアーシャには婚約者ができた。
伯爵令息のルイスとは社交パーティーの時に出会った。
アーシャ自身は全く気づいていなかったが、美しいストロベリーブロンドの彼女は社交界で人気だった。
彼女が見た目の美しさから高嶺の花の扱い(アーシャが思うには孤立)を受けている時にルイスから話しかけてくれたのだ。
ルイスは真面目で優しく、一緒にいて楽しかった。
この人となら恋ができるかもしれない。
そう思ったアーシャはルイスのプロポーズを承諾し、見事婚約したのだ。
ルイスは観察眼に長けており、フェルナンのことを忘れられないアーシャの様子を見てこう言った。
「アーシャに好きな人がいても僕は君のことが好きだよ」と。
その言葉を聞いたアーシャは本気でルイスのことが好きだなあ、そう思った。
綻んだセーターの裾を繕うように、ルイスはフェルナンのことを忘れさせてくれた。
あなたにおすすめの小説
私なんてもういらないということですね。ならもう消えてあげます
睡蓮
恋愛
ユフィーレに対してアプローチを行い、自らの婚約者として迎え入れたクルト伯爵。しかし彼はユフィーレのことよりも、自身の妹であるセレサの事を溺愛し、常に優先していた。そんなある日の事、セレサはありもしないいじめをでっちあげ、クルトに泣きつく。それを本気にしたクルトはユフィーレの事を一方的に婚約破棄することとしてしまう。その時だけはセレサからの愛情を感じる伯爵だったものの、その後すぐに伯爵はある理由から大きな後悔をすることとなるのだった…。
完結 愛される自信を失ったのは私の罪
音爽(ネソウ)
恋愛
顔も知らないまま婚約した二人。貴族では当たり前の出会いだった。
それでも互いを尊重して歩み寄るのである。幸いにも両人とも一目で気に入ってしまう。
ところが「従妹」称する少女が現れて「私が婚約するはずだった返せ」と宣戦布告してきた。
他の人を好きになったあなたを、私は愛することができません
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私シーラの婚約者レヴォク第二王子が、伯爵令嬢ソフィーを好きになった。
第三王子ゼロアから聞いていたけど、私はレヴォクを信じてしまった。
その結果レヴォクに協力した国王に冤罪をかけられて、私は婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。
追放された私は他国に行き、数日後ゼロアと再会する。
ゼロアは私を追放した国王を嫌い、国を捨てたようだ。
私はゼロアと新しい生活を送って――元婚約者レヴォクは、後悔することとなる。
幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。
たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。
彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。
『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』
「……『愛している』、ですか」
いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。
王太子殿下との思い出は、泡雪のように消えていく
木風
恋愛
王太子殿下の生誕を祝う夜会。
侯爵令嬢にとって、それは一生に一度の夢。
震える手で差し出された御手を取り、ほんの数分だけ踊った奇跡。
二度目に誘われたとき、心は淡い期待に揺れる。
けれど、その瞳は一度も自分を映さなかった。
殿下の視線の先にいるのは誰よりも美しい、公爵令嬢。
「ご一緒いただき感謝します。この後も楽しんで」
優しくも残酷なその言葉に、胸の奥で夢が泡雪のように消えていくのを感じた。
※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」「エブリスタ」にて同時掲載しております。
表紙イラストは、雪乃さんに描いていただきました。
※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。
©︎泡雪 / 木風 雪乃
すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…
アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者には役目がある。
例え、私との時間が取れなくても、
例え、一人で夜会に行く事になっても、
例え、貴方が彼女を愛していても、
私は貴方を愛してる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 女性視点、男性視点があります。
❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。
【完結】他の人が好きな人を好きになる姉に愛する夫を奪われてしまいました。
山葵
恋愛
私の愛する旦那様。私は貴方と結婚して幸せでした。
姉は「協力するよ!」と言いながら友達や私の好きな人に近づき「彼、私の事を好きだって!私も話しているうちに好きになっちゃったかも♡」と言うのです。
そんな姉が離縁され実家に戻ってきました。
最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる
椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。
その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。
──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。
全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。
だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。
「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」
その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。
裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。