私と貴方の報われない恋

梨丸

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フェルナン

5 絶恋

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 両親は再び令嬢を勧めてきた。
 気持ちの悪い笑みを浮かべながら。

 毎日のように勧められる令嬢。
 俺にとってはどの令嬢も同じに見えた。

 別にどうでもいい。

 初めに会ったのはディオーナ侯爵令嬢だった。
 「フェルナン様は、どんな食べ物が好きなんですかあ?」
 無駄にスキンシップが多くかった。
 ディオーナ侯爵はメイドと浮気していると自慢げに話していたなあ。

 次に会ったのはカーリン伯爵令嬢。
 「わたくし、お金がある人としか婚約を結ばないの。貴方の家の総資産はいくらかしら?」
 逆に清々しい。
 カーリン伯爵は危ない薬を売って大金を稼いでいると話していた。


 その後紹介された令嬢も似たようなもので、一向に婚約の話は進まなかった。

 そんな俺に対して、両親は無理やり婚約相手を決めようとした。

 「ヘルツベルク侯爵家の方だ。婚約しなさい」

 静かで、それでいて冷たい言葉に体の芯が凍っていく。
 冷や汗が流れ落ちる。

 通常の婚約は、血印と言う印を婚約書につけないといけない。
 言ってしまえば、寝てる間などに血をとって婚約書につければ婚約成立だ。
 俺の両親ならやりかねない。

 ゾッとした。

 その日から毎晩、眠れない日々が続いた。
 あれは両親からの忠告だったのかもしれない。
 さっさと婚約しないと、俺に価値がなくなるということの。

 毎晩、悪魔が囁いた。
 「適当に婚約しなよ」と。

 それでも俺はアーシャのことが諦められなかった。
 でもアーシャの幸せは壊せない。
 毎晩頭が壊れそうだった。



 そんな時、両親の紹介でアリシャに会った。

 アリシャは子爵令嬢で、桃色の髪。
 髪の色も名前もアーシャに似ていたので彼女に重ねてしまったのだろう。
 俺は「何回か会ってみて婚約するか考える」と両親に告げた。
 
 アリシャと過ごした日々は、驚くほど充実していた。
 彼女は比較的控えめな性格で刺繍をするのが得意だそうだ。
 少し自慢げに笑う彼女を見て、こう思った。

 アリシャとなら、婚約できるかもしれない。
 アーシャのことを忘れてアリシャと幸せになれるかもしれない。

 
 俺は花束をもって歩いていた。
 アリシャに婚約を申し込むためだ。
 少し気持ちが浮つく。

 アリシャはどんな反応をするだろうか。

 アリシャは俺の屋敷の庭で誰かと喋っていた。

 「アリシ……」

 声をかけようとした時、アリシャの言葉が俺の胸を貫いた。


 「ほんとにありえないわ。伯爵家の息子だからわざわざ話合わせてあげてるのに、婚約申し込んでくれないし。他の男に乗り換えようかしら」



 花束がぱさり、と落ちた。

 





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