「嘘つき」と決めつけられた私が幸せになるまで

梨丸

文字の大きさ
3 / 6

後編

しおりを挟む
 私は今、故郷に帰ってきている。



 帰りたくもなかった故郷に。



 私の殺伐とした表情に、精霊のヤングとミルが心配そうな眼差しを向ける。

 「ほんとに大丈夫?」
 「ほんとに、ほんとに?」

 ミルがヤングの真似をして、心配な気持ちを表してくる。


 「本当に大丈夫なのですか」


 大精霊のシーフにも心配されている。


 「大丈夫だよ」


 三人の頭を順番に撫でる。




 私がこの地から逃げ出してから、もう六年が経つ。



 私は今、エミリーとシーフ達精霊と共に、聖女としてこの国を守っている。

 衣食住は、私が精霊のお願いを叶えてあげる代わりに、精霊達に用意してもらっている。



 そんな私がなぜこの地に舞い戻ってきたのかには、ちゃんと理由がある。

 それは、1週間前、私宛てで家族から届いた一通の手紙がきっかけだった。



 「村が大変なことになっています。助けてください」



 なぜ私の居場所がわかったのか、などと色々疑問に思うことはあったが、私が一番に感じたのは「怒り」だった。


 わざわざ、「」の私に手紙をよこしてきたということは、隣国で私が聖女になったという話でも小耳に挟んだんだろうか。

 今更虫が良すぎる。



 エミリーには、私の村について話していたので、この手紙を見せると顔をしかめた。

 「こんなん、無視一択でしょ」

 やはり、エミリーもシーフと同じ意見なのか。



 ほんの少し前、シーフにも、この手紙を見せると、シーフは顔を少しゆがめた。


 「無視が最適かと思われます」


 二人とも、容赦がない。



 けれど、私には過去を整理したいという気持ちが残っている。

 そんな気持ちは、日々大きくなっていくようにも感じる。



 「私、過去とけじめをつけたいの」



 シーフ、ヤング、ミルの3人に、この気持ちを伝えると、なんと村まで一緒についてくれることとなった

 「エミリーがそう言うなら、おうえんしないと!」
 「おうえん、おうえん!」


 「私は、エミリーとずっと一緒ですよ」


 自然と涙があふれてきた。

 ここには、私のことを想ってくれる人、精霊たちがたくさんいるんだ。


 私がいきなり泣き出したのに驚き、シーフ達はあたふたしていた。



 エミリーと樹木の精霊のノームに今の気持ちを説明し、国を出た。


 私が故郷の村がある国に着き、故郷の村へ到着したのは、日が暮れてからだった。

 故郷の村には、住居は残っているものの、全く人がいなかった。




 「姉様あああ!!!」




 突然背後から甲高い声がした。
 リリーだ。


 シーフ達が私を庇うようにリリーの前に立ちはだかった。

 リリーは聖女でも何でもないので、精霊を見る事も触れることもできない。


 鬼の形相でリリーを見ているシーフのことは見えなかったのだろう、そのまま私に抱きついてきた。


 リリーによると、この村には村長家族と、リリーの家族しか残っていないそうだ。


 「なんかね、でてった人たちが、村は息苦しいって言うのお」


 シーフが言うには、私たち(大精霊と聖女)がいきなり国からいなくなったことで、広いこの国の、少数の聖女からの加護だけでは、端っこに位置するこの村のバランスをとるのが難しくなっており、村が息苦しくなるなどの弊害が起こっているそうだ

 リリーは、固まっている私の前でペラペラと話を始めた。



 「私ね!お姉さまには、この村に戻って欲しいと思ってるの!戻ってきたらお姉様にもいい暮らしをさせてあげるわ。手紙だって一生懸命書いたのよ!」



 何様なんだろうか。



 呆然としていると、村長の息子、ハンスが馬小屋から出てきた。

 「お前は、嘘つき女じゃないか!リリーから離れろ!!」

 私を突き飛ばし、リリーの肩に手を置き、安否を尋ねている。


 どうやら二人は恋仲にあるようだ。

 「嘘つき女風情ふぜいでこの村の聖女、リリーに会いにくるなんてどうかしているだろう



 リリーは自分が聖女だと、まだ嘘をついていたのか。


 六年前の私だったら俯いて黙っているだけだっただろう。
 

 けれど、私には今言っておきたい言葉があった。


 大きく息を吸い込む。



 そして大声で叫んだ。





 「私は!聖女です!!精霊たちとお友達になることができるの!!!」





 シーフが目を見開いた。

 ヤングとミルは自慢げに笑っている。

 リリーとハンスは呆気に取られているようで、会いた口が塞がっていない。


 数秒が経ち、はっとしたようにリリーが口を開いた。


 「ね、姉様、何を言っているの。わ、私が聖女なのよ。ねえ、ハンス」


 助けを求めるようにハンスを見つめる。

 「そ、そうだ!リリーこそが聖女だ、嘘つき女め!!」

 私が意見を大声で言うことが全くなかったせいか、二人は見てわかるほどうろたえている。



 もう、以前の私とは違う。



 聖女が一人もいない村に未来はない。

 リリーが嘘をつき続ける限り、この村はどんどん手遅れになっていくだろう。

 リリーが素直に嘘を明かしておけば、国から新しく聖女が派遣されるというのに。




 「じゃあね、
  
 


 手をひらひらと振り、歩き出す。


 後ろで何やら二人が騒いでいるが、私にはもう関係のないことだ。



 帰りの船に乗り込む。


 潮風が心地良い。
 


 デッキで一人海を見ていると、シーフがヤングとミルの寝かしつけを終え、こちらにやって来た。
 

「どうして、わざわざあんな人間達に会うためだけに出向かれたのですか?言いたいことは、手紙で書いて送れば良かったのに」


 私は微笑みを浮かべる。



「分かってないわね、シーフ。リリーみたいな人間には期待をもたせてからその期待を裏切るのが一番効くの」



 シーフは大きなため息をついた。



 「ルーシー、あなたって人は……。一番容赦ないですね」



 「それは、あなたが一番知ってることでしょ」



 私は鼻歌混じりで、部屋に戻った。


 目には目を。裏切りには裏切りを。

 私がずっと言いたかったことが言えたことで、胸にあったつかえがスッと消えた。



 ヤングとシーフは幸せそうな顔で眠っている。


 明日、今日ついて来てくれたお礼にシーフ達ととびきりおいしいご飯を食べに行こうかな。



 私は今、幸せだ。






                     ‐完‐












 その後……





 
 ルーシーの故郷の村:エイデン村


 
 エイデン村では、大地震が発生。


 幸いにも国が派遣した神官達によって村に残っていた人々は助けられたが、地震の原因が聖女の加護不足だと判明。

 エイデン村は国に、リリーが聖女だということを報告していたのだが、リリーは聖女ではなかったため、村全体の調査が始まり、地震に巻き込まれたリリー含む村人達の取り調べが行われている。

 また、ルーシーの家族、リリー達はルーシーに助けて欲しいという内容の手紙を送っているが、ルーシーの保護責任者となったエミリーに、全て送り返されている。







 ルーシーが今住んでいる国(エイデン村がある国の隣国):アボット王国



 アボット王国では大精霊を従えることができ、他の精霊達とも良好な関係を続けているルーシーが、大聖女に就任。


 大聖女に就任したルーシー・ルーべルクは聖女仲間のエミリー・スミスに勧められ、姓をスミスに改名し、ルーシー・スミスと名乗るようになった。



 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

聖女らしくないと言われ続けたので、国を出ようと思います

菜花
ファンタジー
 ある日、スラムに近い孤児院で育ったメリッサは自分が聖女だと知らされる。喜んで王宮に行ったものの、平民出身の聖女は珍しく、また聖女の力が顕現するのも異常に遅れ、メリッサは偽者だという疑惑が蔓延する。しばらくして聖女の力が顕現して周囲も認めてくれたが……。メリッサの心にはわだかまりが残ることになった。カクヨムにも投稿中。

社畜聖女

碧井 汐桜香
ファンタジー
この国の聖女ルリーは、元孤児だ。 そんなルリーに他の聖女たちが仕事を押し付けている、という噂が流れて。

裏切られた氷の聖女は、その後、幸せな夢を見続ける

しげむろ ゆうき
恋愛
2022年4月27日修正 セシリア・シルフィードは氷の聖女として勇者パーティーに入り仲間と共に魔王と戦い勝利する。 だが、帰ってきたセシリアをパーティーメンバーは残酷な仕打で…… 因果応報ストーリー

落ちこぼれ公爵令息の真実

三木谷夜宵
ファンタジー
ファレンハート公爵の次男セシルは、婚約者である王女ジェニエットから婚約破棄を言い渡される。その隣には兄であるブレイデンの姿があった。セシルは身に覚えのない容疑で断罪され、魔物が頻繁に現れるという辺境に送られてしまう。辺境の騎士団の下働きとして物資の輸送を担っていたセシルだったが、ある日拠点の一つが魔物に襲われ、多数の怪我人が出てしまう。物資が足らず、騎士たちの応急処置ができない状態に陥り、セシルは祈ることしかできなかった。しかし、そのとき奇跡が起きて──。 設定はわりとガバガバだけど、楽しんでもらえると嬉しいです。 投稿している他の作品との関連はありません。 カクヨムにも公開しています。

【完結】悪役令嬢ですが、ヒロインに愛されてます。

梨丸
ファンタジー
「今ここに宣言する!アリシア・アンリエッタ!君との婚約をただ今から破棄させてもらう!そして、横にいるシャーロッテと婚約させてもらう!!」 ドヤ顔で婚約破棄を宣言するアラン王子。でもごめんなさい。 あなたの横にいるヒロインは、私の協力者です。 これは悪役令嬢と言われ続けたアリシアが愛される物語。 11/1  無事完結いたしました。     読んでくれている方々、ありがとうございます!

(完)聖女様は頑張らない

青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。 それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。 私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!! もう全力でこの国の為になんか働くもんか! 異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

処理中です...