「嘘つき」と決めつけられた私が幸せになるまで

梨丸

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中編

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 隣国に着いて、しばらく経った。



 私は幸いにも、隣国へ着いてからすぐ、荷物運びという仕事を得ることができた。

 大精霊のシーフの風の魔法のおかげで、重い荷物運びは楽だし、天職ではないかと、当時は本気で思っていたほどだ。

 
 仕事も安定してきたし、これからどうしようか、などと考えている矢先だった。

 ある配達先が私に割り当てられた。


 これが、私の運命を大きく揺るがすことになるなんて、その時は思いもしなかった。



 いつものようにドアをノックする。

 ……全然人が出てこない。


 大きな声で叫んでみるが、効果ナシ。

 諦めて、一旦帰ろうとした時だった。


 「ちょっと、あなた!」


 見知らぬ美少女が、庭先から出てきて私に声をかけてきた。


 「あなた、大精霊の聖女でしょ」



 なぜバレた。



 強制的に家の中に連れ込まれ、椅子に座らされる。

 思わず目を見張った。


 部屋の中には、村では見たこともない量の小精霊がいたのだ。


 美少女は椅子にどかっと座り、話し始めた。

 美少女はエミリー・スミスという名前で、たくさんの小精霊を従えることのできる聖女だそうだ。

 数ヶ月前、この国を支えていた、水の大精霊のニンフを従えた聖女が急死した。

 エミリーは、その聖女と共にこの国を支えていたが、聖女が急死したことで、代わりの大精霊を従えた聖女を準備できず、この国のバランスが崩れ始めているとのことだ。

 村などはともかく、国とまでいくと、小精霊を従えた聖女一人では、国のバランスを保つことができず、災害などが多発してしまう。



「あなた達が必要なの」
 


 そんなことを言われたのは生まれて初めてだった。


 私を受け入れてくれたこの国を、守りたい。

 けれど、シーフはどう思っているだろうか。


 そんな私の気持ちを読み取ったのか、シーフが頭を撫でてくれた。



 「ルーシー、私はあなたが守りたいと願うものを守りたい」





 それからは、本当にたくさんのことがあった。
  

 まず、私はエミリーと一緒に精霊式に参加することとなった。

 この国の王族は、エミリーと強い繋がりがあるらしく、精霊式を開くことを意外にもあっさり許可してくれた。

 精霊式とは、村や国に祈りを捧げる式で、そこに参列する、国にもともといた精霊達に認められれば、その村や国の正式な聖女となる。


 そういえば、リリーが聖女だと騒ぎ出してすぐ、精霊式が開かれたっけな。



 「わざわざ式なんて開かなくても、私たち精霊はあなたを迎入れたのに」



 出会う度にこんなことを言ってくれるのは、この国に古くから植っている樹木の精、ノームだ。

 ノームには、精霊式後、住む場所が定まっていなかった私への、木造の住居制作などでとてもお世話になった。



 結果から言うと、精霊式は大成功だった。

 この国の精霊はみんな人懐こく、精霊式の前後ですぐ仲良くなった。


 特に仲良くなったのは、先ほども言ったノームと、ともしびの精のヤング、雫の精のミルだ。

 この前シーフが、ヤングとミルがずっとくっついてきて大変だとぼやいていた。


 思わず、笑ってしまった。



 私は、あの小さな村で、一生を独りで過ごすものだと思っていたが、こんなところでこんなに素敵な友達ができるとは。




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