「嘘つき」と決めつけられた私が幸せになるまで

梨丸

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【番外編1】嘘つき

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 あたしになりたかった。
    



 
 7歳の秋。

 姉様と寝ていると、お父様やお母様の話し声が聞こえてきた。


 「ルーシーかリリー、どちらが聖女だと思う」
  

 聖女様の話は以前から聞いていたけれど、姉様と私のどちらかが聖女だなんて話、聞いたことがなかった。


 もし、私が聖女なら。

 ちやほやされて、村の人から「ルーベルク家の双子の妹」以上の存在として扱われるのではないだろうか。


 そんな感情が私に芽生え始めた。




 9歳になった頃にはそのことしか頭になかった。

 優しく、動物に好かれている姉様。

 とにかく目立ちたい私。


 聖女に向いているのは確実に姉様だ。

どんどん差が開いているように感じ、焦り始めた私は咄嗟に叫んでいた。


 「精霊がみえるわ!私に微笑んでるの!!」


 その日から、私はになった。




 そこからは順調に月日が経ち、私は12歳になった。

 最近少し仲良くなったアンナと話をする。

 「ねえ、アンナ。私が聖女じゃなかったらどうする?」

 冗談めかした調子で尋ねてみる。


 アンナは少し考え込むと笑いながらこう言った。


 「あり得ないでしょ」


 そのまま会話が続く。

 「そういえば」とアンナは思い出したかのように言った。


 「今日、リリーのお姉さんと話したの!楽しかったよ」


 私は聖女じゃないと許されないのに、姉様は聖女じゃなくても許される。

 けど、咄嗟に嘘をつくような私はきっと聖女ではない。



 姉様、ずるいよ。


 「アンナ、気をつけて。姉様はすぐ嘘をつくの。私が羨ましいからって」


 また、嘘をついた。




 外の景色が真っ白になるほど、雪が降った日のことだった。

 家で両親と3人で夕食を食べていると、アンナが突然私の家に来た。


 「リリー、おばさん、おじさん。ルーシーがいきなり精霊が見えるって、私に言ってきたの!」


 私が恐れていた時が来た。

 やっぱり姉様は聖女だった。


 しかし、アンナは自慢げに、続けてこう言った。


 「わたし、こう言ってやったの。嘘つかないでよ、って。リリーが言ってくれたこと本当だった」



 私はまだ、




 16歳になった時には、私の地位は確実なものになっていた。


 姉様はで私は

 村の人は私たちのことをそう表した。



 そんなある日。

 村の山岳部で大きな雪崩が起きた。


 の私は、精霊の力で村長を救出するため駆り出された。


 額に汗が流れる。

 それもそのはず、私には聖女の力などない。

 村人たちは期待の眼差しを向けてくる。


 私にどうしろってんのよ。


 焦り、周りに目を向ける。


 大勢の野次馬の中に姉様が、いた。



 姉様の手を引き、人目のない小屋に連れ込んだ。

 姉様の様子を横目でちらりと見る。


 姉様は精霊と話しているようだった。

 ムカつく。
 見せつけてこないでよ。

 見下されているようで、気分が悪かった。

 
 精霊が力を使い始めたようだ。

 淡い光が姉様の周りをふわふわと漂い始め、やがて大きな光となる。


 見惚れている間に雪崩は精霊の力によって吹き飛ばされたようだ。

 雪崩は綺麗すっきり消えていた。


 思わず感嘆の声が出た。




 姉様と村に戻ると、アンナたちが私の元に駆け寄ってきた。



 私は思い切り息を吸い込む。




 「私が!精霊にお願いして助けてもらったの!!」




 あっという間に、村中が私への賞賛でいっぱいになる。


 姉様は呆然としていた。

 何が起こったのかわかっていないかのように。

 姉様が今更本当のことを言い出したって誰も信じてくれないよ。


 馬鹿みたい。


 姉様だけに言葉が聞こえるように抱きつく。

 私は姉様の耳元で囁いた。



 「バーカ。誰も信じてくれないよ」







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