配信の果て

ほわとじゅら

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不穏なスタート

ずぼらな配信者

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「そうなんだ。じゃあ、そういうときこそ、お見舞いに行ったらどうなんだ?」

 また意地悪くフギに要らないアドバイスを進言しんげんしてみた。

 彼は苦笑いを再度浮かべた。

「いやぁ、それは速攻で断られてしまいました。『風邪をもらってフシ君に移って配信休止になったらどうするの?』って」

「あれ。君とフシ君は、同じアパートかマンションに住んでるの?」

「同じマンションです。住んでる階層は違うんですけど、顔を突き合わせることは割としょっちゅうあるんで」

「なるほどね。リスクを踏まえて御堂さんは見舞いを断ったわけか」

「二川さんは、安毛さんと一緒に暮らしているんですか?」

「俺たちは一緒には住んでないよ。俺は一人暮らし。でもゲーム開発するときは、あいつの住まい兼、事務所が開発現場になってるんだ」

「そうなんですか!」

 ひと際、甲高い声だった。驚嘆した表情をしている。

「君だって、フシ君と一緒には暮らしてないじゃないか。家賃を折半せっぱんしたら良いのに別々に暮らしているのは、プライバシーをお互いに守りたいんだろ?」

「僕、途中までフシと一緒に暮らしたことあるんですよ」

「へぇ。そうなんだ!」

「サンライブで配信始めて慣れてきた2年目くらいに、事務所のグッズとかコラボする企業の商品とか色々送られてきて、手狭てぜまになったから引っ越しすることになりました。普通にもっと大きな部屋で暮らすと思ったんですよ。でもフシが各自で部屋を設けた方が良いって。あいつ全然洗濯とか家事は一切しないのに!」

 なるほど。彼が通い妻みたいなことをしていると容易に想像できた。

 同じマンションで別々の階層と部屋に住んでいても、フギがフシの面倒を見ているのだ。

「その内、彼女ができたら君の負担も減るんじゃないかな?」

 フギの顔が奇妙な物を見るような目で変な顔になった。

「あいつに彼女? いやぁ考えられないなぁ」

 フシには会ったことはない。どういう人物なのかは分からないが、だらしのない生活なのだろう。

 宇多野も自分のことにあまり頓着とんちゃくしない一面はある。食事だけは自分できっちりと取っているが、たまに朝までゲーム開発の仕事に没頭することがある。もちろん、その間、殆どの家事全般は停止している。

 俺が部屋を訪問すると二日前と同じ服装でパソコンに向かってる姿を目撃したことがある。風呂に入ってないと言うので、休憩がてら無理やり向かわせたが、風呂から出てくると宇多野は眠くなったと言って、リビングのソファで寝てしまう。

「あ、つかぬことを聞きますが、ゲーム開発の現場を今度、見学できませんか?」

 想像から帰ってきたフギに問われた。サンライブとは戦略的パートナーとして提携した。コラボ提案だろうか。

「開発の現場はVlogとして残すには難しいかもしれないけど、ただ遊びに来てくれるだけなら大丈夫かも」

 フギは小首をプルプルと素早く真横に振った。

「取材とかコラボじゃないです! 配信外で、やさいゲームはよく遊んでたんで、どうやって作られているのか単純に興味があるんです」

「じゃあ、インフルが治ったら聞いてみるよ」

「インフル?」

 そう。宇多野は、マネージャー会議のある今日、本来は顔合わせに来る筈だった。俺がマネージャーを務めることにはなるが、他の配信者を担当するマネージャーたちと事前挨拶を交わす予定であったのだ。

 だが叶わず、体調を崩して今頃は家で寝込んでいる。近年、滅多に風邪を引かなかったから、一体どこで風邪をもらってきたんだか。

「俺の上司、兼、会社の代表はインフルエンザなんだ。安毛の配信もお休み中でね。昨日、電話したら声はれていたけど、飯は辛うじて食べられてるみたいだからさ。心配はいらないよ。あ、電話だ。ごめん、ちょっと内線に出るね?」

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